夢じゃなければ。
『ねえカズサ、森君がカズサのこと、好きなタイプって言ってたよ』
クラスメイトの麻理にそう言われたのは、昨日の帰り道でだった。
『よかったじゃん、告白しちゃえば?』
さんざんからかわれて、さんざん顔を赤くした。こうして、今思い出すだけでも、はずかしくなる。っていうか、なに一人で、恥ずかしがったりしているんだろう。本人から言われたわけでもないのに。
実は、まさに今、隣にいたりするのだ。
クラスメイトの森君。四月の自己紹介の時から、少し、いや、少しどころでなく、気になっている。
駅からの通学路は、すこし遅いこの時間でも、生徒がちらほらいる。そこで森君を見かけることは、今までにも何回かあった。それでも。
・・・向こうから話しかけてきてくれたのは、初めてだったけど。
「あのさ、春山」
森君がそう切り出したのは、変なところで会話が途切れて、ちょっとした時だった。
「変に思わないでほしいんだけど、・・・・あの噂、聞いた?」
「噂?」
聞き返すと、森君はまるで、何か失敗したとでも言いたそうな顔になった。
「噂って何?」
「いや、だから・・・・・・その、さ」
なんだか歯切れが悪い。森君をのぞきこむように頭を傾けたら、森君はしぶしぶといったように言う。
「・・・俺が、春山のこと、好きなタイプだっていう、噂」
「・・・・・・・・・」
反応に困って、森君の顔を見られなくなった。絶対、顔、赤くなってる自信がある。
「あのさ、それ嘘だから」
森君は言葉を続けた。
「好きなタイプじゃなくて、好きだから」
・・・・・・それって。
それって?