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87話 「人形の策略その2」

※一部、過激な内容です。


 朝になったので繭と夢見鳥を起こした。


 ――さて、先ず私がする事は私の策に協力者してくれる者を作る事だ、その為には夢見鳥と本当に仲直りしないと。


 私はさり気なく繭に昨日の事で夢見鳥との誤解を解きたい事を伝えると。繭は何の疑いも無く私と夢見鳥だけの場を作ってくれた。


 そうして繭は寝起きの汗を流す為に一人、シャワーを浴びに向かった。


 「おはよう、夢見鳥」

 「……ふん」


 ベットから起きた妹の夢見鳥に挨拶をしたが、冷たく反応された。例の一件のせいで相当嫌われしまったようだ。今まで慕ってくれた相手から冷たくされるのは一番きつい。


 「なぁ夢見鳥……私は本当にお前の姉じゃなくなったのか?」

 「親しく名前で呼ばないで! あなたはもう夢見鳥のお姉ちゃんじゃないんだから……夢見鳥知ってるんだからね、あなたの中にお姉ちゃんじゃない別の何かがいるって」


 ――何かがいるだと? 夢見鳥の奴、完全に気づいてやがるな。


 私はなるべく慎重に夢見鳥と話す事にした。


 協力者が欲しいところだが、それ以前に夢見鳥の事が好きな為、本当ではないにしろ以前の姉妹の関係に戻りたいと思った。

 

 「夢見鳥、そんな事を私に言わないでくれ、悲しくなる、もう一度仲直りしよう」

 「嫌、もう話しかけて来ないでよ、あなたが繭に危害を加えようとしたのを夢見鳥は忘れないからね……この化物」


 夢見鳥が私を蔑んだ目で見て言う。


 また繭だ。繭が私の数少ない大切な者達を奪って行く。私はそう感じた。そして夢見鳥に化物呼ばわりされて悲しかった。


 「今のあなたはおかしいよ、本来、夢見鳥達は化物じゃなくて人に愛される為に作られたラブドールなんだよ?」

 「そんな事は分かっている、だから繭が邪魔なんだ、あいつが大我の愛を私から奪っている……ハッ!」


 私は自分の言ってしまった事をマズいと思った。これでは完全に夢見鳥との関係は修復できなくなってしまう。


 「……ふーん、それがあなたの本心なんだね、だから昨夜、繭を殺そうとしたんだ」

 「ち、違うんだ夢見鳥……」

 「あの優しかった胡蝶お姉ちゃんはもういないんだ、ここにいるのは別の人形の化物、だったら……」

 「おい夢見鳥、どこへ行く気だ!?」


 夢見鳥がベットから起き上がりどこかへ向かおうとした。それを私は慌てて夢見鳥の手を掴んで止めた。


 「離して、繭にこの事を言いに行くの」

 「なんだと!? そんな事をしても無駄だぞ?」

 「そんなことない! 繭に伝えたら大我お兄ちゃんにも伝わる、そうなればあなたは終わり、繭の命も守れるわ!」


 ――こいつ、何て事を……でもまだだ、説得する方法はある。


 「なぁ夢見鳥、考えて見ろ、このまま大我と繭が仲良くなればあの二人は私達に愛情を向けなくなるぞ? そうすれば姉妹揃って死ぬ事になる、だから今は告げ口なんかやめて私に協力する方が良いぞ?」


