プロローグ
「勇者よ、魔王退治に任ずる!」
「断るけど?」
俺の言葉に、謁見の間に静寂が訪れた。
・・・
話は2ヶ月前にさかのぼる。
仕事を終え帰宅後すぐにメシ、風呂に入り寝たはずの俺は、真っ白な空間にいた。
移動は出来るが、2m四方の見えない壁に囲まれている。
これは夢だなと考えてると、突如子供の声がした。
「君には仕事をしてもらいま~す。」
あっ、ラノベとかで有名な召喚だな。
・・・
「日本人、相田駿、20歳、男、彼女無し、ゲーム・ラノベ好き。うんうん、指定通りだね。」
個人データが丸バレだ…。保護法の適用を!
「貴方は神様ですか?」
「えっ、違うよ?」
「では異世界の召喚者?」
「さすがラノベ好き!でも違うよ~。」
違うらしい。
だが、ラノベ好きとしてはテンションが上がっていく。
他に何か設定あったかなと考えてると、話が進んでいく。
「君にチート能力を与えるので、異世界で仕事してきてね。
仕事は、その世界に害のある因子の撤去。リストを渡すから。
渡す能力は、カンストの体力・魔力、全ての魔法、攻撃力MAXの剣、沢山のお金。こんな所かな。
頑張って全ての因子を削除してきてね~。
クリアしたら、その能力と所持品・所持金全て持ったまま帰してあげる。それじゃあ…」
ヤバイ!このまま送られそうだ!
チート能力が貰えると聞いてテンション上がったが、情報が少なすぎる!
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「えっ、何?足りない?」
「そうではなくて、詳しい説明を聞きたいと思いまして…。」
「聞かない方が良いと思うけどなぁ。」
「いえ、お願いします。」
・・・
「チートの能力をくれるという事は、やはり神様なのでは?」
「違うって!僕はゲームをプレイしてるだけ!」
「ゲーム?ですか?」
「君のいた世界は、僕が“宇宙を作ろう!”で作った世界。仮にA世界としようか。
で、行ってもらう所も“宇宙を作ろう!”で作った世界。これをB世界としよう。」
「えっ、なんですかそれ?」
「君の世界観で言えば、パソコンゲームだね。」
なんか最初からヤバイ事を聞いた気がする…。
自分の居た世界がゲーム?!まてまて、落ち着いて話を聞こう。
「で、A世界ばかりイジッてたら、B世界に因子が増えすぎちゃった。」
「因子??? …その因子ってのに、自分で対処しないんですか?」
「えっ、面倒じゃん。時間かかるし。潰してやり直すのも面倒だし。」
「だから自分にさせる、と。」
「キャラデータを移行させるのはOKだからね。
データ改ざんは問題だけど、オフラインだから。本当の意味でチートだね!(笑)」
キャラデータにオフラインときたよ。
完全にゲームだな。
テンションだだ下がりだよ…。
「世界を作ったのなら、やはり神様になるのでは?」
「君もしつこいね~。ただゲームをプレイしてるだけだから。」
「世界を作るゲームですか?」
「そうだよ。君の世界にもあるでしょ?
A○車とかシム○ティとか。それのもっと細かいゲームだと思ってくれればいいよ。」
なんで俺の世界のゲームに詳しいんだろう?
「なんで自分なんですか?」
「条件入れたら、最初に出たから?」
選ばれたのではなく、あいうえお順らしい…。
相田の苗字が恨めしい。渡辺とかだったなら選ばれなかっただろうか。
テンションを下げてる場合じゃないな、重要点を聞いておかないとダメだ。
「では、ゲームだとして、クリア条件をお願いします。それと能力が戦闘特化な気がしますが…。」
「クリア条件は、1つ撤去に成功すると1つリストから消えるから、全て消えればクリア。
能力が戦闘特化なのは、B世界はモンスターがいる設定にしたから。」
「言葉や文字はどうでしょう?」
「A世界は拘って作ったから色々あるけど、B世界は僕の世界“日本”をベースに作ったから日本と同じ。
通貨も同じだね。だから、日本人から選んだんだよ。」
納得…なのか?
「君の住んでる“日本”のゲームでも、世界は外国でも日本語喋るでしょ?」
そりゃ日本人が作って日本人がプレイするんだから当たり前だろ。
あっ、でもその世界で考えれば変とも言える…か…な?
「そもそも因子ってなんですか?」
「ゲーム内で起きるマイナスイベントの起きる要因って感じ。
因子は色々な物に取り付くから、物だったりモンスターだったり。
放置してると育っていって、A~EまであってAになるとマイナスイベント発生。
マイナスイベントは、自然災害とか疫病とか。今Bが3個あるかな?
大体3ヶ月くらいでランクが上がるはず。Eの発生頻度は6ヶ月に1回くらい。」
「自分の居た世界にも因子ってあるんですか?」
「あるよ~。何度かAになったかなぁ?」
「えっっっ!!…それはいつ頃ですか?」
「え~と・・・そうそう、君たちが世界大戦って呼んでる戦争も因子のせいだね。」
・・・ゾッとした。
そんなさらっと話す内容ではないだろ。
「何で阻止してくれなかったんですか!!」
「え~、忘れてたんだよ。気づいた時には遅かったって感じ?」
「忘れ…て…た??何で救ってくれないんですか!!」
「ゲームだもん。そんなもんでしょ?
失敗したりゲームオーバーになる度に、ゲーム内のキャラに許してくれとか思わないでしょ?」
「生きてるんですよ?!」
「ん~、僕から見れば生きてるように動くゲーム内のキャラ。
例えば~、レミ○グスで何匹か死んでもクリアすれば、死んだ何匹かの事なんか気にしないでしょ?」
だめだ、話にならない…。
「…因子の数は?」
「現在100。100個を超えるとメールが来るんだ。」
どんだけ放置してたんだよ!
「かなりヤバくないですか?!」
「そうだよ?だから君を送るの。」
もしその因子が凶悪なモンスターだった場合、勝てなければ死亡。
頑張って因子を撤去してても、Bから壊さないとAが出来て災害が起きてしまう。
災害の起きた場所に居れば死亡。
凄く上手くやらないと死亡ルートにすぐ乗ってしまう!
「…もう説明するの面倒だから、説明書読んで。」
あっ、投げられた。
「もうすぐAになりそうなBの近くに置くから、さっさと撤去してきて。」
「ちょ、まっ、、、」
次の瞬間、俺は森の中に居た。
1月4日に改変しました。
内容は変わっていませんが、少し詳しくしました。