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27話 「災いの匂い」


 俺は心春さんとしばらく部屋で他愛のない話をしていた。

 

 「あぁ、お兄様ぁ……にゃぁぁん」

 

 突然心春さんが猫が甘えるように俺にすり寄ってくる。

 

 「ちょっと心春さん引っ付き過ぎませんか?」

 「えぇーそんなことないですぅ、ごろにゃあぁ」

 

 俺の隣に正座して寄りそい心春さんは俺の肩に頭をこすりつける。

 

 あぁ心春さんいい匂いだなぁ。

 

 心春さんに最初に会ったときと違う態度と外見にギャップを感じて俺は可笑しくなり笑いが吹き出した。

 

 「ぷ、……あははは! 何で心春さん猫みたいにするんですか?」

 「ふふふ、何でですかねぇ?」

 

 心春さんに質問して質問で返された。そんなやり取りがなんだか楽しかった。

 

 「なんか心春さんといると楽しいな……あっ!」

 

 ダメだ俺には胡蝶がいるんだ……もしかしこれは浮気になるのか? だとしたらまずい、これは本格的にまずいぞ……これが胡蝶に知られたら。

 

 ⎯⎯⎯

 

 「ったくこの泥棒猫が……おーい大我ー、これはどう言うことだぁ?」

 

 胡蝶が棒読みで俺に問いかけてくる。

 

 心春さんは和室の障子に頭から腰まで突っ込みピクピク痙攣している。

 

 「あははは、どういうことなんだろうね……」

 

 俺は胡蝶が怖くて適当にしか答えられない。

 

 そんな俺に胡蝶は仁王立ちをして俺を睨み付ける。

 

 「うわあぁぁ!」

 

 胡蝶の視線に耐えれなくなり後戻りをして逃げようとすると足がひっかかり、うつ伏せに倒れてしまう。

 

 起き上がろうともがいていると背中に体重を感じた。

 

 「おい大我逃げんなよ、寂しいじゃねえか」

 

 胡蝶が俺の背中に跨がってきた。

 

 「いや、そのこれは違うんだ……あ、そうだ! 俺も胡蝶と離れてて寂しかったんだ、だから心春さんと少し話して気分を和らげようとしてただけだ!」

 

 俺はやけくそで言った。

 

 さすがにこれは無理のある言い訳か?

 

 胡蝶は溜め息を着くと両腕で俺の頭を優しく包み込む。

 

 「あぁ大我、お前もわたしと離れてて寂しかったんだな、なんだか嬉しいぞ……」

 

 胡蝶は顔を俺の頭に近づけてグリグリと頬擦りする。

 

 やったか? 胡蝶はもしかしたらチョロインかもしれない。

 

 「……けどこれは浮気だ、死ね」

 「え……コホっ」

 

 胡蝶は両腕に思いっきり力を入れて俺の首をへし折る。

 

 ⎯⎯⎯

 

 うわおっ! こいつはヤベーぜ、胡蝶ならやりかねない。

 

 俺は想像して震えた。

 

 「あの、心春さん俺ちょっと喉乾いたんでお茶貰ってもいいですか?」  

 「え、あっそうですね今持ってきますわぁ、ついでにわたくし着替え来ますね」

 

 心春さんはそう言うと立ち上がり部屋から出て行った。

 

 よし、なんとか離れてくれたな。

 

 「あら、繭様も…………」

 

 …………。

 ………。

 

 「私、帰ります」

 

 心春さんが部屋から出てすぐに心春さんと繭さんが話しているのが聞こえた。

 

 「心春さん、さっき繭さんの声が聞こえましたけど何かありました?」

 

 「いえ、何も……」

 

 心春さんは俺に振り替えるとゆっくりと近づいてきて俺を抱き締める。

 

 「お兄様わたくしは嫌な女ですぅ……」

 「え、それはどういう?」

 

 心春さんは何でもありませんと言って去っていった。

 

 ドタドタ。

 

 心春さんが出て行ってしばらくすると廊下から複数の足音が聞こえてきた。

 

 「おいてめえら着いて来んじゃねぇよ!」

 

 胡蝶が怒鳴っているのが聞こえた。

 

 「えぇ? いいじゃない……さてとここが大我様お部屋ね、ふふふ」

 「おじゃましますわぁ」

 

 障子を開いて部屋に誰かが入ってきた。

 

 誰だ? ……って、ヤバイこいつらは妖艶組の双子だ!