 ……なんだろう、なんか自分でこんな事を言って嫌になってくる。


 夢見鳥の方は、私の言葉を聞いて、益々私に冷たい目を向けた。


 「あなた、最低ね……正直、夢見鳥はあなたの事を少しはお姉ちゃんだとまだ思っていたけど、今の言葉で完全にその気持ちはなくなったわ」


 夢見鳥は完全に私への信用を無くしたようだ。


 「確かに、繭と大我お兄ちゃんは仲良くなる、そうしたら繭の夢見鳥に向ける愛情が無くなって夢見鳥は死んじゃう事になる……」

 「そうだろ!? だったら――」

 「――でもね、繭は言ってくれたの、夢見鳥が生きていなくても、唯の人形でもずっと一緒にいてくれるって、家族だって言ってくれた」

 「……繭は本当にそんな事を言ったのか?」

 「うん、そうだよ!」


 夢見鳥は今までに見た事のない笑顔で私に自信満々に言う。その姿に私はなんともいえない胸のざわつきを覚えた。


 「――だから夢見鳥は死んでも良い、例え繭と結ばれる事が無くても家族としてずっと一緒に居てくれるから、だから繭と大我お兄ちゃんが仲良くなっても良いと思ってる」

 「……そうか、お前はそう思ってるんだな」


 夢見鳥の言葉を聞いて私は思い出した。それはかつて私が死にそうになった時に感じた気持ち――。


 ――それは大我が孤独じゃなくなる事、そして大我という存在が次の世代に伝わって欲しいという願い。


 人形の身ではそれができないと悟った上で、かつて私は大我から身を引いた。


 「――お姉ちゃん、わかって? 夢見鳥達はラブドールなの、ラブドールの存在意義は所有者から愛し愛させれながら所有者の孤独を埋めること……悲しいけどそれ以上の事は求めちゃいけないよ……」

 「うっ……ううっ」


 夢見鳥の言葉で私は、忘れていた大切な事を完全に思い出した。そして今の自分の行いはとても悪い事だと感じて罪悪感で胸が苦しんだ。だがそれ以上に……。


 「夢見鳥すまない……私は……」

 「良かった、お姉ちゃんわかってくれたのね……えっ? お姉ちゃんそれって……涙? 何で!?」


 どうやら私は泣いていたようだ。心配して私に近づいた夢見鳥が本来人形が流せない筈の涙が私から流れているのを見て驚きの声を上げた。


 『おい、他所の人形……私の娘をたぶらかすんじゃない』

 「――ひっ!? お姉ちゃん何その蛇、どこから出てきたの!?」


 私の着物の中から蛇が出てきた。

 

 「あぁ、お前は始めて会うよな、紹介するよ、この蛇は私の母親だ、こいつ自分で嫉妬の蛇とか名乗ってるんだ……笑えるだろ? そのせいで私もとても嫉妬深いんだ……ダカラ今、私ハオ前ニトテモ嫉妬シテイル」


 私は母親のヘビを撫でながら夢見鳥に敵意の籠もった目を向けた。


 ――羨ましい、そして憎い……夢見鳥の奴が憎い。こいつは古家家というちゃんとした家族を持っている。それ故にとても愛されている。だが私はどうだ? 本当の母親は爬虫類で父親は見ず知らずの男、こんな家族では愛情を感じない。


