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39話 「お風呂に行こう」


 夕食もほとんど終わりのときだった。

 

 「そうだ、繭さんも良ければ娘達とお風呂に入って来たらどうかね?」

 「え、私がですか?」

 

 この屋敷の主で夢見鳥のお父さんである古家さんに私はお風呂を薦められた。

 

 「まぁ、女性同士だから気が要らないと思ったんだが無理にとは言わないよ」

 

 確かに女性同士だと気が要らない、それにそろそろお風呂に入りたかったので承諾することにする。

 

 「いえ、大丈夫ですけどその、全員が入る事って出来るんですか?」

 

 古家さんの人形、もとい娘達は私の夢見鳥をあわせると十一人になる。屋敷は確かに大きいが十一人も一度に入れるお風呂がどこにあるのか私は疑問に思った。

 

 「ふふふ、心配しなくてもいいよきっとびっくりするから……お前達、繭さんを案内しなさい」

 

 古家さんに言われてヒガンバナちゃんとスイカズラちゃんが私を案内する。

 

 ガマズミちゃんとキセンカちゃんも一緒にいたが二人は何も言わずに先にどこかへ行ってしまった。

 

 はぁ、びっくりするっていったいどんなお風呂なんだろう?

 

 食事をした部屋を出て廊下でヒガンバナちゃん達の後を付いていきながら考える。すると突然ヒガンバナちゃんがおさげをくるりと回転させなが振り返る。

 

 「繭様さっきは失礼なことを言ってすみませんでした」

 

 ああ、私を幼いと言ったことか、そんなことは……うん、気にしてない。

 

 「ヒガンバナお姉様に悪気はなかったんです! 私からも謝りますから許してください」

 

 妹のスイカズラちゃんまで私に謝りだした。

 

 スイカズラちゃんかぁ、うちの夢見鳥と姿形は一緒なのにこの子の方がしっかりしてるなぁ……夢見鳥、何で下着の匂いを嗅いじゃう変態さんになっちゃったの?

 

 夢見鳥にがっかりしつつ頭をさげて謝るヒガンバナちゃんとスイカズラちゃんに気にしてないと言って許す。

 

 ……。

 

 「それでは繭様準備できたらここで待っててください」

 「私達は心春お姉様を呼んできます」

 

 私は二人と別れて自分の部屋に向かう。

 

 「ただいま」

 

 部屋に入ると夢見鳥が膝を抱えてうずくまっているのが目に映った。

 

 「……繭? 繭ぅー! ごめんなさいごめんなさい、もうしないから夢見鳥を嫌いにならないで! 捨てないで! うわーん!」

 

 夢見鳥は私が帰って来たことに気づくとすぐに抱きついてきて泣きじゃくる。

 

 どうやら夢見鳥はまだ動揺しているみたいだった。そんな夢見鳥を私は優しく抱き締め頭撫でた。

 

 夢見鳥がこうなったのには理由がある。家に帰って来たとき夢見鳥が私の下着を勝手に持ち出し、しかも匂いまで嗅いでいた。その件について私は夢見鳥を初めてきつく叱った。

 

 叱ったとき夢見鳥は一瞬何が起こったかわからないようだった。しかしすぐに自分が何をされたのか理解して大泣きをして何度もごめんなさいとあやまった。

 

 私は腹が立っていたので無視して夕食に行ってしまった。

 

 どうやらきつく叱り過ぎたみたいね。

 

 「夢見鳥、大丈夫もう怒ってないから泣き止んで」  

 

 夢見鳥を落ち着かせるようにできるだけ優しく言う。

 

 「繭、おパンツの匂いを嗅いでごめんなさい、夢見鳥は良い子になるからもう無視しないで」

 「ちょ、夢見鳥! 恥ずかしいから言わないで……ほんとにもうしないでよ?」

 

 夢見鳥が反省したようなのでもう一度強く抱き締めて頭を撫でてから離れる。夢見鳥は目元は濡れていないけど涙を拭う素振りをしていた。

 

 全く夢見鳥は不思議ね人形なのに本物の人間の女の子にみえる。

 

 「繭?」 

 

 私がじっと見ていることに夢見鳥が不思議に思ったのか首をかしげている。

 

 そういえばボタンちゃんが言ってたっけ夢見鳥が下着の匂いを嗅ぎながら下半身をモゾモゾしていたって。 

 

 その場面を想像すると顔が熱くなってきた。

 

 それっていわゆるアレよね? ということは夢見鳥は私に欲情してるってこと!? 

