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98話 「人形が○しにやって来た」


 どうしてだろう? 何故か胸騒ぎがする。繭さんから不在着信があった。唯それだけなのに俺は不安に思った。


「もしかして胡蝶が繭さんに何かしたのかな、だとしたらあいつを叱ってやろう」


 駐屯地で訓練を終えた俺は家に帰った。しかしその時にはもう夕方であたりは薄暗くなっていた。それにも関わらず、家に着くと窓から行くと、部屋の電気が灯っていない事が分かった。しかも中からは何も声がしない。とても静かだ。


「ただいまー、繭さん予定より早い日数で仕事が終わったんで俺、帰ってきましたー……あれ、居ないな」


 呼びかけても誰も反応しないし、中にも誰も居ない。もしかして繭さん、胡蝶と一緒にでかけた?


 そう思い奥に進むと何かを足で踏んだ。何かと思い足下を見ると、それはビリビリに破けた胡蝶の服がだった。俺はそれに驚いてあたりを見渡した。そして益々驚いた。何故なら部屋が散らかっているからだ。まるで誰か暴れたみたいだ。


「そんな、まさか強盗か? だとしたら……繭さん、胡蝶、無事か!?」


 急いで部屋の奥を探したが、二人は居なかった。他には押入れやタンスが開けられて中から何かを取り出された形跡があった。


「本当に強盗かよ、ここには金目のものなんてないんだぞ」


 俺は何か取られた物が無いか確認した。すると、サバゲーで使う武器と装具一式、そしてオリーブドライのレインコートがなくなっている事に気がついた。果たして強盗がこんな物を盗むのだろうか。


 不思議に思って他に形跡がないか部屋の隅々まで探した。するといつも胡蝶が寝るベットにゴミが落ちていた。それを拾ってみると、薄い緑色をした鱗の一部立った。


「なんだこれ、爬虫類の鱗? なんでこんなものがベットに……」


 鱗を手にとって眺めていると、突然ズボンのポッケに入っているスマホが震えた。見てみると黒田さんから電話がかかってきていた。急いで電話にでる。


『はぁはぁ、大我氏……良かった、電話に出てくれて、今すぐに繭氏の通う大学へ来てください!』


「大学に来てくれ? なんでですか?」


『胡蝶たんがそこで繭氏を襲撃してるんです! ですから早く……ぐっ、わたくしも胡蝶たんに襲撃されて動けないんです、本気です、手遅れになり前に……早く』


 俺は黒田さんの言葉を信じた。いくら何でもこんな手の混んだイタズラ電話なんてしない。それに俺は電話をしている最中にある物がない事に気がついてしまった。


 ――隠してたナイフが無い……胡蝶の奴、装具一式と一緒に持って来やがった!


 すぐに大学の場所を黒田さんから聞き出し、胡蝶を止める為の準備を始めた。


 服は汚れても良いよう適当な黒いティーシャツと下は迷彩のズボン、そして一応胡蝶は刃物を持っているので刺されないように通販で買った防刃のベストと手袋。これ等を装着した。


「胡蝶はああ見えて異様に喧嘩慣れしてる、それに以前に胡蝶にエアガンの取扱や戦い方を教えたのは俺だ、きっと一筋縄ではいかない」


 胡蝶は繭さんと胡蝶を二人きりにした事を後悔した。少し考えれば二人は俺のが原因の気まずい関係になっている事は分かる筈なのに。トラブルがいつ起きてもおかしくない状態だった。


「繭さんを絶対に守る……それと胡蝶、ごめん」


 俺は後悔を胸に外へと飛び出した――。


 ――時を遡る事、大我が訓練から帰ってくる前。


『日野先生、お荷物が届いておりますので至急、荷物の受け取りに起こしください、場所は……』


 日野先生こと日野成文は自分の教室で作品を制作していた。そして自分を呼ぶ放送を聞いた。


 僕宛の荷物? いったい誰から……。疑問に思いつつ、作品の制作を中断し、指定された場所へと赴いた。するとそこには運送業の男二人組が人が入れるほどの大きさの箱を地面に置き、自分を待っでいた。


「あっ、日野様ですね、お荷物着払いで○千円になります」

「はっ? 着払いだと……一体誰だそんな非常識な事をする奴は」


 普通、他人に荷物を送り届ける時に着払いにしない。日野は怒って受け取りを拒否したが、運送業の二人はそれは困ると言った。


 日野は新手の詐欺だと言ったが、二人組は自分達はきちんと依頼主の家に趣き荷物を受け取ったからそれは無いと答えた。そう言われて渋々日野は代金を支払い荷物を受け取った。


