3-12 正義?
この話には外道な部分があります。
不快に思われる方もおられると思います。
主人公の思考が判る重要な部分なので、悩みながらも書きました。
ご注意ください。
ラゴを降り、声のする方に近づいてみる。
木の陰からそっと覗いてみると、2匹のモンスターと戦っている10人の人達がいた。
モンスターに『鑑定』を使ってみる。
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名前:ビッグベアー
レベル:5
能力:伸縮爪
魔法:強化
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うぉう!初めてモンスターで魔法を使うヤツ見た!
しかもレベル5かよ!こりゃ強いわ!!
覗いていると、美由紀さんが近くにやってきた。
ワルツを抱いてるとはいえ、危ないと思うんだけどなぁ。
ソイツ、いざって時は役に立たないしさ。
「あれはビッグベアー?!大変です、襲われています!早く助けないと!」
「いやいや、アレ強いでしょ?無理無理。」
「何を言ってるのです?!貴方は強いでしょ!あれくらい倒せるはずです!」
まぁ、倒せるかもしれないけどさぁ。危ないじゃん。
人の為に戦えって?イヤだよ。
助けながら戦う?無理無理。した事無いし、デメリットだらけだわ。
よくあるパターンで行くと、チートで助けて水晶をお礼で貰うって感じ?
そんなのは勇者に任せましょうよ。安全策で行こうぜ。
まずこの場を離れ、結果を待つ。
生きて出てくれば交渉するし、全滅ならビッグベアーが居なくなってから取りに行く。
これが一番身の危険が無い。外道な策だけどね。
そう考えて美由紀さんに話すと
「本当に外道ですね!困っている人を助けようという正義感は無いのですか!」
と怒られた。ワナワナと震えている所を見るに、本気で怒ってるようだ。
「正義感ですか?正義ってなんですか?」
「そんな子供でも知っているような事を?!」
「いえ、大事な話ですよ?」
「困っている人を助ける、悪事を許さない、こういう事が正義です!」
「それは貴方の「正義」ですね。
正義とは?
自分の中にある「価値観」を肯定してくれるのが正義、否定するのが悪。
だから誰も同じ正義感を持つ事は出来ないし、人の正義感を否定する。
国の法律や罰則に従うのは、自分の中でそれは価値がある物としているから、もしくは従わないと損をするから。
価値とは何か?
それは自分の利益。自分の生死さえも利益の一つ。
誰もが損得勘定をしているんです。
自分の損になる事は絶対にしないんです。自殺しないのは自分の命に価値があると知ってるからです。」
「損得ではありません!例えば神父さんなどは無償で施されてるではないですか!」
「きっと誰も寄付をしなければ施されないでしょう。
元を言えば、神父は、「神父が信じている宗教」に価値があるのです。
その宗教が自分の命の価値よりも高いと思ってるのなら、死ぬ事すら怖くないでしょう。」
「そんな事は、そんな事はありません!」
「俺の場合、価値の高い物は〔自分の命と体・勇者の剣(笑)・お金〕ですかね。
次に〔友人・ワルツ・ラゴ〕等です。美由紀さんは友人枠ですかね。
逆に価値の低い物は〔他人〕。秘密の一部を明かすなら〔この世界〕もです。」
秘密の一部を明かした事で、美由紀さんは黙り込んだ。
そりゃ生きている世界に価値が無いと言われれば驚くだろう。
それにそれを聞いた事で、俺の正体に気づいたのではないだろうか?
さて、俺の考えも喋った事だし、少しは譲歩しましょうか。
デメリットが多いなら、メリットを増やせば良い。
メリット1、人間の死体を漁りたくない。というか見たくない。
メリット2、よくあるパターンをすれば良い。
そしてメリット3。これは美由紀さん次第だ。
「判りましたよ、では美由紀さん交渉しましょうか。」
次話も重たい話になります。
それ以降は、また「主人公が不幸な話」に戻ります。
次話は明日の20時に投稿予定です。