 

 頭に牡丹と薔薇の髪飾りを着けた人形の二人が来た。俺はこの二人を特に警戒している。

 

 「お兄ちゃん遊びに来たよ!」

 「私達といっぱいお話してよ!」

 

 活発な姉妹が二人して障子から顔を除かせている。

 

 「ちょっとあなた達どけなさい」

 

 そう言って二人をどかして入ってきたのはメガネの姉妹だ。メガネの姉妹は部屋に入ってくるなり俺に詰めよってきた。

 

 「ちょっとあなたよくもうちの可愛い妹を不良にしたわね!」

 

 「胡蝶ちゃんをあんな風にしたのはあなたでしょ! この最低男!」

 

 おいおい、いきなり酷い言われようだな。

 

 「あの、胡蝶がどうかしたんでんすか?」

 「どうかしたですって!……あなたねぇ」

 「まぁまぁ落ち着きなよ姉ちゃん達」

 

 活発な姉妹の片方が間に入りなだめる。

 

 「あなた達ねぇ……」

 「あーわかったわかった、姉ちゃん達の小言は分かったから!」

 「なっ!? まだ何も言ってないでしょ!」

 

 活発な姉妹はメガネの姉妹を軽くあしらうと急に俺の方を向きニヤニヤと俺を上からしたまで眺める。

 

 「へー兄ちゃん良い体してるね……これなら丈夫そうだし色々してくれそうだね! ツキミソウもそう思わない?」

 「同感だよヒマワリ姉ちゃん! これはボタンとバラが夢中になる訳だ! うふふ、何して遊んでもらおうかなぁ」

 

 何だか自分の体を誉められるのは嬉しいな、だけど何不穏なことを言ってたような?

 

 「不潔だわっ!」

 「この変態!」

 

 活発な姉妹の後ろでメガネの姉妹達が喚いていた。

 

 「うふふ、ヒマワリお姉様達、見る目がありますわね、 けど大我様は私のものよ」

 「ボタンお姉様だけずるいですわ、バラも大我様が欲しいですわ」

 「あら、ごめんなさい……じゃあ私とバラの二人のものにしましょう」

 「ええ、ボタンお姉様」

 

 二人はそう言って俺の胸にもたれかかる。

 

 「うわっ! ちょ、離れてくれないかこのままだと俺が胡蝶に殺される」

 「たぁーいぃーがぁー! 貴様ぁー!」

 

 あぁ、ほらやっぱり……。

 

 胡蝶が殺意の籠もった目と声で俺を威嚇する。そして手をゴキゴキと鳴らし準備運動をすると凶悪な笑みを浮かべて俺と妖艶組の二人に近づく。

 

 ヤバイヤバイなんとかしないと最初に想像したことが本当になってしまう。

 

 「あ、そうだ、何かみんな他に名前で呼び合ってたね、みんなで何て呼んでるの?」

 

 俺はとにかく話題を出してこの場を乗りきろうと必死になる。

 

 「私はボタンよ」

 「私はバラ」

 

 もたれかかる二人が真っ先に答える。

 

 「ヒマワリだよ!」

 「ツキミソウ!」

 

 活発な姉妹が元気に答える。

 

 「胡蝶ちゃんだけでなく他の妹達もたぶらかすなんて本当に最低な男!」

 「そんな人に名前を教えたくないわ!」

 

 メガネの姉妹はそう言ってそっぽを向く。

 

 「あの二人はヒガンバナとスイカズラって言うんだよ兄ちゃん」 

 「ほんとお堅い姉ちゃん達なんだから」

 「こらっ! あなた達!」

 「まぁまぁ姉ちゃん怒るなよ」

 

 ヒマワリとツキミソウがメガネの姉妹の名前を教えてくれた。

 

 続いて胡蝶がボタンとバラに構わずに俺の胸ぐらを掴み言う。

 

 「お前の妻の胡蝶だ、この浮気者」

 

 うん、知ってる。

 

 やっぱごまかすのは無理かと諦めていると突然背中に重みを感じる。

 

 「……私はガマズミ」

 「……私はキンセンカ」

 「君達はもしかして古家さんにいつも抱きついている二人?」

 「……そう」

 「えーと、何で俺に抱きつくの?」

 「……大きい背中、お父さんと違う」

 「……だから抱き心地が気になった」

 

 どうやら二人は俺の抱き心地が知りたいようだ。

 

 「……くんくん」

 「……すんすん」

 「ちょ、おい姉貴達! 何で大我に抱きついて匂いを嗅いでるんだ! やめろよ!」

 

 胡蝶が俺の胸ぐらを掴んだまま怒鳴る。

 

 「……汗の匂いがする、でもいい匂い」

 「……心春お姉ちゃんの匂いがする」

 

 二人のうち一人から爆弾発言があった。発言を聞いて今度はボタンとバラが俺の匂いを嗅ぎだす。

 

 「くんくん……本当だわ!」

 「くんくん……あの年増ババア」

 「やめてくれー! 俺の匂いを嗅がないでくれー!」

 

 女の子達に匂いを嗅がれる……なんて羞恥プレイだ!

 

 「こらボタン、バラ! それとお姉様達その男の匂いを嗅ぐのをやめてください!」

 「そうですわ、そんなことは淑女のやることじゃないです、不潔です!」

 「姉ちゃん、誰も聞いてないよ」

 「私も兄ちゃんの匂いを嗅ごうかなー」

 「お、それいいねツキミソウ!」

 「じゃあ行きますかヒマワリ姉ちゃん!」

 

 ヒガンバナとスイカズラが止めるのを聞かずにヒマワリとツキミソウまで俺の匂いを嗅ぐのに加わる。

 

 ヒガンバナとスイカズラはさらに怒るがしばらくして俺の匂いが気になるのか二人して俺のことをチラチラ伺う。

 

 おいおいやめてくれよ、お前らまで加わったら誰がこの事態を収集つけるんだ?

