出会い?
馬車は幌がしてあって中が見えない。
こういうのって幌馬車って言うの?荷馬車?ま、馬車でいいや。
話があると連れてこられたのに、何故か一言「中に入ってくれたまえ」と言われただけ。
なんだろう、怖い…。
だが、他の護衛の人達も戻ってきてるので逃げる事も不可能だろう。
全力で走っても簡単に捕まると思う。
覚悟を決めて中に入る。
馬車の中は意外と暗い。商品が傷まないように日光を遮断してるのかな?
そう思ってると、この世界で始めて女性の声が聞こえた。
「この世界を照らしたまえ、『明かり』!」
おぉ、これが『明かり』の魔法か!まぶしいと言うほどではない。蛍光灯の明かりって感じ。
『鑑定』を使って使えるようにならなければ!と思ったら、すでに文字が白色になってた。
見ればOKなようだね。
おっと、魔法を使った女性を無視してたぜ!初女性で緊張してるのかな?
「この度は助けてもらい、ありがとうございました。私は第2王女の松平未明です。」
黒髪ストレートでスレンダーな10代っぽい女性は、王族でした…。
またテンプレかよ!
「先ほどは安田が試す真似をして申し訳ございませんでした。」
「試した?ですか?」
「はい。『鑑定』を使った後に名前を聞き、偽名を言うか調べたのです。」
「あぁ、そういう事ですか。問題無いです。」
そんな使い方もあるのか。勉強になるね。俺も今度から使おう。
「なぜ私がここにいるのか、疑問に思われると思います。
なので、お詫びも兼ねて、私達の現状をお話致します。」
いやいや、知りたくないですけどね。
って勝手に喋りだしたよ、王女さん!
「ご存知の通り、我が国は魔族と戦争をしています。」
魔族!日本設定はどこいった!
「最初は我が国が優勢でしたが、魔族はモンスターを使役する技を編み出し立場が逆転しました。」
使役する技?よくある“テイム”ってやつかな?
「今ではかなり不利な状態になっています。」
モンスターを使い捨てで戦えば、魔族は減らずに国の人間ばかり減るよな。
「その時、国の神官がお告げを賜ったのです。」
ん?お告げ?神官っていうくらいだから神からのだよね?神って、もしかしてゲー作?
「それは「橡の町に勇者が現れる。」というものでした。」
ゲー作よ、それは俺の事じゃないだろうな?まさか自分が押し付けた仕事の邪魔するはずないよね…?
「父は戦場に出て居る兄達に代わって、私に迎えに行くようにと命令されました。」
男は戦場。ま、王子が居るなら士気も上がるもんな。
「しかしこの事は秘密裏にしなければなりませんので、このように商人に扮しています。」
敵にバレたら大問題だもんね。
「囮として普段使っている馬車が明日出立する予定だったのですが、まさかこちらが襲われるとは…。」
商人の馬車だからじゃね?
「尋問をした結果、どうやら情報が漏れていたようなのです。」
あっ、失礼しました。商人関係無かったですね。ではアレは盗賊のフリした暗殺軍団ですか。
「そこで相田様にお願いです。護衛の何人かが怪我をしてしまいました。
これでは橡に向かうのは無理でしょう。一旦戻る事になりました。
首都までの間、護衛を手伝っていただけないでしょうか?」
一気に喋ったなぁ…。しかしこんな機密情報をバラしていいのか?
う~ん、どうしたものか。
首都には因子もあるし行く。一緒に行くのがテンプレだろう。
1.一緒に行く
メリット:首都に入りやすいかも。王族に恩が売れる。 デメリット:また襲われるかも。
2.断り、別々で行く
メリット:自由。襲われる可能性は低い。 デメリット:不敬で首都に入れなくなるかも。
こう考えると、1の方がマシか?
もし襲われた場合、安田兄さん達は強いだろうし、最悪の時は『隠蔽』で逃げれば良い。
王族に恩を売るのは良いね。移動手段を用意してもらう事も可能かも。
悩んだが、結局引き受ける事にした。
テンプレにハマってる気がする…。
難産でした…。
次話は明日の20時に投稿予定です。




