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異性転生  作者: 貴志
第一章 猫との出逢い
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004 追跡

 その後、カンナ、ユキと合流し、ミコトは全員にクロのことを除いた一部始終を伝えた。

 最初は怒っていたコヨミも冷静になり、ミコトへの怒りは収まった様子だった。


「なるほど。エリザベートの騙し討ちの方法がわかりました」


 カンナは冷静に受け止める。


「まさか、そんな方法だったなんて。それじゃあ僕のせいでキョウコは死んじゃったんだね」


 シノが泣きながら呟く。


「馬鹿言うな。誰のせいでもねえよ。悪いのはエリザベートだ」


 乱暴な印象の強かったコヨミだが、本当は仲間思いで凄く優しかった。


「私許せないな。エリザベートには死んで償わせなきゃ」


 ユキが激しい怒りで意見する。

 そしていつしか全員がリーダーであるカンナを見る。判断を任せているのだ。


「大丈夫です。私も仲間をやられて黙っていられるほど、腑抜けているつもりはありませんよ。キョウコさんの敵を討ちましょう」


 カンナの強い決断に、全員奮起しただろう。物腰柔らかで、実際に優しいカンナの強い敵意を感じ、ミコトは驚いた。

 みんな初めの印象とは良い意味で違う。

 このチームはエリザベートがいう臆病者達ではない。

 必ずエリザベートを倒してみせると強く決心した。

 そんな決意の中でクロのことをみんなに伝えるか迷ったミコトは、クロの意見を聞こうとした。

 しかしそのときになってようやくクロがいないことに気付いたのだ。


「あれ?クロ?」


 思わず漏れた声にコヨミが反応する。


「お前の猫なら、さっき合流したときからいなかったぞ。どこかに置いてきたんじゃないのか?」


 置いてきたつもりはないが、そういえばさっきエリザベートを追いかける直前、待てと叫んでいたことを思い出す。

 あれはてっきり深追いするなということだと思っていたが、違っていたのかもしれない。

 クロ自身はダメージもないだろうし、そもそもかなり強いので心配はいらないとは思うがクロがいないことに不安を感じる。


「とりあえず今はエリザベートを討つのが先だ。ペット探しは後だ」


「そうですね……」


 コヨミの言葉にミコトは歯切れの悪い返事しか返せなかった。


「一体エリザベートはどこに逃げたのか。一応彼女の隠れ家に行ってみましょうか。流石に帰ってきているとは思いませんが」


「そうね。何か手掛かりがあるかもしれないし、何もしないよりかはましね」


 カンナの提案にユキが答える。


「全員気合入れていけよ。相手は殺人鬼だ」


「シノちゃんはどうする?一緒には行かない方がいいと思うんだけど」


 激励を飛ばすコヨミにユキが問いかける。

 一瞬考えたコヨミがミコトを見て言う。


「シノはミコトと留守番だな」


「待って下さい。私も行きます。行かせてください。どうしてもあいつだけは許せないんです」


「でも一度負けてるしな。連れていっても役に立たねえんじゃないか」


 コヨミの正論に何も言い返せない。

 歯がゆくも諦めきれないミコトを見かねて、カンナが提案する。


「わかりました。私がシノちゃんと残ります」


「甘すぎんだろ」


 コヨミが呆れ気味に言う。


「私がいないと負けますか?コヨミ」


「冗談言うな。余裕だぜ」


 カンナはコヨミの扱いに凄く慣れているようだった。


「ではエリザベートのところには、コヨミ、ユキちゃん、ミコトくんの三人で行って下さい。敵は沢山のカケラを持つ強者です。気を抜かず全力で挑んでください。もうこれ以上仲間を失うのは嫌ですからね」


「任せろ」


「わかってるよ」


「わかりました。ありがとうございます」


 三人は確かにカンナの言葉に応えた。

 本当は自分も敵を討ちたいはずなのに、ミコトに後悔が残らないように、想いを収めてくれたカンナの気持ちに応える為。なによりキョウコの為にも強い決心を抱く。


 エリザベートを必ず倒す。




挿絵(By みてみん)







