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友達が最近おかしくなった理由  作者: ***
一章 中等部三年時代〜高等部前
3/5

親友は避けたがり

更新が遅くなりすみません。

今回はだらだらした内容になっております。

 アイシャーリンを探している殿下が現れた。


 何も知らない人から見れば、穏やかな笑顔なのだが、いつも殿下に接している人から見れば目が笑っていない顔つきの殿下である。



「ご機嫌ようクリス殿下。アイシャーリンならここに居ましてよ」


 スッと私付きの侍女に目配せして、紅茶を出すのを見届ける。


「あぁ、すまないな」


「で、殿下…」


 アイシャーリンは少し口元を引きつらせているが、なんとか淑女の面構えになっている。


 言っていなかったが、ここは裏庭。

 暖かい日向がよく当たり、丁度いいテーブルなどがある。


 人は少ないが、注目はされ始めていた。


「やぁ、アイシャーリン。君が元気そうでよかったよ」


「え、ええ。私はいつも元気ですわよ?それに、今朝もご挨拶致しましたわ」


 なんとか避けている事を殿下に察しさせない様にしているのがバレバレである。


「さ、僕の膝においで」


「っ!殿下!!いけませんわ」


 アイシャーリンは可愛らしく頬を染めた。

 彼女の髪の毛が光に反射して輝く。


 何故彼女が殿下のご意志を断ってまで殿下の膝に座らないとしているのは、殿下が自分の膝に座らせてから彼女を問いただす事が多いからだ。

 後、恥ずかしいのだろう。日常茶飯事だが。


 アイシャーリンは背が高い方なのだが、殿下は更にスラッとしていて、アイシャーリンがちょこんと座っているように見える。

 微笑ましい光景に思わず笑みをこぼすと、アイシャーリンに見られていたらしい、プクッと頬を器用に膨らませた。


『ラシファ!私を笑っていますわね!』


 殿下の膝から、アイシャーリンが小声で話した。


『笑っていますわね、ふ、ふふっ』


 少し意地悪な顔で笑ってみせると、アイシャーリンは「魔王ですわ……」と呟いていた。

 アイシャーリンが座っているお方の方が魔王です。


 殿下は寂しそうな憂い顔を作り、ずっとアイシャーリンを見つめている。


 そろそろ話を振るつもりなんだろう。


「どうまして?クリス殿下」


 アイシャーリンが不思議そうに殿下を心配した。

 計画通りの殿下の演技は続く。


「いや、アイシャーリンが珍しく考え込んでるなぁ…って思っててさ、アイシャーリン、隠し事ない?」


 隠し事をしているのがバレバレであるため、殿下はアイシャーリンに隠し事の事を自然に聞き出そうとしている。


「な、隠し事?!作戦ぐらいしかありま…やっぱり何も無いですわよ!!」


 アイシャーリン自ら口に出した。ともかく、作戦とはなんだろうか?


 ジトッとアイシャーリンを見つめると、アイシャーリンはたまらず目を逸らした。


「あとでお話しようか、アイシャーリン?」


 アイシャーリンは殿下御用達の生徒会室に放課後、連行される事が決定となった。


「いや、あの殿下…ラシファあぁぁ…」


 助けて、と私を見たアイシャーリンは涙目で可愛いが、残念ながら私は殿下の味方である。

 なにせ、殿下は怖いから。


「私は、殿下のご意見を賛同しましてよ。アイシャーリン、未来の国母が殿下に隠し事はいけませんわ。そうでございましょう?殿下」


 夜会の顔でコロコロと笑った。

 この前の事だろうな、と見据えて、国母になることも強調しておく。

 アイシャーリンは、絶望感溢れた顔をしている。


 皆さま、助けて下さいまし!

