57話 「行方不明の人形」
姉のボタンが行方不明なので捜索することになった。
私はボタンが姉妹の中で一番嫌いだが、だからといって探さない訳にはいかない。大切な家族の一人だ。
「でだ、ボタンのやつはいつからいないんだ?」
「……実は昨夜からいないの」
「は、そうなのか?」
「ええ、ボタンお姉様はいつもバラと同じ布団で寝てくださるのに昨夜は帰って来なくて一人で寝てたの……グスッ」
「ぶっ! お、お前ら一緒に寝てんのかよ……まさか姉妹で変なことしてんじゃねぇだろうな?」
私はバラから後ずさった。
「胡蝶お姉ちゃんも前は夢見鳥と一緒に寝てたよ?」
「はあ!? 私がそんなことするわけねぇだろ、嘘つくな」
「夢見鳥嘘ついてないもん、胡蝶お姉ちゃんのバカバカ!」
夢見鳥がポカポカと叩いてくる。
「もう、あなた達そんなことしてないで早くボタンお姉様を探すのを手伝って!」
「分かったよバラ、それでボタンの行方について手がかりはあるのか?」
「ええ……昨日寝る前にボタンお姉様はバラの体を丁寧に手入れしてくださったわ、でもバラはボタンお姉様の体の手入れの仕方が分からないからボタンお姉様は心春お姉様に手入れしてもらうと言って出ていったきり戻って来なくて」
……おかしい、私は昨日の夜に心春と一緒にいたがボタンは来ていない。
「昨日私は心春の部屋にいたがボタンは来てないぞ」
「え、そうなの? ならボタンお姉様はいったいどこへ……ハッ、もしかして大我様のお部屋にいったのかしら」
「いや、大我のところには行ってないはずだ、昨日お前らの力を借りて気絶した大我を部屋に運んだたろ?」
「そういえばそうね、だとしたらボタンお姉様は……うわあぁぁん!」
バラは情緒不安定のようですぐ泣き出した。
「ああああ! だから泣くなって、それにだとしたらってボタンがどうにかなるのかよ?」
バラは私の言葉にカチンときて私を睨み付ける。
「胡蝶あなた分かってないわね、ボタンお姉様は姉妹の中で一番美しいの、だからきっと誰かにさらわれたんだわ!」
ボタンが一番美しいだと? ……へぇ。
だんだん気分がしらけてくる。
「あぁ、そうかもしれない、何せボタンお姉様は一番美しいからな……あーあ気分わりぃから私は捜索を抜ける」
「なっ、胡蝶あなたに抜けられたら困るわ! ボタンお姉様が拐われてたらあなたの力が必用なのよ」
「はぁ、私にボタンを拐ったやつと戦えとでも言うのか?」
「ええそうよ、だってあなたお風呂で大我様を一撃で倒してたでしょ?」
確かに私は強い、けど一応女だぞ?
