十八話
遅くなって大変申し訳ございませんでした。
さて、どうやって逃げるかは決まったし。
あとはタイミングだな。
え?何をやるか分からないから説明しろ?
しょうがないなぁ、一回しか説明しないよ?
今、俺様が木をゆすっているけど、もう少ししたら私がいる所から一番遠い木をゆするんだよね。
その時にこの防犯ブザーを俺様の近くに投げて全員の注意がそっちに向いている間に急いで逃げる。
うん、何も言わないで。自分でも分かってる。
こんなのスピード勝負の強行突破だって。
いや仕方ないじゃん、これしか方法が無いんだから。
まぁ、これしか思いつけなかった、っていうのもるけど。
おっと、そろそろだね。
じゃぁ、始めるとしますか。
捕まらないように祈っておいてね。
「こんだけやって居ないってことは聞き間違いだったんじゃないか」
「小さな音だったし、俺の聞き間違いだったのかな?」
嵐山と五来が小声で話していると、参木が猫とたわむれながらそれを否定した。
「たぶん聞き間違いじゃないと思うよ。僕たちが来る前にここに人が居たと思う」
「何でそう思うんだ?」
そう質問する嵐山の方を見ず、参木はやはり猫とたわむれながら答えた。
「だってこの猫たち、俺たちが来る前から此処にいたし。この三毛猫の子は人懐っこいから人が居るとすぐに寄ってくるんだよね。それにここにいる猫三匹とも人の手で撫でた跡があるし。たぶん少し前まで人がいたんだよ。じゃなきゃ、跡なんて残ってないだろうし」
「貴方はそれだけ頭の回転が速いんですからそれを生徒会の仕事に少しは役立ててください」
「そうしてくれれば俺達の苦労がかなり減るんだけと…」
…今の苦労人二人が纏っている雰囲気を例えるなら、上司の気まぐれにつき合わされた挙句大量の仕事をこなさなければならない、疲れ切った人生を歩んでいる30代後半の中間管理職のオッサンである。
「どうしたの?二人ともそんな人生に疲れ切ったような顔しちゃって」
「「貴方のせいだ/ですよ!!」」
二人の周りに漂っているいささか暗い雰囲気のことを参木が指摘すると二人は間髪入れず反論した。
このやり取りを見るだけでもいかに二人が苦労しているかが分かってしまう。
「ったく、あの三人のやり取りは変わらないな」
そんな三人のやり取りを見ながら嵐山は笑いを堪えながら言った。
「しかし、あの二人の胃は大丈夫でしょうか?」
嵐山は隣で二人の胃の心配をする時雨のつぶやきを聞いて堪え切れなくなったのか、腹を抱えて笑いだした。
何が嵐山のつぼに入ったのか分からない時雨、きょとんとして嵐山のことを見ている。
そんな五人を見ていた風間はぼそりと小さく呟いた。
「カオスだね」
まさにその通りである。
一ヶ月以内にもう一回投稿したいです…