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友達が最近おかしくなった理由  作者: ***
一章 中等部三年時代〜高等部前
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親友の異変

初めて書きます。お手柔らかにお願いします。

 私は公爵令嬢ラシファ。ハーディア公爵家の長女。後継には優秀な弟がいるから、気が楽。婚約者はいない。


 どうしたものか。

 今、私の屋敷の庭園で親友と二人、仲良くお茶会中だ。

 意味不明の言葉を喋りながら慌てる彼女を尻目に、音を立てずにティーカップを持ち、眺めた。


「もう!聞いてますの!」


 凛とした声が響いた。

 いけない、拗ねられると厄介だわ。


「どこからでしたかしら?」


 ニコッと笑顔で応えると、ビクッと彼女は身震いして遠慮がちに話し始めた。

 いや、なんで身震い?


「…ですので、私これからは殿下と距離を取ろうと思いますの」


 彼女…改め、私の親友アイシャーリン。ガルガッド公爵家の一人娘で銀糸を集めた様な髪、睫毛が綺麗に縁取られた大きな目に金色の瞳が埋まっていて、顔は人形の様に整えられている。


 そのおかげか、特に男性陣からは熱い視線が送られているのだが彼女は気づいていない。


 そして、彼女の父は宰相というご立派な役所だ。可哀想に王から気に入れられた宰相さんは第一王子と娘の婚約を嫌がってもプッシュされた。アイシャーリンが幼い頃に宰相さんはそのまま断り切れず、泣く泣く可愛い娘の婚約成立をしたらしい。

 成長したアイシャーリンは容姿端麗、文武両道、という言葉通りになってしまい、王からは更なる期待がかけられている。

 そんなアイシャーリン、彼女がだ。

 腹黒第一王子殿下にも溺愛をされているのにもかかわらず、だ。

 何故か自分は悪役?でヒロイン?と殿下をいちゃラブ?させるために、殿下とは距離を取っていずれは婚約破棄をする!、という所々が意味不明だが、はっきり言って言ったらダメな事を豪語した。

 普段からどこか抜けていた彼女だが、ここまでの失言はしてこなかった。


 更にこれからというのは高等部に入ってかららしい。

 補足説明をすると、私達貴族は、魔力という魔法のエネルギー源を比較的に多く持っているため、六〜十二歳までが初等部、十二〜十五歳までが中等部、十五〜十八歳までが高等部というのに別れて常識と魔法をそれなりの所まで王都魔術学園で学習する。

 それは義務づけられているため皆が知っている。

 ただし、高等部だけは寮に入らねばいけないという、家に頼れない状況にされるのだ。


 そして私達は今、中等部3年。十五歳だ。要は高等部まで後少し。

 もうすぐで豪語した事が現実化していくのだろうと彼女は呑気に笑っている。


 いや、そんなに呑気でいいの?!

 大事な事なのだろうが、何故か爽やかなその表情が妙に感じた。


「そんなにご気分よろしくて?」


 紅茶を飲みながら問いかけると、少し苦笑いを浮かべた彼女は、俯きながら一呼吸して、応えた。


「実は、私王妃修業が嫌いなのですわ。殿下に好意は寄せていますが、何をやってもてんで駄目なのですの」


 確かにアイシャーリンは作法が苦手なところがある。


 が、そこまでの悪評を聞いた事がなかった。

 そこを聞くと、彼女曰く、少し失敗したら王妃様がアイシャーリン様は可愛いですわね、と苦言を零すらしい。更にそれが恥ずかしさといたたまれなさで傷心した心に染みるらしい。


 いや、それは誤解では?王妃様はアイシャーリンがお気に入りで、失敗した姿すら可愛いらしいが。

 だから、少なくとも馬鹿にしているのではなく、単純に愛でているだけだと思うのだ。


 言おうかな。このままでいったら面白くなりそうだけど。

 やっぱり辞めとこう。面白そうだし。

 私は根っからの悪戯好きだ。

 人からは腹黒って呼ばれるが、お茶会後にそこまでかな?と弟に聞いたら、いやそうでしょ!!と、真面目な顔されて言われた。

 実に不愉快である。


 そしてこれからの私はアイシャーリンの奇怪な行動にたびたび付き合う事となったのである。


 ***


 お茶会から二日後、王都魔術学園での昼休憩で私はアイシャーリンと共に庭園で過ごしていた。


「今日のアイシャーリン様、殿下とはお食事なされなかったわね」


「ほら、最近アイシャーリン様が殿下を避けているじゃない?」


「まぁ!アイシャーリン様が!!」


 裏道からコソコソっと娘達の会話が聞こえてくる。

 もちろん本当の事なのだが。


 最近の噂話はアイシャーリンと殿下の事で持ちきりだ。私としてはアイシャーリンの方に問題がどう考えてもあるのだが、噂好きの乙女達は妄想を膨らませている様である。

 例えば、アイシャーリンが殿下を避けているのは殿下のアプローチが積極的で嫌になっただとか、殿下が他の娘に手を出したのでアイシャーリンが怒り続けている、などなど…


 アプローチが積極的なのは本当だが、アイシャーリンは殿下のアプローチに気がつかない程、鈍感である。

 そもそも殿下はアイシャーリンに嫌われる様な事などはしないので、他の娘に手を出した事などない。


 そう思うと、殿下が可哀想な人に思えてくる。訳もわからずに婚約者からは避けられ、さらにその事を噂のネタにされて。

 まぁ、本人は全然悪人なのだが。

 殿下…クリス第一王子殿下。アイシャーリンの婚約者であり幼馴染、そして次期王だ。

 アイシャーリンに負け劣らず、美貌で、髪は太陽の光を反射しながらの甘い金色で、瞳は蒼く穏やかな海を連想させる青色だ。


 やはりこちらも絶大な人気を誇っていて、よく物語で出てくる様な王子様の中の王子様だ。

 紳士的な対応に淑女の皆さんは誰もが一度は見惚れるらしい。

 私は最初から恋愛的に見ていなかったので、特に見惚れる事もなく、ご一緒させて頂いている。

 そもそも腹の中はドスがつく程黒いので、こちらからはご遠慮したいのだが、アイシャーリンと居ると、必ず付き纏うので致し方ない。


 渦中のアイシャーリンはというと、あっけらかんとしているぐらい相変わらずに呑気だ。

 どうやらお友達という名のアイシャーリンファンクラブさん達が噂を本人にはシャットダウンしてくれているらしい。


 私的にはアイシャーリンに噂を聞かせて早く自分がした失態を自覚させたいのだが。

 彼女は愛されすぎだ。

 それが未来の国母的には良いとしても。


 巻き込まされた者としては傍観したいところではあるが、これはこれで面白そうとか考えた私だった。

 すると、アイシャーリンが何故かこちらに視線を寄越してきたので意識を戻した。


「ら、ラシファ……殿下がくださった指輪が光っているんですの!」


 彼女の細い指には確かに殿下の髪と同じ、甘い金色の宝石がはめられたデザインが素敵な指輪が光っていた。


 あぁ、これは確か殿下がアイシャーリンがどこに居ても殿下の魔力でわかるっていう発明品だ。


 光っているという事は、殿下がアイシャーリンを探しているのを報せる為用だった気がする。なんだか嫌な予感がかなりするのだが…


 多分当たっているよね。アイシャーリンも珍しく本能的に気づいたのか、冷や汗をかいていた。


 そうして、一分もしない内に殿下は現れたのであった。

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