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いとこと浮気しやがった、わたくしのクズ婚約者。

作者: 藤枝雪

ちょっとこういうやつ書いてみたかったんですよね。

今日も窓辺でため息をつく。

・・・なぜ、わたくしは最低な人と婚約する羽目になってしまったのか?


「ローラ様。」

メイドがドアをノックしてきた。

「こんな時間に、どうしたの。」

「ローラ様。ウィリアル様が中庭でお呼びでございます。」

「ありがとう。すぐ行くわ。」

返事をしたローラは、

(いや、返事しといてなんなんですけど、その方は、最低すぎるので会いたくありません!)

なーんて言えるわけないので行きます。



中庭まで行くと案の定、わたくしの婚約者、ウィリアル様が、わたくしのいとこと腕をくんで立っていた。

そう、わたくしの婚約者は、浮気しているのだ。

しかも、わたくしのいとこと。


「・・・すまないが、婚約を解消させてもらいたい。」

(はあ…。予想はしてましたけどね。ちょっと急すぎやしませんか。)


「申し訳ありませんが、婚約解消には、わたくしの父やウィリアル様のお父上様に許可をとり、国の者たちに知らせなければならないのですが。」


大袈裟なのではないか?そうなのだ。

なんせ、わたくしの婚約者は、次の王になる、王太子なのだから。

婚約解消なんて、突然出来るわけが無い。


「問題無い。もうお前の父親は脅して納得させた。後はあの頑固親父を説得させれば良い。」


(こいっつは何なのだ。わたくしの父上を脅すなんて。好きな者と結ばれるためならなんでもやるのか。つくづくクズ野郎だな。)

そのくせ、顔と頭だけはいいのだから、嫌になってしまう。


「そういうわけだから、ローラ・フランチェル。お前はもう用済みだ。」


(用済みだと?!人を何だと思っているのだ。)


「お、お待ち下さい!キーナ!貴方はそれで良いのですか!」


王太子と浮気したなんて、国民に知れたらよくない噂が流れるだろう。


わたくしが王太子と婚約した時は、王族の次に偉い家の者だし、わたくしの家の評判がよかったから許されたけど。


キーナの家はわたくしの家より二つか三つ下。

しかも、 (キーナはいいやつだが) 家の評判がいい方ではない。

に加えて、浮気ときてる。


・・・とてもいい反応がくるとは思えないのだ。


それを、キーナの優しすぎる心がはたして耐えられるのだろうか。


わたくしの婚約者と腕をくんで去っていくキーナ・フランチェルは、こちらを振り向かずに言った。


「ローラ・フランチェル。嫉妬なさらないで下さいませ。貴方とは良い関係でいたかったけれど、恋敵なのでは話が別。現に、ウィリアル様はわたくしお選びになられた。貴方の負けよ。聞くところによると貴方。ウィリアル様とあまりあっていなかったようじゃない。

それじゃあ、わたくしにウィリアル様をとられても仕方ないんじゃないかしら。」


(は?いや、わたくしは貴方と勝負していないのだけれど。それに、嫉妬なんて誰がすると言うの。わたくしは婚約当初からウィリアル様みたいなクズ野郎、嫌だと思っていたけれど、お家のためならばと頑張っていたのよ。それを向こうからフッてくれるのならこの上無い幸せ。)


というか、あいつは本当にキーナなのか?


キーナはとてもきれいだ。

尖った顎、大きなつり目に、形のいい唇。高い鼻。その横で揺れる、ぐりんぐりん縦ロールの金髪。

ゴージャスな見た目とは反対に、優しすぎる心。


見た目は全然変わっていない。前よりもきれいになったくらいだ。


変わったのは、性格だ。前のキーナは、

『聞くところによると貴方。ウィリアル様とあまりあっていなかったようじゃない。

それじゃあ、わたくしにウィリアル様をとられても仕方ないんじゃないかしら。』

なんて厭味ったらしいことは一切言わない、優しい人だったのに。


恋とは、人をこんなにも変えるのか。


廊下の角を曲がろうとしているウィリアル様が、突っ立っているわたくしを慰めるように一言。


「本当にすまないが、わたしはお前を好きになれないんだ。」

(・・・へえ。最後の最後に気が合いましたね。わたくしもそう思います。)



