薄暗い森の女精-試書
人々の住む場所からも、
魔族の住む場所からも遠い森の中で、
濃い紫色の大きな切り株の上で横になりながら瞼を閉じて寝息をたてる一人というのか一匹というのか判らない女精が居た。
寝息をたてている女精は辺りの木々よりも明るい緑色の髪をしている、肌は白く、唇は淡く撫子色をしていて。
風が強く吹き小さい葉が揺れ落ちる度に女精はもぞもぞと動いて時よりうっすらと髪の色よりも透き通った緑色の眼を眼蓋の隙間から覗かせる。
うごいてねて動いて寝てを繰り返しながらしばらくすると
身体に見会わない低く大きい音が女精のお腹からグググと鳴った。
けれど女精が起きることはなく、結局女精が起きたのは
お腹から鳴るその音が6度に渡って静かな森の中に響いた後だった。
お腹の音に反応して起きたのかはわからない。
ただ女精はゆっくりと眼蓋を開いて何事もなかったかのように大きくあくびをした後、近くの木になっている果物に向かって小さな羽根を広げて静かに飛んで行ったのだった。
余談として、果物に向かう女精の眼はとてもキラキラしていた。
滴り落ちるよだれに気付いていないくらいに。