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異性転生  作者: 貴志
第二章 それぞれの日々
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007 day 5 〜メイ前編〜

 彼女は普通の高校生だった。ギャルに憧れて派手な見た目を好んでしていたが、見た目とは違い根は真面目だった為、生活態度は派手ではなかった。友達も多く、日々を無難に楽しく過ごしていた。

 運命の日ともいえるその日、彼女は友達と遊園地に行く予定だった。しかし遊園地に向かうバスの中で、その生涯を終える。

 人生はあっという間に過ぎていく。そして終わる時も一瞬だ。


 自分の人生が終わったのだと理解したとき、何故かこの世界にいた。

 死んだことはショックだったが、前向きに考えるともう一度生まれ変わるチャンスを得たことはラッキーだった。


 しかしラッキーだと思っていた矢先に、今まで味わったことのない苦痛を味わうことになる。

 どうしてこんな目に遭うのか、経験したことのない痛みが襲う。だが隣にいるこの世界における小さな先輩は、弱音を吐かずもっと小さな子供達を護り通した。

 他人を心から尊敬したのはこれが初めてだった。また他人を心から憎んだのもこれが初めての経験だった。

 これまで自分が経験したことのないことを沢山経験し、疲れてしまった。

 元々よく寝る上に寝起きも弱いのだ。

 何故か痛みは無くなったし、寝ている間は恐怖を感じなくてすむ。

 今はもう少し、まだ少し、このまま目を覚さずにいたいと願い、心の眠りに着く。








 スッキリしない朝だった。昨日起きた出来事があまりにも重く辛く心にのしかかる。

 起きてすぐクロを探すが、隣には居なかった。最近クロは朝隣に居ないことが多い。

 居ないなら居ないでしょうがないので、特に気にせずに準備を整える。


 今日のミコトの予定は、ユキとコヨミの三人でリンのところに行くことだ。

 宿を出る前にメイの寝ている部屋に寄るが、変わらず眠っていた。

 昨日の惨劇を観たミコトからすれば、無理もないと考えてしまう。


「リンさんから白薔薇の情報を聞いてきますね。シノちゃんとメイちゃんの仇は絶対討ちますから」


 メイに話しかけたのは返事を期待した訳ではなく、自分の決意表明の為だった。





 集合場所である宿の玄関前に移動する。そこにはユキはともかく、珍しくもコヨミも先に来ていた。


「さぁ、行くぞ」


 そう言うコヨミの姿はいつもの雑な感じではなく、まるで沢山の兵を率いる大将のようにみえた。






 今回は前回よりも早く目的地に着いた。どうやら前回は観光も兼ねてゆっくり時間をかけていただけで、寄り道をしなければすぐ着く距離だったようだ。

 着いてすぐミコトが感じたことは、前回と雰囲気が違うだった。元から異様な雰囲気の場所ではあったが、今は不自然なくらい静かだった。


「静かですね」


 ミコトがユキに話しかける。同様の違和感はユキも感じているようだった。


「リンちゃんに限ってまさかとは思うけど、気をつけて中に入ろうか」


 それぞれが武器を持って中に入る。

 商店の部分には誰も居なかった。血の後がありここで戦いがあったことは確実だ。

 奥の前回リンと話をしたところまで入りこむ。しかし誰一人見つけることは出来なかった。


「どうしますか?」


 ミコトが言葉を発すると同時だった。突然床の板が上がり、階段が現れた。

 ミコトが呆然としていると、ユキが笑顔になる。


「良かった。リンちゃん無事だったんだね」


 階段からリンが上がってくる。今日は前回と違い白いミニチャイナドレスを着ていた。


「良いものか。まったくワシ以外のやつは全員やられてしまったんだぞ」


「自分の命があっただけいいじゃねぇか。それで誰にやられたんだ?」


