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10話 「俺の彼女はラブドール!?」


 胡蝶と展望台を後にして俺は町へ観光に行くことにした。町へ向かうバスの中で胡蝶を隣へ座らせながら考える。

 

 ――こいつが俺の彼女? マジで? 人形だぞ? でもこのとおり生きてる、あーもうわかんねえー!

 

 考えれば考えるほどで先程の胡蝶を抱っこした時に彼女宣言された事を思い出してしまい、それが恥ずかしくてまともに胡蝶をみれない。

 

 そうこうしているうちにバスが町へ到着したので俺はいつものように胡蝶をおんぶしてバスから降りた。

 

 「なあ胡蝶降りて車椅子に乗らないか?」

 

 気持ちの整理がつかないので少し胡蝶と離れたいと思った。

 

 「嫌だ……大我、私から離れようとするんじゃない」

 「おっ、おう」

 

 ――こいつ鋭いな俺の考えがわかるのか? これが女の感というやつか?

 

 そのまま歩き出して胡蝶と観光を始めた。観光場所は古い町並みだが道路は割と綺麗に舗装されている。そして多くの観光客で賑わっている。


 しかし観光客をよく観察してみると黒田さんが言った通り人形を持って歩く人がチラホラいる。だが俺みたいに人形を背負って歩いている人は居なかった。

 

 ――本当にこの町は人形愛好家が集まる観光名所なんだ。

 

 今回俺達が来たこの町は機巧からくり町という町だ。


 江戸時代からカラクリ人形の製作が盛んだったらしくその名残から現代では人形作家の工房が多くある。またそういったことからこの町の近くにおもちゃ工場や人形関連の会社がある。

 

 胡蝶を作った会社もこの町の近くだ。暫く歩いていると町の美術館を見つけた。ちょうど今はこの町の人形作家達が制作した球体関節人形の展示をしているみたいだ。

 

 「おっ! 球体関節人形か、ちょっと見たいな」

 

 俺は胡蝶以外の人形がどんなものか興味を持った。

 

 「何だ大我もう他の女と浮気する気か?」

 

 胡蝶が俺の耳元で囁く。

 

 「バカ! ちげえよ!」

 

 俺は慌てて否定した。胡蝶はとても嫉妬しやすい。

 

 「あははは、冗談だよそうムキになるなよ、それにしてもお前の慌てる姿は面白いな、あはは」

 

 こいつからかいやがって……ったく本当は嫉妬してるくせに。

 

 よせばいいのに胡蝶に仕返しをしようと思った。

 

 「けどここなら胡蝶より可愛い人形がたくさん見れるかもな」

 「おい貴様、浮気は〇すと言ったよな?」

 

 胡蝶いつもの本気モードになり優しく両手を俺のおでこと顎に当てている。このままでは首を九十度に無理やりへし折られる。


 「はい、すみません冗談です、ごめんなさい」


 ――やっぱ胡蝶は怒ると恐いな。

 

 その後胡蝶は嫉妬していたが美術館の中が気になるらしく入ってみることにした。


 中は多くの女性の形をした球体関節人形が展示されていて、和風な胡蝶とは違いどれも西洋人のような外見に洋服で身を包んでおり胡蝶とはまた別の魅力を感じた。

 

 「……綺麗だな」

 

 胡蝶がそう言った。普段自分以外全く誉めない胡蝶が、他の女に嫉妬する胡蝶が人形相手とはいえ誉めたことに俺はとても驚いた。

 

 「なあ大我、こいつらは何を思って造られたのかな?」

 

 俺は胡蝶の問いにしばらく考える。

 

 「……考えてみたけどわかんねえ」


 自分の頭の悪さに情けなくなった。

 

 くそ、ここで気が利いたことを言えたらいいのに。

 

 「……あの人なんで人形背負ってブツブツ言ってるんだろう?」

 

 そう言う声が聞こえたので辺りを見て改めて他のお客さんがいたことを思い出し急いで美術館を出た。美術館を出て人気がないのを確認して俺は胡蝶に言った。

 

 「美術館ではあんまりうまく言えなかったけど……俺はお前が居てくれ良かったと思うよ!」

 「そうか、ふふふ、そうかあ!」

 

 胡蝶は嬉しそうに俺の肩を揺らした――。


 

 ――さすがに長時間胡蝶を背負って歩くのが疲れたのでどこかの店の前のベンチに座って休んだ。

 

 「あーつかれた、しかも暑いな」

 

 胡蝶をベンチにおろして隣へ座る。


 ふと胡蝶を見て今が胡蝶とはじめて外に出て公園に行ったときと状況が似ていることに気付いた。胡蝶もそれに気付いたようで含み笑いをしながらからかってきた。

 

 「くくく、大我あのときと一緒だな、また私にジュースを飲ませて服を透けさせるつもりか?」

 「あれは事故なんだよ、はぁ、あのときはあせったぜ」

 

 そんなやり取りをしていて俺はふと後ろの店が何なのか見た。店は人形と女性向けのアクセサリーの店だった。

 

 俺は胡蝶にちょっと待つように言って店に入る。そうしてしばらくして買ってきた物を胡蝶に渡した。

 

 「へぇー大我、突然どうしたんだこんなものを私に渡すなんて」

 「いいだろ、一応お前は俺の……彼女だからな」

 

 胡蝶は包み紙を開けて中身を出した。

 

 「大我! これ!」

 

 俺が買って来た物は紅い蝶々の髪飾りだ。胡蝶はとても驚いていていた。

 

 「今着てる服に会わないけど普段着てる着物に合うと思ったんだ、高かったんだから大事にしろよ」

 

 普段慣れないことをしたので恥ずかしくて胡蝶から目を反らす。

 

 「ああ……大切にするよ、ありがとな大我」

 

 気がつけば夕方になっていて旅館の夕食がそろそろ準備されるのて帰ることにした。バス停で帰りのバスを待っていると背中の胡蝶が俺に尋ねてきた。

 

 「なあ大我本当にお前の彼女は私でいいのか?」

 

 胡蝶の声は少し元気がなかった。

 

 「今更何言ってんだ俺の彼女はお前だよ」

 

 俺は胡蝶といるのが楽しかったしずっと一緒に居たいと今日胡蝶と出歩いて思った。

 

 「本当にいいのか? 私は人形でお前は人間だぞ!?」

 

 胡蝶は少し声を荒げる。そんな胡蝶に対し俺は溜め息を吐いてタイミングを置き答えた。

 

 「それでもいいよ」

 

 そう言うと胡蝶は暫く黙り込んだ。そして泣きだした。

 

 「言ったな……ぐすっ……私を裏切るんじゃねえぞ……畜生なんだよこの気持ちは、ぐすっ」

 

 胡蝶は人形なので涙はでない、だけど泣いていると俺は思った。しばらくして胡蝶が泣き止むと同時にバス亭にバスが到着した。

 

 「なあ大我」

 「何だ胡蝶」

 「人形を彼女にするなんてお前ブッ飛んでるな」

 「うるせえ、お前が言うな」

 

 俺はそんなやり取りの後胡蝶とバスに乗り旅館へ戻った。


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