 

 ……。

 

 俺の心配は以外な形で解決する。

 

 「心春の匂いだと!? おい姉貴達どけろ!」

 

 胡蝶が無理やり俺を姉達から引き剥がす。その引き剥がされた勢いに乗ってうつ伏せになって床に倒れた。

 

 「痛ってー! ……ぐえ」

 

 振り返り起き上がろうとすると胡蝶が俺の腰に跨る。

 

 「……くんくん」

 「おい胡蝶」

 「黙れ……くんくん」

 

 胡蝶は無言で俺の匂いを嗅ぐと突然ハッと何かに気づいて俺を睨み付ける。

 

 「……お前から普段しない甘い匂いがする、大我お前!」

 「うわぁぁ!」

 

 俺は殴られると思い顔をガードするがいつまで経っても殴られることはなかった。


 「何でお前から甘い匂いがするんだ……まさか本当に心春とこの部屋に居たのか?」

 

 胡蝶が静かに俺を見つめて聞いてくる。

 

 俺は正直に部屋で心春さんと話していたことを伝える、その瞬間胡蝶から息を飲む音が聞こえた。

 

 「……何でなんだ、何で話しただけで匂いが着くんだ? 大我、お前は心春と寝たのか?」

 

 胡蝶は悲しそうに顔を歪めている。

 

 「俺は……」

 

 心春さんと部屋で合った出来事を思いだすと否定できない。

 

 俺は心春さんを抱きしめた、そして心春さんに頬にキスされた。

 

 「……なんで、なんで否定してくれないんだよぉ大我ぁ、ぐすっ」

 

 胡蝶は俺の胸に顔を押し付けて泣いた。

 

 「ごめんな胡蝶……」

 「貴様、何で謝るんだ、やってないって言えよ!」

 

 俺は胡蝶の頭を撫でようと手を伸ばした。

 

 「触んな裏切り者!」

 

 胡蝶に手を払われた。

 

 「お兄様ぁお待たせしましたぁ、今お茶をお持ちしま……したぁ」

 

 着替えとお茶を取りに行った心春さんが帰ってきた。

 

 心春さんは白のブラウスにワインレッドのスカートを履いている。

 

 「はぁ、お姉様本当に最悪なタイミングね」

 

 ボタンがそう言うと心春さんは事態を察した。

 

 「胡蝶ちゃん?」

 「……何しに来たんだ心春」

 「胡蝶ちゃん大我さんは悪くないわ」

 「うるせえ! 大我を誘惑したくせに!」

 

 ヤバイ! 俺のせいで胡蝶と心春さんが喧嘩してしまう。

 

 「胡蝶話しを聞いてくれ」

 「黙れ大我! お前本当は私なんか何とも思ってないだろ……だから平気で私を裏切るんだ!」

 

 「違う!」

 「何が違うって言うんだ! 言い訳何か聞きたくねえ! お前なんか心春と『繭』と仲良くしてればいいんだ!」

 

 繭さんの名前が出た途端心春さんがビクッと僅かに震えた。

 

 「どうしたんだいお前達お客さまの部屋でこんなに騒いで?」

 

 騒ぎを聞き付けたのか古家さんがやってきた。

 

 「心春、お前までここに来ていったい何してるんだ?」

 「あの、お父様……」

 「……親父」

 

 古家さんは心春さんと胡蝶を見て何かを察したようだ。

 

 「心春、この部屋から出て行きなさい」

 「……はい、お父様」

 

 心春さんは項垂れて古家さんの言葉に頷くとどこかへ去っていった。

 

 「さぁ、お前達も出て行くんだ」  

 

 古家さんの言葉に従い姉妹達は部屋からぞろぞろと出ていった。

 

 「胡蝶、久我君が苦しそうだから降りなさい」

 

 胡蝶は俺の腰から降りる。

 

 「久我君、娘達が騒がしくてすまないね」

 「……いえ元はと言えば俺が悪いんです」

 「そうなのかい? けど事情を知るために先ずは胡蝶の話しを聞きたい、悪いけど僕の部屋に連れて行ってもいいかな?」

 「いいですよ、俺はちょっと外に出て近所を歩いて時間を潰して来ます」

 

 俺は部屋を出て行こうとした。

 

 「それは構わないけど久我君この辺のことがわかるのかい?」

 「いえ……でも知らない所を歩くのは慣れてますから」

 

 失礼だと思うが俺はこの場所に居たくなかった。出て行くとき胡蝶は目を合わせてくれなかった。

 

 「はぁ、俺って最低だ」

 

 俺は外に出てそう呟くと近所を歩きに行った。

 

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