 夢見鳥と私とではそもそも、立場や生まれた環境が違う。なので夢見鳥は私の気持ちなど理解できないと感じた。


 『胡蝶、この人形の言うことなんか聞くな、お前はこいつとは違う、何故ならお前はいづれ私の手によって人間になれるのだからな』

 「あっそうか、そうだったよお袋、私はこの人形とは違うんだったな、あははっ」


 蛇首に巻き付いて耳元では囁く。それで私は夢見鳥とは違う、特別な存在である事を思い出した。


 そうして思い出したあと、夢見鳥の扱いをどうしようか考えた。


 「お、お姉ちゃん? どうしてそんな怖い目で夢見鳥を見るの?」

 「おや? 私はお前の姉なんかじゃなかったはずだが?」

 「お姉ちゃん許して……酷いことしないで……」


 夢見鳥がベットに後退り、怯えた表情で私を見る。


 ――こいつはもう私の邪魔にしかなら無い、処置しなくちゃな……残念だよ夢見鳥、できればお前も私の本当の家族に加えたかった。


 私は怯える夢見鳥を放って置きながら、床に置いてある繭のお泊りセットのカバンを漁った。そして中から繭の白い下着を取り出した。


 「――ちょ、お姉ちゃん!? それ繭の下着でしょ? 早く返して!」

 「あぁ、返してやるよ……お前の顔にな!」

 「――んんっ!?」


 私は夢見鳥に馬乗りになると、取り出した繭の下着を夢見鳥の顔に無理やり押し付けて苦しめてやった。そしてありとあらゆる罵声を浴びせた。


 「この、この! 好きな相手と一緒になる事を諦めた負け犬人形め、私はお前とは違うんだ、私を愛してくれる人間はもう、大我しかいないんだ!」

 「うー、うー、ぷはっ……はぁはぁ、お姉ちゃん何言ってるの? お姉ちゃんの事を愛してくれるのは大我お兄ちゃん以外に私達のお父さんがいるでしょ!?」

 「あぁ、その事か……夢見鳥、教えてやる、私はな……」


 夢見鳥を苦しめるのを一旦やめて私は夢見鳥に顔を近づけて耳元で囁いてやる。


 『人形作家、古家亮太郎の作品であり娘である胡蝶じゃないだ』


 囁いたあと夢見鳥の顔を見ると何がなんだかわからない顔をしていた。その表情を見るのが面白くなって、私はさらに本当の自分の事を教えてやった。


 「くくくっ、訳がわからないといった顔をしているな、だからもっと教えてやるよ……私はな、この体は親父が作ったものだが、中身が違うんだ」

 「――中身が違う? お姉ちゃん、夢見鳥、難しいことわかんないよ」

 「……はぁ、仕方ねぇな、わかりやすく言うとだな、今お前とは話している私の人格はな親父ではない、どこかの誰かがこの蛇と一緒に作って勝手にこの体に入れたもんなんだ」

 「えっ、じゃあもしかして、最初にお姉ちゃんが記憶がないって言ってたのは――」

 「――私がお前姉である胡蝶の人格を持っていない、全く別の存在だったからだ」


 夢見鳥はやっと私の説明が理解できたようで、体を震わせて絶望の表情を浮かべた。


 「……じゃあ胡蝶お姉ちゃんは何処に?」

 「さぁな、最近まで私の中に人格が眠っていたが、今頃はもう消滅してるんじゃないか?」

 「えっ、嘘でしょ……それじゃもう、胡蝶お姉ちゃんには会えないってこと……そんなのいやぁああああっ! 胡蝶お姉ちゃああああん!」


 夢見鳥は大声を出して泣きじゃくった。そして手足をジタバタさせて暴れた。私はそれを止める為に再び夢見鳥の顔に繭の下着を押し付けて黙らした。


 「暴れるんじゃねぇよ、いつもこうやって繭の下着を嗅いで落ち着いんだろ? この変態人形! あははっ!」

「んー、んー! やめて、やめてっ!」

 「何が止めてだ、本当は嬉しい癖に……気持ち悪い奴」

 「――胡蝶ちゃん、夢見鳥に何してるの!?」


 夢見鳥を懲らしめるのに夢中になり過ぎて、繭がシャワーから上がって来たことに気が付かなかった。蛇はいつの間にか私の中へ戻っていた。


 ――ったく、お袋の奴、繭が来てたなら教えてくれよ、ちょっと騒ぎ過ぎたな、けれどまだ何とか言い訳はできるし、寧ろこの状況は好都合だ。