 

 途端に背中に寒気が走り思わず夢見鳥からスゥっと離れる。

 

 「ああっ! 繭が夢見鳥から離れた! やっぱり嫌いになったんだ、やだやだー!」

 「違うの! 違うから泣かないで」

 

 慌てて再び泣きそうになる夢見鳥をあやす。それから落ち着くのを見計らって言う。

 

 「夢見鳥、これから一緒にお風呂に行くよ」

 「お風呂? 繭、夢見鳥はお風呂に入れないよ?」

 「大丈夫よあなたのお父さんが後で整備してくれるらしいからいきましょう」

 

 私はお風呂に行く準備に取りかかった。その間夢見鳥は私の後ろに立ち私の服の背中部分をつまんで待っている。

 

 ふふ、夢見鳥は甘えん坊なんだから。

 

 ……。

 

 「あ、胡蝶ちゃんも呼ばないと」

 

 お風呂の準備が終わったとき大我さんの胡蝶ちゃんを思い出した。

 

 早速胡蝶ちゃんがいる部屋へ向かう。

 

 「大我か!?」

 

 私が部屋の前に行くと足音に反応した胡蝶ちゃんが私を大我さんと勘違いして飛び出して来た。

 

 「えっと、大我さんは今古家さんと食事してるの」

 「そ、そうか」

 

 胡蝶ちゃんは気まずそうにしている。

 

 「胡蝶ちゃんこれからお風呂に行くから一緒にいきましょう?」

 「え、でも私はお風呂に入れないんだが」

 

 胡蝶ちゃんは困惑しているようだ。   

  

 「大丈夫だよお姉ちゃん、お父さんがちゃんと手入れしてくれるって」

 

 横から夢見鳥が言う。

 

 「そ、そうか……それなら私も行こうかな、すぐに準備するから待ってくれ」

 

 そう言うと胡蝶ちゃんは部屋に戻り鞄をゴソゴソとしだした。

 

 私は胡蝶ちゃんを待つ間にあまり誉められたことじゃないが部屋をのぞいた。

 

 ここが大我さんが泊まる部屋かぁ。

 

 「……確かにこの辺りに着替えとタオルがあったはずなんだけど」

 

 胡蝶ちゃんが部屋にある鞄をガサゴソと漁る。そのとき偶然鞄から大我さんの下着が出てきたのを私は発見した。

 

 あ、大我さんの下着……普段あんなのはいてるんだ。

 

 ゴクリと息を飲む。

 

 そうだ、今日川に行ったとき大我さん下着一枚だった。

 

 大我さんの体すごく大きくて鍛えられてた……大我さんだったら私なんて簡単に捕まえて離さないんだろうな。

 

 川での出来事と同時に警察に大我さんを向かえに行ったことをおもいだす。

 

 私、人がいるのに恋人みたいに抱き合ってそのとき体が熱くなって……。

 

 「待たせたな繭……どうしたボーっとして?」

 「え? な、何でもないよいきましょう!」

 

 私ったら何で大我さんの下着を見てるのよ、これじゃあ夢見鳥とかわらないわ! 

