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異性転生  作者: 貴志
第四章 新しいミコト
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009 目覚めの時間

 苦労しながらもやっと宿に着く。ここまではミコトがうさぎを背負い、ブイヨンがミコトと女の子を両脇に抱える形で辿り着いた。

 この宿は入り口を入ってすぐ食堂があり、奥の階段から部屋に上がる作りになっている為、まずは食堂を通らなければならない。基本的には食堂は宿泊客以外も利用できるが、今は貸し切りの為、誰も居るはずはなかった。

 しかし扉を開ける前に異変に気付く。異変というか、騒がしい。騒ぎの主はミコトがずっと会いたかった存在のようだ。


「次の飯はまだか。猫の姿だからといって油断するなよ。沢山食べるからな」


 そこではクロが大量のご飯を食べながらも、追加の注文をしているところだった。


「やっと起きてくれたんだね」


 ずっと会いたかった存在にやっと会えた安心感から、少し涙が出そうになる。思わず抱き付こうとした瞬間、後ろから駆け出したリンに吹き飛ばされる。


「良いタイミングじゃないか。ちょうど飯が欲しかったんだ」


 抱えていたうさぎを落とさないように踏ん張る。

 

「ちょっとリンさん危ない」


「すまんすまん。この姿になると飯を大量に食わないといけなくてな。お前達もさっさと置いて食え。遠慮するな」


「遠慮するなってリンさんのおごりじゃないじゃん」


「細かいことは気にするな」


 リンが豪快に笑う。もうリンに構うのはやめた。


「遅かったなミコト。その様子からすると大変だったみたいだな」


 不憫に思ったのか、クロが素直に労ってくれる。


「いつ起きたの?」


「一時間くらい前だな。また随分と長い間寝ていたようだ。迷惑をかけたな」


「もう大丈夫なの?」


「あぁ、大丈夫だ。ワタシが寝ていたのはサンザのギフトの影響だからな。起きてしまえばこの通りだ。それで、生き残ったのはお前だけか?」


 クロが現在の状況を聞いてくる。ミコト以外は全滅したと思っているらしい。食事をしながら現在までの状況を全て説明する。




「なるほど。これら全てがリンの仕業か」


 話を聞き終わったクロがリンをジトっと見つめるが、リンは気にせずに食事を食べ続ける。量とスピードは異常であったが、意外にも食べ方は上品で、まるで普通の食事シーンを倍速で再生しているようだった。

 ブイヨンは主人と同じ卓では食事をしないと言い、離れた角のテーブルで食事を取っていた。


 「天使の力が凄いのは当たり前として、お前の力も大概だと思うのだが。一体お前は何者だ?」


 クロの問い掛けにリンの箸が止まる。


「何者だとは心外だな。ワシはただの善良な一般人だ。こんな血生臭い戦いに巻き込まれて心が痛いぞ」


 シクシクと泣く素振りをみせるが、余りにもわかりやすい演技だった。当然本人もそんな話が通じる筈がないことは理解していたのか、真顔に戻り話を始める。


「出身で言えば、上で寝ている二人と一緒だ。だが生きた時代は違うがな。ギフトは選べるものじゃないだろう。たまたま良いギフトを持てただけだ。つまりワシは凄いギフトを持った一般人だ」


 リンがこれで話は終わりだということを示すように、食事に集中する。

 クロも今はもういいとばかりに頷く。次の話題は上で寝ている二人に移る。


「うさぎはサンザが何とかするから良いとして、童二人が問題だな。ただの子供なんだろう?」


「リンさんが言うにはね。ある程度元に戻せるまで体力が回復しないといけないみたい」


「それまでは子育てをするっていうのか。馬鹿馬鹿しい。いっそのことどこか拾ってくれそうな人間の元に捨てておけば良いんじゃないか?」


「クロ」


 ミコトがジト目でクロを見つめる。


「冗談だ。元に戻れば戦力になりそうだし、何とか面倒をみるか」


 そんな話をしていると、ちょうど上からドタバタと激しく暴れる音がした。何事かとクロと上に向かう。騒がしい音はコヨミ達の部屋から聞こえていた。


 恐る恐る扉を開けてみる。


 そこではコヨミと女の子がベッドの上で飛び跳ねて笑いながら暴れていた。その姿はまさに見た目通りの子供で、大人だったときの面影は全くなかった。

 思わず可愛く感じてしまい、お姉さんぶった態度を取ろうとする。しかしこれが大きな失敗であったことは、このときのミコトはまだ知らなかった。


「二人ともお腹空いてる?ご飯があるから一緒に食べようか?」


 まずコヨミが反応する。


「ご飯?そういえばお腹空いたなぁ。ご飯のおばちゃん、ご飯ちょうだい」


「ご飯おばちゃん!」


 二人はケタケタと無邪気に笑う。いや、この場合は邪気があるのかもしれないが。


「誰がおばちゃんなのよ!私はまだ十七歳よ!」


 ミコトが思わず叫ぶ。


「十七歳?んー、やっぱりおばちゃんじゃん」


 また二人が笑う。そんなときから、さっきまで居なかった声が後ろから聞こえる。


「諦めろ。こいつらの生きた時代では十七は十分大人だ」


 リンだった。何だかニヤついているようにも感じて、少しイラッとする。


「二人とも良い子にしないとご飯あげないよ!」


 そう言うことで二人を大人しく従わせたが、何だか情けない気持ちになる。




 食堂で子供達にご飯を食べさせながら、これからのことを話し合う。

 リンは自分の体を癒す為に拠点の街に戻るとのことだった。ミコト達はカンナの復活とサンザが戻ってくるまでの時間を、この宿で過ごすことにした。幸い宿は事前にサンザがこの先も十分滞在できるだけの支払いをしてくれていたようだった。

 リンは話し合いが終わるとブイヨンを連れて早馬と帰った。朝までゆっくりしていけばという提案は出したが、早く拠点に帰りたいとのことだった。

 嵐のような勢いで嵐のような爪痕を残しリンはいなくなった。


 子供達に話を聞いてみたが、二人は自分が元々は大人であったときのことは何も覚えていないようだった。

 二人はご飯を食べ終わると、再び眠りについた。


 久しぶりに起きているクロと一緒に過ごす。やっぱりクロが居ると落ち着くと実感する。安心すると同時に疲れが一気に訪れ、いろいろ報告をしていたミコトも眠りにつく。

 


 うさぎは次の日の朝に目が覚めた。

 更にカンナもその次の日に復活して帰ってきたのだった。


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