部屋に戻り、窓辺の椅子に座った。

編み針と毛糸を取り出し、セーターの続きを編み始める。

編み終わったら集めて、散歩の時、子供たちに配るのだ。

この活動は、曾祖母の代からやっているそうで、暇なことが多い女性の仕事だ。

わたくしの家の人気が高いのはこういう活動をやっているからか。


編み針をせっせと動かしながら考える。


さて。どうしたものか。

こうなったら、婚約解消しなければ、キーナともウィリアル様とも、

その親族などとも良い関係は築きなおせない。

でも、ウィーリー王が婚約解消を却下したら婚約解消はできない。

無理にでも婚約解消すれば、王に嫌われてしまう可能性が高い。

だが、何としてでも他の家と良くない関係になるのは避けたい。

父上のお仕事に悪い影響をあたえてしまうからだ。


「あっ、間違えた。」


セーターを間違えたところまでほどく。



徹夜でセーターを編みながら考えた結果。



「ちょっといい?」

「は、はいっ。何でございましょうか。姉上。」

弟をに調べてもらいたいあの事を耳打ちする。

「え、分かりました。」

「絶対誰にも言わないでよ。」

「はい。」

不思議そうな弟を見て見ぬふりで、口止めして送り出した。


きっかり一時間後。


「姉上。今日の十時に、キーナ様と一緒に王を説得しに行くんだそうです。」

「ありがとう。もう戻っていいよ。」

「あっ、はい。」


弟に調べてもらったのは、ウィリアル様がいつ、婚約解消することを王に言いに行くのか。

時間さえ分かればこっちのものだ。

わたくしと、わたくしの家が絶対悪くならないアイデアが出た。

その名も、[乙女の切ない心。相手を思いやる気持ちによる泣き逃げ大作戦]!!


何とわたくしは、演技が得意なんです!

しかも、一度、演劇の舞台に出て、観客全員を号泣させたという伝説の持ち主!

みなさん、『演技とは思えないほど素晴らしく、涙してしまいました。』とおっしゃってた。


演技で泣くなんて簡単。もっともらしく言葉を奏でるなんて、基本のき。

ということで、わたくしの演技力を存分にいかした別れ方を考えてみました。

父上に怒られるかもしれないけど、そこもちゃんと考えてある。


時計を見たわたくしは飛び上がった。

「もう九時じゃない!」



一時間後。



わたくしは、王がいる部屋に行く廊下を歩いている。

近づいてきた。

わたくしの部屋と王の部屋は、けっこう近いのだ。


「何だと?!ローラ・フランチェルと婚約解消!?ふざけるな!」

「ふざけてんのは親父の方だろ!俺は、もうあいつを好きじゃないんだよ!」

「そんな理由で国民が納得すると思うのか!?」

「納得しなくても、権力で抑え込めばいいだろ!」

「そんなことしたら、国民はお前についてこない!」

「別についてこなくていい!そんなの、権力を使えばどうとでもなる!」

「駄目に決まってるだろ!何考えてんだ!この国の平和を乱すつもりなのか!そんなのわしが許さん!これ以上言うなら、お前は国から追放にしたうえ、王の座は次男のウィリアレに継がせる!しかも、そんなことをしたら、ローラ・フランチェルに失礼だろう!」


よし、ここらでいいだろう。

王の部屋の前には見張りが二人、立ってる。


わたくしは目に涙を浮かべて走り出した。


「どいて!」


見張りを蹴散らし、王の部屋のドアを勢いよく開け、へたり込む。

目に手を当てて号泣しながら、


「ウィーリー王!わたくしはいいのです!わたくしはウィリアル様を愛していましたが、ウィリアル様はキーナ・フランチェルと愛し合っている!ならばわたくしに、二人の愛を邪魔する権利はありません!婚約も解消してください!」


ここらへんで、よろりと立ち上がり、走り出す。


「お二人で、どうぞお幸せになってください!」


そのまま、自分の部屋までダッシュ。

バタンっとドアを閉めて、追いかけられてるかもしれないから、

「ひくっ、ひくっ。」

としばらくしゃくりあげる。


十五分くらいしゃくりあげて、編み物を始めた。


はああああああああああああああああああああああああああああああああああ

疲れた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コンコンッ


ドアがノックされた。

「何でしょう?」


ドアを開けると、そこに立っていたのは。

「キーナ!」

「ローラ!ごめんね!」


キーナがいきなり抱きついてきた。

(何!?どういうこと!?)


「どういうことなの、キーナ。」


「あのね、ローラさ、ウィリアルと婚約してから、あんま笑わらなくなったじゃん。わたくし、ずっとウィリアルに仕返ししたいと思ってたんだ。で、『わたくしがウィリアルをメロメロにしてローラとの婚約解消させてから、ぼろきれみたいに捨てよう』って思いついたんだ。ついさっき、王がウィリアルを追放したっていうから、今だっ!ってビンタして捨ててきた。今まで冷たい態度とっててごめんね。」


(そういう理由(わけ)…。キーナのそういうとこ、尊敬するわ。)


「キーナ、すごいね。」

思ったことをそのまま口にすると、キーナがにひっっと笑った。


「ついでに、あいつの部屋入った時、財布パクってきた。」


そう言って、巨大な財布を出してきた。

と同時に、

「父上え!財布がありませえん!」

ウィリアルの涙声が聞こえてきた。


「・・・何やってんの、キーナ。」

「へっ。ウィリアル、ざまあみろ。」


わたくしたちは、声をあげて笑い始めた。


キーナ、ナイス!

おっと、本音が出てしまった。

このあたりでお礼を!

最後までよんでくれてありがとうございます!

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