「全く忌々しい、それよりどこの誰がこんな大きな荷物を僕に送ったんだ?」


 日野はそう言って荷物を眺めた。とても一人では運べない大きさだ。そこで適当に大学構内にいる学生に声をかけて自分の部屋まで台車で荷物を運ぶのを手伝わせた。


「ふぅ、ありがとう君達、もう帰って良いよ」


 日野は学生に礼を言い、帰らせた後、荷物のフタを開けた。するとそこには変な格好をした少女が目を閉じて眠っていた。


「なんだこの娘は、一体何故僕の元へ届けられたんだ……んっ? よく見るとこれは人形? ふんっ、よく出来ているな、まるで人間みたいだ」


 日野はこの人形の作者に嫉妬してしまった。なぜなら作風や作っている物のジャンルがちがえど芸術家としての実力は遥かにこの人形の作者の方が上だと見極めたからだ。


「クソっ、忌々しい! 誰だ僕にこんなのを届けた輩は、不愉快だ!」


 日野は人形を荷物の箱に戻すと自らの作品作りに取り掛かった。日野の作品は女性の彫刻であり、今制作している物の他に、完成品が何体かあり日野の周りを囲んでいた――。


「んっ……着いたのか?」


 突然、目に光を感じて私は目覚めた。そして天井をみて家とは違う場所へ来た事を確信した。


 うまく行った。そう思った私は思わずニヤリと笑みをこぼした。何故なら私は箱の中に入り荷物としてい運ばれる事を望んだ。そして運ばれた先は繭がいる大学だ。ここまでくれば後は簡単だ。


 そう、全ては私の計算した通りに事が運んでいる。私は静かに箱から音を立てずに出ると、中から箱の底に隠していたエアガンを取り出した。そしてエアガンの先に大我が隠していたナイフをテープで取り付けた。するとテープを千切る音が出てしまい。それに気がついた男が声を上げた。


「――誰かいるのか!?」


 私はしまったと思い、直ぐに床に仰向けに倒れて人形のフリをした。すると声を上げた男が近づいて来た。


 ――居た、日野とかいう男だ。前に繭と大学に来た時に出会った男だ。動ける事がバレ無いようにじっとしておこう。


「おや? 人形が箱から出てる、全く生徒のイタズラか、しかもこんな物騒な物を人形にもたせて、非常に悪趣味だ、おい、誰か居るのだろう、隠れてないで出てきたまえ!」


 日野はそう叫んだが、誰も反応しなかった。当然だ、生徒のイタズラではないからだ。私自身がやったことなのだから。


 日野は私を乱暴に抱き上げるとまた箱に戻した。そして面倒な私が持っていたエアガンを取り上げてた。


「これは危ないから僕が預かっておこう、そうすればいつかこのイタズラを仕掛けた生徒が取りに来る筈だ」


 日野はそういうと、エアガンを自分が作業する場所から少し離した場所へと立てかけた。そうしてまた自分の作品を作る作業へと写った。


 ――ちっ、面倒な事をしやがって。


 私は小さく下打ちをするとまた箱を抜け出し、今度は音をたてないようにゆっくりと四つん這いで床を移動し日野が置いたエアガンへと手を伸ばした。


「――おい動くんじゃねぇ、ゆっくりとこっちを向いて私の質問に答えろ」

「んっ、なんだと? 君達、イタズラは大概に……うわああああっ!!」


 日野を後ろからエアガンで脅してやると、日野はびっくりして腰を抜かしその際に自分の作品にぶつかって作品が次々と床に落ちて壊れた。私はその光景が可笑しくて笑った。


「――ぷっ、あははははっ!」

「なっ、き、君は人形なのに生きているのか!?」

「そうだよ、しかも合うのは二回目だな日野先生」

「二回目? あっ!? 君は真見君の友達だった女の子!」

「そうだよ、あの時はうまく人間になりきれてたのにな……」


 日野は私と会話をしながらみるみる青ざめた。その様子が最高に面白い。おっといけない。これが目的じゃなかったんだ。


「日野先生、安心してくれ、私は繭にようがあって来たんだ、だからあんたを傷つけない……けれど協力してくれないついイラッとしてこいつであんたを傷つけるかもしれねぇ」


 そう言ってわざと銃口を日野に向けて引き金に指をかけた。こうするとで更に日野を脅せる……そう思ったが日野は私の脅しに屈しなかった。


「ふざけるな、私はそんなおもちゃの銃なんか怖くない! それに大事な学生を危険に合わせる訳には行かない!」

「ふーん、それが答えか、完全に私をナメているな……あったまにきた」


 私は苛ついてつい、エアガンの安全装置をはずし、連射で日野の体にビービー弾を発射した。


「痛い痛い痛いっ! 止めてくれ、協力する、協力するからぁ! うわあああっ!!」


 日野はのたうち回って私に協力する事を約束してくれた。


「よし、じゃあ日野先生、早速繭をここへ呼んでくれ……あんたならできるよな?」

「わっ、分かった、(くそっこの凶悪人形め)」

「おい聞こえてるぞ……次に私をそう読んだら容赦しねぇからな」


 日野は怯えながら内線でどこかに電話をかけた。すると暫くして繭をここへ呼ぶ放送が大学全体に流れ始めた。


 「くくくっ、良いぞ、全てが順調だ……覚悟しろよ繭、全てはお前が私の大我を誑かしたのがいけないんだからな」


 私は嫉妬と憎しみで心を滾らせながら恋敵の繭がこの場所へやってくるのを待った――。


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