束の間の平穏、明かされる壁達の過去
前回のあらすじ…
謎の青年・シンに連れられやってきたのは、彼の仮の拠点となるツリーハウス。
そこでは、晴人の他にも、彼に肉壁と言われた者達が身を寄せ合って生きていた…
シンの最初の肉壁に任命された女性…勿忘 麟。
小さいながらも22歳の女性…矢車 艾。
高い身長に似合わぬ、少し頼りなさそうな男性…釣鐘 菫。
壁たちの自己紹介を横目に、シンは上で一人、双眼鏡を覗いていた…
晴人「そういえば…皆さんはこんな世界になる前は何をしていたんですか?」
晴人が興味本位で聞く…
艾「私は書店の店員をしていました…元々本が好きで…」
艾は少し照れながら話した。
菫「僕は、中学校の国語の教師を…」
晴人「へぇ、先生だったんですね。」
菫「はい…書道とか小説が好きで、子供たちに教えられたらなぁ…って思ってたんですけど…」
菫は少し悲しい顔をしていた…
艾「そういうハルは?何をしていたの?」
晴人「僕は普通の会社員ですよ、どこにでもいるような普通の。」
晴人はなぜか普通の部分を強調するように言った。
艾「そんな普通を強調しなくても…」
晴人「僕の誇りなんですよ…"普通"は…」
そんな晴人を見て、みんなうんうん…と頷いた…シン以外。
晴人「麟さんは?」
麟「私は心理療法士だったんです。」
晴人&艾&菫「心理療法士っ⁉」
麟「弟がいて…精神を…その…病んじゃって…弟を救いたくて学んでたら…なっちゃってて…」
晴人「すごいですね…弟さんを救いたいがために…そこまで勉強を…」
麟「まぁ…その思いが届くことはなかったですけど…」
麟は何か思い詰めていた…
晴人「あ…すいません…なんか…辛いことを思い出させちゃって…」
麟「いえいえそんな‼私こそごめんなさい…」
晴人「そういえば…シンさんは?」
艾はなぜかムッとした表情になる…
艾「あいつなら、いつも上で何か見てるよ、何考えてるか分かったもんじゃない…」
菫「僕らもあんまり知らないんですよ、シンっていう名前だけしか…」
麟「過去を何も教えてくれないんですよね…感染者の事をダーツの的としか見てないみたいですし…」
晴人「ダーツの的?」
晴人は思いだした…
シンの発言に、ブルや6のシングル、3、ブルズアイという単語があることを…
これらはすべてダーツの用語なのだ。
ブルズアイはダーツの的の中心にある赤い円の部分を指し、ブルはそこに当てること。
6のシングルや3は、6と書かれた部分の一番大きいところ、当てるとゼロワンだと6点減る、カウントアップだと6点増える。
晴人「本当に…感染者を殺すことを…ゲームと思ってんのか…」
晴人の中で、このままシンについていていいのかという疑念が、さっそく浮かび始めた…
続く…
この度は壊れた世界の嘆きの歌を読んでいただきまして誠にありがとうございます。
ゼロワンは毎度の如くBUSTする、作者の妖峰輪廻です。
今回はゾンビアポカリプス世界での束の間の休息回となります‼
少しキャラクターの背景にも触れていますが、シン君には一切触れていません。
シン君は謎のある狂人キャラですからね、でもこういう謎があった方が、素敵だと思いませんか?
一人だけカタカナっていうのもかなり謎ですけどね。
そこは読者様のご想像にお任せします。
それでは、また次のお話でお会いできるのを楽しみにしております。