File:1 -------作ってみたけど探偵部
こんにちは。
またもや更新しました。毎回稚拙な文章で申し訳ありません。
「てな訳で、部活申請しておいた」
倉崎龍院が、満面の笑みで他の三人の部員に伝えた。
昨日降っていた大雨が嘘のように引き、今日は太陽が朝から照っている。それがアスファルトに熱を帯びさせ、蒸したジリジリとした暑さを四人に照りつける。
「あれぇー、本当に作っちゃったのー?」
間延びした声。ふわふわと、締りの無い茶色と黒の中間みたいな髪を揺らしながら、吉良灯火が、きょとんとした顔で龍院に尋ねた。
生暖かい風が龍院の肌に当たって、立っているだけなのにも関わらず気分が悪くなる。
「あぁ。とりあえず、そこの喫茶店に入るか。闇城もとうらもいいよな?」
龍院がポカーンと状況に付いていけていない二人を誘う。
二人はとりあえず返事だけでもといった感じで、こくこくと頷いた。
――カランとベルの音を鳴らして、喫茶『シュルティアー』に入った。
流石、飲食店といっただけはあって中は少し寒すぎるくらいに冷えていた。だが、外の蒸し暑さに比べれば寧ろ快適とも言えた。
涼しい店内の隅のほうに席を取ると、直ぐに店員がメニューと水を持ってきた。
「おー、美味しそー。私このバナナパフェねぇー」
灯火がメニューを食い入るように見つめ、バナナパフェを指差した。
それに釣られるようにして、どれどれと他のメンバーもメニューを物色する。
「お、これ美味そうだな」
そういって龍院が指差したのは、砂糖菓子の上にシロップとハチミツがついている、いかにも甘ったるそうなスイーツだった。
それを見て、闇城が引きまくる。
「……倉崎、本当にそれを食べたいと思っているのかい?」
闇城の黒い髪が眼鏡にかかって流れているのを邪魔臭そうに、眼鏡の中に入れた。
「? 当たり前だろ」
龍院が当然とでも言うように、軽く首を傾げた。
「そうか、君の常識と僕の考える常識には大きな隔たりがあるようだね」
「闇城君、恐らく貴方の常識が正しいと思うわよ。ぱっと見た感じ甘さは、私が食べたことのある料理の中でも最高峰に位置するわ」
とうらが闇城に同意した。恐ろしく整った顔立ちをしているとうらは、店に入ってきたときから、客の注目を浴びていたが、とうらが発した声で周囲にどよめきが走った。
透き通るような艶のある声。正に、この世のものとは思えなかった。
しかし、とうらは周りの客の反応に不機嫌そうに顔をしかめる。
「ムカつく人達ですね。いっその事、全部冷やしてあげちゃいましょうか」
「やめなってー、とうらんが冷やしたら皆氷になっちゃうよぉー」
灯火がそういうと、とうらは不機嫌そうにふんっと鼻を鳴らした。
「まぁ、いいや。んじゃ、注文するぞ」
すいませーんと、龍院が店員に声をかけると直ぐに店員がやってきた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
最早、決まり文句とでも言うべき台詞。顔には作られた笑顔がまるで仮面のように、べったりと張り付いていた。
「あ、俺この『超極甘! 脳もとろける魅惑の砂糖菓子』で」
「僕は、アイスティーとミルフィーユを」
「バナナパフェ下さーい」
「私はアイスコーヒーと、この手作りのクッキーを」
「畏まりました。ご注文を繰り返します。そちらのお客様が――――」
店員が注文を復唱し始めた。しかし、それを確認せずに龍院はどうやって話そうかと頭の中で考えていた。そもそも、龍院がここに皆を集めたのは部活は作ったという知らせを届けるためだった。だから、結論的に言えばもう既に用は終わったのである。
だが、龍院はそこで解散せずにこうして喫茶店に入っている。
それは、休みたいというのもあったしこれからの部の活動についてもついでに話し合っておこうというのもあった。
龍院達特急能力者の四人から構成される、戦闘力に至っては一級品の探偵の真似事の。
「で、作ったはいいけど……」
「えぇ。思いつきで作ってしまいましたが、一体どうするつもりですか?」
「……それを皆に考えて欲しいんだよな」
「流石行き当たりばったりに定評のある龍ちゃんー」
「おう、褒めてくれて有難うな!」
「……これが、ネットで言われる『頭がハッピーセット』というやつか」
闇城がボソリと呟いた。
「ん? 闇城、何か言ったか?」
「いや。倉崎はハッピーだな」
「?」
「その言葉の意味は良く分からないですが、闇城が決して倉崎を褒めていないということだけは伝わりました」
とうらが残念なもの見るような目つきで、龍院を見た。しかし、当然龍院がそんな思惑に気づけるはずも無く、仕切りなおすようにもう一度議題を出した。
「おほん」
わざとらしく咳払いをする。
しかし、周りからは冷たい反応しか無く、龍院は恥ずかしそうに顔を俯けるとぶっきらぼうに、
「じゃぁ、何か具体的な活動内容を言ってみてくれ」
と言った。
闇城、とうら、灯火の三人は少し思案顔になったがやがて顔を上げると、
「「「普通に探偵すればいいんじゃ(のでは)?」」」