 三人がエリザベートの隠れ家に着いた時には、もう完全に夜になっていた。


 コヨミの手には大きな矛が握られていた。力に自信のあるコヨミに似合う武器だった。

 それと対比するようにユキが持つ武器は細くしなやかな槍だった。

 同じ長物だが、戦闘スタイルの違いはそれぞれが武器を持つ見た目で十分に理解できた。


 ミコトの剣は魔法でできたもので、優位性はこの二人にもあるはずだったが、とても二人に勝てる気がしなかった。

 実際に戦わなくてもわかる。この二人あまりにも強い。


「準備はいいか。突っ込むぜ」


 コヨミは聞くと同時に突っ込む。

 当然返事を返す暇もなく、本当にただ聞いただけだ。

 雄叫びを上げながら扉を蹴破り突入していく姿は、盗賊といってもおかしくなかった。

 ユキはそんな突入に、雄叫びこそ上げないが、綺麗に付いていく。

 一瞬あっけにとられたが、ミコトも付いていく。


「くそっ!居ねえじゃねえか」


「やっぱり戻ってこなかったみたいだね」


 コヨミとユキが気を落とす。

 中はそれほど広くなく、部屋が二つあるだけで、すぐに探すことができた。そもそもほとんど物がなく、エリザベートがいた痕跡すら感じることが難しかった。


「これなんでしょうか?」


 ふとミコトが机に置いてあった紙を見つける。


「地図に沢山の印が付いてるね」


「一つだけ違う印があるな」


「まさか次のターゲットですか?」


「その可能性もあるかもね。もしくはリミットになる人を集めている可能性もあるけど」


「じゃあとりあえずここに行ってみっか。貧民街の端でここからもそんなに遠くはねえしな」


「そうですね。行ってみましょう」


 三人は印の場所に行くことにした。移動中にユキがその場所について教えてくれた。

 今までいたエリザベートの隠れ家のある地域は、貧民街の中でもまだましな方で、住める建物がある場所。

 そして今目指している場所は、かつて誰かが住んでいた小さな城があり、現状はただのゴミ捨て場として扱われているエリアだった。

 塀で囲われて、より人気のない場所だ。わざわざそこに寄り付く者は、はみ出し者の中のはみ出し者といった本当の危険地帯。

 人も物もいらない物はなんでも捨てられる場所。



「そろそろだ。気をつけろよ」


 不器用な優しさで注意を促すコヨミ。


「前に一度来たときと違う」


 開けっ放しの門の前で呟くユキ。


「以前来たことがあるのですか?」


「このチームに入る前の話なんだけどね。迷って入っちゃったことがあるの」


 テヘへといった感じで昔の失敗を告白するユキ。


「で、そのとき探索したんだな。前と何が違うんだ」


「前来たときはゴミは平積みされていて、一応見晴らしが良かったんだよ」


 確かにユキの説明とは現状は大きく違った。今見えるゴミは綺麗に整理されており、通路ができていて、丁寧に灯りまで用意されていた。

 しかし人が歩くスペース以外に高く積み上げられたゴミが視界を悪くしていた。

 城は見えるがかなりの距離があるのだろう。


「この中にエリザベートが居ればいいんですが」


 ミコトの言葉にコヨミが強く反応する。


「居たら叩き切ってやるだけだ。行くぞ」


 まるで導かれるように、進み始める三人。


「分かれ道ですね」


「なんだよ。迷路じゃねえんだぞ。めんどうだな」


「わざわざ私達の為に作った訳じゃないだろうし、罠じゃないとは思うけど。どうする?」


「時間がもったいねえ。二手に分かれて進むぞ。俺は右に行くから、お前等は左に行け」


「一人で良いの?」


「あったりめえだ。俺は誰が来ても負けねえ。お前らも気をつけろよ」


「コヨミも十分甘いね」


 ユキが笑いながら言う。


「うるせえ。じゃあな」


 コヨミは照れ隠しのようにズカズカと先に進んでいった。


「私達も行こっか」


「はい」


 このチームは本当に皆が皆を想い合っていた。

 一緒に行動すればするほど、実感が沸く。失った悲しみと怒り。

 また暗い気持ちになる。


「ねえ。ミコトくん。ちゃんと聞いてた?」


 いろいろ考えるのに夢中でユキが話しかけてきたことに気がつかなかった。


「すみません。全く聞いてませんでした。なんでしょう?」


「全く聞いてなかったのも凄いね。エリザベートが居た場合、ミコトくんは私の後ろに隠れていてね」


「そんな。女性の後ろに隠れているなんてできませんよ」


「仕方ないでしょ。どう考えても私の方が強いんだから。適材適所だよ」


「私の適所はなんですか?」


「これから探していこうね」


 笑いが生まれる。

 この世界に来てからというもの、ミコトが落ち込むとタイミング良くいつも誰かが居てくれた。

 皆と過ごす時間が増えることで本当の絆ができていくんだと暖かさを感じていた、そのときだった。


「あら。坊や。どうしてこんなところ居るのかしら?」


 もう一度聞きたかった、二度と聞きたくない声だった。







「会いたかったですよ。エリザベート」


「そう?私はもう会いたくはなかったのだけれども、若い男の子に熱望されるのも悪くないかもね」


「あんたがエリザベートね。聞いてた通りの狂人みたいね」


「ふふ。ありがとう。私女の子は好きよ。早く切り刻んであげたいわ」


 ユキが槍を握り、間合いを詰めたとき、知らない声が乱入してきた。


「おい、エリザベート。ニ人もこんなところまで連れてくるなんてどういうことなんだ」


「この子達が勝手に来ただけで連れてきた訳ではないわ。ホノリウス」


 ホノリウスと呼ばれた男は一瞬出た怒りの感情を隠し、冷静に話を続ける。


「ふざけるな。さっさと始末しろ」


「わかってるわ。でも私さっきの玩具はすぐ壊しちゃって遊びたりないの。ちょっと集中したいから、あの男の子はあなたが始末してくれない?」


 エリザベートの言葉にユキが反応する。


「玩具?いい加減にしろ」


 ユキが今までで一番の怒りを表す。

 だがその瞬間エリザベートは走り去った。

 さっきと同じ、逃げて自分の都合の良い状況を作りだす気なのだろう。

 二人とも追いかけようとしたが、ホノリウスの振り上げた剣がミコトだけを足止めした


「あの女の言うことを聞くのは癪だが、ボスのお気に入りなんでな。お前は俺が始末するとしよう」


 ミコトは瞬時に判断する。


「ユキちゃん。エリザベートを追いかけて。ここは私に任せて下さい」


「わかった。すぐ帰ってくるから、死なないでね」


 ユキはエリザベートを追いかけていった。


「勇敢だな、小僧。だが俺も長引かせる気はない。友達も帰ってくることはないし、ここで終わりだ」


「前半は賛成です。早く終わらせましょう。後半に関しては同意しかねます。ユキちゃんは勝ちます」


「ふむ。ではとりあえず始めるとしよう。時が経てば全てわかる」


「シャイン」


 ミコトがホノリウスと戦い始めたころ、ユキはエリザベートに追い付こうとしていた。

 そしてコヨミも意図せずエリザベートの仲間と出くわしていた。


 意図せず戦いは始まる。

 仲間の無念を晴らすために。

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