「胡蝶お姉ちゃんお願い協力して……ボタンお姉ちゃんは夢見鳥に意地悪するから苦手だけどそれでもいなくなったら嫌だよ」
「はぁ……夢見鳥」
夢見鳥が上目づかいでお願いしてくる。
妹にこうしてお願いされたら断る訳にはいかないな、ったくいつから私はこいつに甘くなったんだか。
「ちっ、行くぞ」
「ちょっと胡蝶どこに行くつもりよ!」
「ボタンを探しに行くんだよ……バラ、わかったらさっさとお前が仕切れよ」
バラは最初は驚いていた顔をしていたが後から笑顔に変わった。
「ええ、行くわよ胡蝶」
「ちょっと待ってよ夢見鳥も一緒に行く!」
私達三人は部屋を後にする。
「そういえば胡蝶お姉ちゃん昨日は心春お姉ちゃんと居たって言ってたけど夜は一緒に寝たの?」
「そうだけど……ハッ!」
「ずるい、何で夢見鳥と一緒に寝てくれないの!?」
「だ、黙れ昨日は理由が会ったんだよ! いいから行くぞ」
……。
「あれ? 珍しい組み合わせだね、どこに行くの?」
部屋を出たとき丁度ヒマワリと鉢合わせた。
「ヒマワリお姉様、実はボタンお姉様が……」
バラがヒマワリに事情を話した。
「ええっ、そうなの!? お父さんに言わなくちゃ」
「まぁ、待ってくれよ姉貴まだ拐われたかどうか分からないからハッキリしてから親父に言おう、それより聞きたいことがあるんだが」
「何かな胡蝶ちゃん?」
「ボタンは普段外に行くことはあるのか?」
「いやボタンちゃんは外に行かないね、あの子外に出たら肌が劣化するとか言って出たがらないから」
……ふむ、どうやらボタンは外に出ずにまだこの屋敷にいる可能性が高いな。
「じゃあ、私はツキミソウと一緒に念のため外を探してくるよ」
そう言ってヒマワリは去って行った。
……。
次にガマズミとキンセンカの所へ行き同じように尋ねるが二人とも知らないと言って結局手がかりは掴めなかった。
残るのはヒガンバナとスイカズラだけだ。
ちょうど探しに行っているとスイカズラが台所で食器の片付けをしていたので尋ねてみる。
「あっ、スイカズラお姉様ちょっと聞きたいことが……」
「あら? バラちゃんと胡蝶ちゃんと夢見鳥ちゃんじゃない、三人ともどうしたの?」
「実はボタンお姉様が昨夜から行方不明で、スイカズラお姉様は何か知りませんか?」
「……えっ」
スイカズラは表情が固くなった。
「し、知らないわ……まったくあのこはいつも問題ばかり起こしてしょうがないわね!」
怪しい、何でこいつはこんなに動揺しているんだ?
「じゃ、じゃあ私はヒガンバナお姉様の手伝いで忙しいからもう行くわね」
スイカズラは逃げるように去って行く。
「スイカズラお姉様も知らないなんて、これからバラはどうやってボタンお姉様を見つければ……うわああぁんボタンお姉様ぁバラの所へ戻って来てぇ!!」
おい。
「バラっ、お前はバカか今さっきのスイカズラの態度はあからさまにおかしいだろ! きっとあいつは何か知ってるぞ」
「ええっ、そうですの!?」
バラは驚いている。
「夢見鳥もわかんなかった、胡蝶お姉ちゃんすごいね!」
おい、夢見鳥お前もか。
もしかすると球体関節シリーズの妹タイプは全員頭がどこか抜けてるのかもしれない。
「とりあえずスイカズラに気づかれないようについて行くぞ」
私達はスイカズラに着いていこうとしたが一足遅く居なくなっていた。
「畜生、遅かったか」
「……これからどうするの胡蝶お姉ちゃん」
「そうだな、スイカズラの部屋を探しに行くか」
私と夢見鳥の会話を聞いた途端バラが血相を替える。
「ダメよ、それだけはダメ!」
「何でだよ」
「ボタンお姉様が言ってたの絶対にヒガンバナお姉様とスイカズラお姉様の部屋へ行ってはいけないと」
バラは少し怯えた態度をとる。
「実はボタンお姉様はヒガンバナお姉様達を恐れているの」
「マジで!? あのボタンが怖がってるのか?」
「ええ、だからボタンお姉様はいつもバラをヒガンバナお姉様達から遠ざけようとしていたわ、それと怖がっている理由に関してはどうやらお姉様達の性格が関係しているようなの」
性格か……そういえば思い当たるふしがある。
ヒガンバナとスイカズラは体中傷だらけだし、私はヒガンバナに昨日髪の毛を捕まれて脅された。
もしかしてボタンは……。
事態は急を要するようだ。
「おい、ボタンが危ないかもしれないから急いであいつらの部屋に行くぞ!」
「なんですって……ちょっ胡蝶待ちなさい!」
私はバラの制止を無視して真っ先にヒガンバナ達の部屋へ向かった。