 その様な顔で周りの人達をアイシャーリンは見ていたが、殿下がニコリとアイシャーリンをひと睨みした事で、やがてしょぼんと頭を下げた。


 結局、アイシャーリンは一日中しょぼんとしていたのである。


「アイシャーリン様、大丈夫ですか」


「アイシャーリン、怒られた方が良いぞ」


 放課後前、クラスの机に突っ伏しているアイシャーリンを諭すように声をかける男が二人いた。


 ちなみに私はアイシャーリンと同じクラスである。


「殿方二人で婚約している女性を囲むような事しないで下さいまし。アイシャーリン、貴女は化粧室へ行きなさい」


「ラシファ…?」


 少し赤く腫れている目をこちらへ向けて、私を不思議そうに見る彼女。


「殿下がもうすぐこちらへお見えだわ、だからそんな泣いてると殿下が心配されてしまいますわ。淑女としてもその顔を殿下に見せてはダメよ」


「殿下が?ひゃい!!」


 アイシャーリンは勢いよく小走りをして化粧室へ向かった。


 クラスや学校内では侍女などの御付きの者を連れて来ない決まりなので、少し時間はかかるだろう。


 彼女を見送ってから、私は後ろで突っ立っている殿方二人をスッと見た。


「クラス一の天才魔術師と、私達の幼馴染は何をして居たのかしら?」


「俺はただ単に慰めてただけだ」


 幼馴染であるマルックが涼やかな顔をして私を見つめた。この男、私と同じく婚約者がいない。なおかつ冷めた印象の美貌の持ち主で、侯爵家の後継者だ。娘達は皆狙っている。


「マル、アイシャーリンは殿下の婚約者よ?取らないでちょうだい」


「…取る?俺が?ラシファ、見る目無いな」


 なんですって?とマルックの前に詰め寄る。


「俺はどっちかって言うとだな、お前の方が…いや、なんでもない」


 マルックは珍しく耳が赤くなっていた。あたふたとして、目をあわせてくれない。


「ラシファ様…そろそろ寮に戻っても?」


 天才的なセンスの魔術師は、気まずそうに私に伺った。


「そうね…アイシャーリンは婚約していますので、以後気をつけるようにして下さいな、クラブ会長」


「…はい、気をつけましょう。アイシャーリン様の為にも」


 魔術師改め、アイシャーリンファンクラブ会長殿は渋々頷く。そして、じきに去って行った。


 ***


 待たせたな、という顔で殿下が来た。殿下の隣には赤面顔のアイシャーリンもいる。


 まだ来ないと思っていたらそういうことなのね。

 私達はマルックと別れて、生徒会室にお邪魔させて頂いた。


「ラシファ嬢、私には淑女の教育というものを知らないんでね、是非アイシャーリンに再確認させてくれよ」


「私ごときがおごましいですわ、それに自信がありませんの。ですので、私からも、是非」


 うふふ、あははと乾いた笑みを殿下と二人で浮かべた。


 さて、アイシャーリンに特別講座である。


「アイシャーリン、そこに座って。さて殿下、国母とはなんでございましょう?」


「うん、そうだな……」


 アイシャーリンに国母とはなにかを説くのは、小一時間にも及んだ。殿下はアイシャーリンに作戦の事をはぐらかされてしまって、少し不機嫌だ。


 そして、最終的には私達も疲れてしまったので、解散となった。


「ではラシファ、ここで失礼いたしますわ。貴女の夢に神のご加護を」


 殿下は残業があるらしく、既に生徒会室で別れている。殿下はなんでもこなすので、長々とはならないと思う。


「アイシャーリン、神のご加護を」


 貴女の夢に神のご加護を、とはこの国の別れの挨拶である。略して神のご加護を、と言う場合もある。


「公爵邸に帰る前に街へ行くわ、出してちょうだい」


 私付きのメイドと今日は気晴らしに貴族街に買い物に行くのだ。次はアイシャーリンも誘ってみようかしら?、そうのんびり過ごせるのも後少しだった。



最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

ブックマーク等も感謝です。

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