 

 胡蝶ちゃんに私が考えてたことを悟られないように急いで待ち合わせ場所に行く。

 

 「あ、繭様こっちです!」

  

 ヒガンバナちゃんが待ち合わせ場所で私を呼ぶ。

 

 他にもスイカズラちゃん、そして心春さんがいて私達を待っていた。

 

 「あれ? 他の子達はどうしたんですか?」

 「すみません、先に行っちゃいました」

 

 ヒガンバナちゃんが呆れたように言う。

 

 「あの、胡蝶ちゃん?」

 「……」

 

 心春さんが胡蝶ちゃんに話かけていたが胡蝶ちゃんは顔を背けて何もしゃべらなかった。

 

 なんだか空気が重たい。

 

 心春さん何であのとき大我さんの部屋にいたんだろう? 本当に大我さんとイヤらしいことをしてないの?

 

 大我は心春さんとしてないと言っていたが心春さんと会うとその言葉を信じられなくなる。

 

 何故なら心春さんは私よりスタイルが良くて大人な感じの女性だからだ。

 

 幼い私より心春さんの方が男の人は良いんだろうな。

 

 なんだか悲しくなった。

 

 「それじゃあ行きましょう」

 「繭様きっと驚きますから楽しみにしてくださいね」

 

 ヒガンバナちゃんとスイカズラちゃんがそう言って動き出したので私は涙をばれないように拭って歩いた。

 

 ……。

 

 ヒガンバナちゃん達は屋敷の庭をぬけて裏山へ向かう。

 

 いったいどこに行くんだろう、外に行くってことはまさか露天風呂?

 

 裏山はちゃんと整備された道がありそこを五分程歩いて進む。すると大きな岸壁が見えてきた。

 

 岸壁の下の部分に小屋が建っていてヒガンバナちゃん達はそこに普通に入っていった。

 

 私と胡蝶ちゃんは訳がわからなくなってお互いを見返す。

 

 「ああ! 夢見鳥ここ来たことある、すごいんだよ! 繭、早く来て」

 

 夢見鳥に手を引かれて小屋に入る。中は棚がいくつもあり何ヵ所か服が置かれていた。

 

 「ふふ、繭様驚かれましたぁ? この先にいけばもっとすごいのでお待ちしておりますわぁ」

 

 心春さんが裸でタオルで前を隠した状態でそう言って先に行った。

 

 「え、ここはもしかして脱衣所なの?」

 「どうやらそうみたいだな……あいつを見ろよ」

 

 私の問いかけに胡蝶ちゃんが反応した。そうして胡蝶ちゃんの言った方向を見ると夢見鳥が恥ずかしい気もなく服を脱いで裸になっていた。

 

 「繭、早くして」

 「ちょっと待って夢見鳥、今脱ぐから」

 

 夢見鳥に急かされて服を脱ぐ。胡蝶ちゃんも私の隣に来て服を脱ぎ始めた。

 

 タオルで前を隠し小屋の奥へ行くと扉がありそこを開けると下へ伸びる階段があった。

 

 少し怖いな。

 

 階段の壁にはうっすらとした照明がついていて暗くはなかったが地下と言うこともあり少し恐怖を感じた。

 

 「胡蝶ちゃんお願いがあるんだけど、私今メガネを取っていてあまり見えないのだから手を繋いでくれないかな?」

 

 私は恐怖心を悟られないようにメガネを理由に手を握ろうと思った。


 「ああ、いいぜ」

 

 胡蝶ちゃんそう言うと私の手を繋いでくれた。

 

 私から言い出したことだけど女の子同士裸で手を繋いで歩くなんて少し恥ずかしいな、でも安心する。

 

 胡蝶ちゃんが私の手を強く握った。


 もしかして胡蝶ちゃんも怖いのかな?


 私はそんな風に思った。

 

 夢見鳥はそんな私達に気づかずに先行き進む。

 

 少し階段をおりると温かく湿った空気を感じて来た。

 

 もしかして!

 

 私は人生で忘れられないくらい驚いたことがある。

 

 それは人形の夢見鳥に命が宿っていて普通に意思を持って動いてしゃべること。

 

 もうひとつは今目の前に広がる地下の温泉だ。


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