 夢見鳥は繭が来たことで安堵の表情になったが、ここからさらに絶望に突き落とす。私はその為に直ぐに動いた。


 「――繭、聞いてくれ、夢見鳥の奴は変態なんだ! 繭がシャワーに行って居ないのをいい事にカバンから繭の下着を取り出していやらしい事をしたんだ!」

 「……そうなの、夢見鳥?」

 「違う! 夢見鳥はそんな事しないもん!」


 私の嘘を聞いて繭は泣きそうな顔をしながら夢見鳥に問いかける。すると当然、夢見鳥は反発する。


 「繭、夢見鳥の奴は前も同じ事をしたのに反省しないんだ、それどころか今回は特に酷いんだ……うわあああん!」

 「――っ!? 胡蝶ちゃん泣かないで、どう酷かったのか私に教えて?」

 「繭! お姉ちゃんは嘘を着いてる、話を聞いちゃ駄目!」


 『――夢見鳥は黙ってなさい!』


 繭が怒った。そして夢見鳥を怒鳴りつけると涙目を浮かべて夢見鳥を睨みつけた。どうやら私が泣くフリをしたのが効いたらしい。


 「ぐすっ……繭、私は夢見鳥と仲直りしようとしてるのにあいつは無視して逃げるんだ」

 「そうね、確かに昨日から夢見鳥は胡蝶ちゃんを避けていたわ」


 繭が私に優しく抱きしめて、頭を優しく撫でながら話を聞いてくれる。


 「それで私は悲しくなって離れていたら、あいつはカバン漁って……ぐすっ、夢見鳥は繭の事にしか興味が無いんだ、だから私を無視して繭の下着であんな事を……うわあああん!」


 私はより大袈裟に泣くフリをした。


 「分かったわ胡蝶ちゃん、それで胡蝶ちゃんは夢見鳥の事を止めよとして上になってたのね?」

 「そうなんだ、私が何度止めろと言っても言うことを聞かないから、つい、カッとなって馬乗りになったんだ……酷いよぉ、私は夢見鳥が大好きなのにぃ!」

 「胡蝶ちゃん……泣かないで、私も……泣きたくなっちゃうから……ヒック、ぐすっ」


 繭は私と一緒になって泣いた。その間夢見鳥はあたふたして何もする事ができなかった。


 「ま、繭? まさかお姉ちゃんの言ってる事を信じないよね?」

 「ごめん夢見鳥、今は話しかけないで……私あなたの事が分からない……唯、気持ち悪くて今は貴方と離れていたいの……ぐすっ、ごめんね」

 「嫌、嫌だよ繭! お願い夢見鳥から離れないで!」

 「――触らないで!」


 繭は、伸ばされた夢見鳥の手を弾いた。その瞬間、夢見鳥は絶望の表情を浮かべて膝から崩れ落ちた。


 私はこの瞬間、夢見鳥という邪魔者が居なくなった事を確信した。


 ――うまくいったな、あとは繭一人だけになった、これで動きやすくなる。


 「なぁ繭、今は夢見鳥から離れよう……そうだ、気分転換に外へでかけないか?」

 「外へ? でも胡蝶ちゃんは……」

 「大丈夫だ、外に行くのに私が人形だとバレない服を持っているから、さぁ行こう」

 「わ、分かったわ胡蝶ちゃん」


 私は落ち込んでいる繭を無理やり起こして外へでかける着替えをした。着替えた格好は前に大我とデートした日と同じ格好だ。しかし蝶の髪飾りだけはつけなかった。


 先に部屋の外で繭を待たせて、あとは床に膝を着いて下を向いている夢見鳥に声をかける。


 「おい夢見鳥、お前はそこで大人くしておけ、私の邪魔をするな……安心しろ今日は繭に手を出さない」

 「……お姉ちゃん、いや化物、あなたは悪魔よ、存在しちゃいけない人形よ、絶対に大我お兄ちゃんにあなたの事がバレてあなたは捨てられるわ!」

 「ふん、せいぜいそうならないようにうまくやるよ、じゃあな夢見鳥……(お前とは本当の姉妹になりたかったよ)」


 私は胸にモヤモヤしたものを感じながら部屋に夢見鳥を残して、繭とでかけた。


ヤバイ、どんどん胡蝶ちゃんがサイコパスになっていく。(´;ω;`)


こんな小説ですが、引き続きお付き合い下さい。

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