第22話 豚の照り焼きと再び野菜苗と地域表現
「料理協議会の料理ってさあ、審査員がバクバク食べてる方が有利だよね。
もちろん、見た目とか全体のバランスとかあるけど」と胡桃
「まあそうでしょ。美味しいのは絶対有利だし」と杏奈
「まだ未定だけど主食は米になりそうだから、ご飯が進む料理を作ろう」
と胡桃が言う
「いや誰だってそう考えるでしょ」と杏奈
「う~んなんていうか繊細な味じゃなくて、濃いめの味付けの料理。
そういうのを試してみたい」と胡桃
「わかった。でなにか具体的な料理はあるの?」と杏奈
「なんにも。だから聞いたの」
杏奈はため息をついた後考え出した。
「豚の照り焼きでも作ってみる?」と杏奈
「いいねえ。流石杏奈」
「これは仮の料理だからね」と杏奈
「仮の料理?」と胡桃が聞く
「これ自体は簡単だし、シンプル」と杏奈が言う
「つまりここからアレンジが必要ってことか」
そしてスーパーに買い出しに。豚肉をどうするかで迷った。
厚い方がいいのか。薄い方がいいのか。
結局薄い生姜焼き用のロース肉を購入。
さっそく調理実習室へ。
豚肉は筋に切れ目をいれたりして下処理。
フライパンに油をいれ、豚肉を焼く。
酒、みりん、砂糖、しょうゆでタレを作りよく絡めたら完成。
「うん。美味しいし濃いからご飯が進みそうだね」と胡桃
「だね。照り焼きは間違いないね」と納得の杏奈
「う~ん。これを出したとすると、例えばエビのみそマヨチーズとだと
こっちが主張強すぎるね」と珍しく分析する胡桃
「セットメニューだからバランスがね」と杏奈
「マヨネーズを加えて味を少しマイルドにしてみる?」と胡桃
「それだとご飯バクバクとは違くない」と杏奈
「このままだと美味しいけど、他のとの兼ね合やシンプルすぎるのもマイナスか」
「発想はいいけど、わたしも難しいと思う」と杏奈
1品1品が美味しくても、バランスが悪いとセットとしては評価されないと思った。
いくつかの料理を全体として考える。
そういうところも大事だと思った二人であった。
「ねえ杏奈。そういえば野菜育てる時期じゃない?」
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「そういえば杏奈さあ。今年って野菜作らないの?」
「あっ…」と口を開ける杏奈
「まさか」ジロリとみる胡桃
「これから。これから作ろうと思ってたの」と杏奈
「まあいいけど、どうする」
「わたしはもう決めたから」と杏奈
「早い。で何にするの?」驚く胡桃
「絹さや。種から育てる」
「苗じゃないんだ」と胡桃
「苗は売ってないのよね」と杏奈が言う
「でも種からだと時間かかるんじゃ」
「たぶんギリギリ間に合う」と杏奈
「そうなんだ」と胡桃
「胡桃はどうするの」
「う~ん。茄子か。とうがらしか。ししとうか」と胡桃
「1つだけだからね」
「ケチ」と不満な胡桃
「だから場所の問題なんだって」と杏奈
「う~ん迷うなあ」
「どれもナス科か。先生に断りいれないとダメね」と杏奈が言う
「どういうこと」と胡桃が聞く
「連作障害。ナス科を作ったら、3~4年別の品種にしないと
生育不良を起こすって訳。去年作ったペピーノはナス科。
そして茄子もとうがらしも、ししとうもナス科」と解説する杏奈
「全部だめなのかい」がっくりする胡桃
「だから土を変えていいか聞いておこうと。去年土はそこらの使っていいって
言ってたから大丈夫だと思うけどね。で、何にするの?」と杏奈
「う~ん。茄子にしようかな。
考えたらとうがらし30本育っても食べきれない」と胡桃
「賢明な判断ね。ししとうはハズレもあるから」と意味深な杏奈
「ハズレって?」
「上手く育たない。厳密に言うとストレスが溜まると
激辛になっちゃう。食べるロシアンルーレットって言われてる」と杏奈
「ししとうにしようかな」激辛に反応する胡桃
「あんたねえ。まあとりあえずホームセンターに行こう」
ホームセンターに着くと杏奈は絹さやの種を。
胡桃はししとうに後ろ髪惹かれながらも加茂茄子を購入。
土替えの許可も出て、種まきと苗を植える作業をしたのであった。
今年も順調に育つといいな。
「ねえ杏奈。いくつかの候補を改良してみない?」
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「そういえばさあ、協議会の料理ってそのまま出せないよね」と胡桃
「ああアレンジしてってやつだね」と杏奈
「今のところの候補をさあアレンジしてみない」と胡桃
「そうだね。いろいろ考えてみよう」と杏奈
「今のところ候補と呼べるのは…」
「エビのみそマヨチーズ焼き、みそポテト、貝焼き味噌、けんちん汁、
もみじ型マドレーヌ、こんなところじゃないかな」思い出しながら杏奈
「主食はなしか。あとエビとマドレーヌって郷土料理か名物料理では
ないんじゃないかなあ」と胡桃
「確か以前の大会では1品あればって感じだったよ。
地域を表現した料理1品についてとか。そういえばあれ地元のだった。
つまりわたし達は東京のになるんだ」と杏奈
「東京って逆に難しくない。東京だと江戸前寿司とかコロッケとか
親子丼って郷土料理って感じしないもん。せいぜいもんじゃ焼き、
ちゃんこじゃ今回の趣旨と違うし」と胡桃
「う~ん。解釈拡大して関東のじゃないとダメか。
貝焼き味噌は青森だから、地元のには使えないね。
あくまで料理の1品と考えるのかな」と杏奈
「難しいね」と胡桃
「あっでも地域を表現なら地元の郷土料理じゃなくてもいいのか」と杏奈
「どういうこと?」
「つまりけんちん汁の大根を練馬大根にして豚肉をトウキョウXにして、
東京を表現しましたみたいな」と杏奈
「それはいい案。でもトウキョウXは高いからなあ」胡桃が残念がる
「ある。小松菜は江戸川区発祥だし、足立区の千住葱ってのもある」と杏奈
「じゃあけんちん汁はかなり有力だね。これらの野菜で東京を表現しましたと」
すっきりしたところで、アレンジの話に。
「エビのみそマヨチーズ焼きの改良するところは?」と杏奈
「う~んない!」きっぱり言う胡桃
「まあそうだとよね。完成されてるもんだし。保留」と杏奈
そして「みそポテト」と杏奈
「改良するとこはない」
「保留」と杏奈
「貝焼き味噌」と胡桃
「他の具を入れる」と杏奈
「ぐらいだよね」
「しょうゆを加える。出汁を加える。チーズを足す」と杏奈
「チーズはいいかも。味噌とチーズは相性良さそうだし」
「もみじ型マドレーヌ」と杏奈が言う
「ホイップクリームでデコレーション」
「もみじ型にした意味なくなるじゃん」ツッコむ杏奈
「「う~ん」」
「やっぱり難しいね」と胡桃
「あと主食もなにか候補を見つけないと」
まだお題も出てないし、時間はたっぷりあるとはいえ、
現状は難しいと思う二人であった。
「ねえ杏奈。課題が発表されたよ」