 コヨミがぶっきらぼうに聞く。


「お前のチームは面白い人材を抱え込むのが好きだな」


 リンはコヨミの質問に答えずに、ユキに言う。


「頼りになるよ。それで何があったの?」


「テムにやられた」


「「えっ?」」


 ミコトとユキが同時に反応する。


「どうしてテムに狙われるんだ?何を掴んだ?」


 コヨミが問い詰めるように言う。リンは少しバツが悪そうに答える。


「最近いろんな組織が悪さをしていてな。どうやらその中心に居るのがテムっぽかったから、暗殺してみようと思ったらこのザマだ」


 サラッとおかしなことを聞いた。


「どうして暗殺なんかしようとしたんですか?」


「余りに偉そうにしているのが癇に障った」


 リンがニカっと笑う。


「まぁ気にするな。これはこっちの問題だ。それで今日は何の用だ?」


 そして何事もなく、来客対応モードに切り替える。

 さすがに三人はこのまま自分達の用事を果たしていいのか悩む。しかし旧知のユキが覚悟を決めて動く。


「大変なところ悪いんだけど、知りたいことがあって。白薔薇についてなんだけど」


 リンは黙ってユキを見つめる。そして呆れたように口を開く。


「早速やり合ったのか。相変わらず元気だな」


「リンちゃんの方が元気でしょ」


 二人共笑う。その光景だけ切り取って見れば、タイプの違う美少女二人が笑いあっていて、とても絵になる。

 もちろん話している内容が、あまりに物騒なことを除けばだが。


「ちなみに白薔薇もテムの手下だぞ。そして白薔薇の頭は服部半蔵という男だ。なかなか強かったんじゃないか?」


「服部半蔵が……カンナくんが押しきれなかったくらいだし、結構強かったんだと思う」


「あいつがか。だが勝ったんだろう?」


「総合すると負けたと思う。不快だけど」


 ユキの怒気が溢れる。


「あっ、ごめん」


 ユキは謝罪をしながら怒気を隠す。


「テムは器を探している。そしてどうやら昨日それが見つかったらしい」


 昨日テムと戦いながら、昨日起きたことまで全て把握していることに驚いた。流石と言わざるを得ない。そしてそれはコヨミも同様だったようだ。


「やるじゃねぇか」


「そうか?まぁ、昨日は器が見つかった喜びでテムが引いただけなんだがな。ワシに構ってる時間が勿体なかったんだろう。命拾いしたわ」


「なんだよそれ」


 褒めた途端、顛末を知ってがっくりくる。


「まぁ運が良いのも実力の内か。それでもやるじゃねぇか」


 前向きに改めて褒め称える。


「ちなみに見つけた器っていうのは?」


 ユキは予想は付いていたが一応確認する。


「お前のチームの新入りだな、ミコトじゃない方だぞ」


 リンの言った言葉にミコトは背筋が凍る。自分が器であることを知っていることもそうだったが、メイの存在も当たり前に知っていたことにだ。

 さっきは戯けていたが、やはりリンは只者ではない。


「獣堕ちは器を求めるか」


 コヨミが独り言として呟く。意外にもリンがそれに反応する。


「そうだな。そしてテムの場合、必要な器は一つじゃないらしい」


「どういうことだ?」


「簡単な話だ、あいつが必要なカケラは一つの器で集めきれないんだろう。何せ歴史上でもトップクラスの悪党様だ」


 リンが嘲笑う。


「それでもやるしかねぇな。俺はもうこれ以上仲間を失う気はねぇし、このまま奴を逃す気もねぇ。全面戦争だ」


 コヨミの語気が強くなる。


「私も賛成。多分この世界に居る限り絶対避けては通れないだろうし。さっさと片付けた方がスッキリするしね」


 ユキも決意は固まったようだった。

 ミコトは考えた。自分はどうするべきなのか。

 ミコトはこの二人ほど強くはない。でも強くないことは諦めていいことと同義ではない。


「私も戦います」


 ミコトも強く表明する。


「それでテムはどこにいるの?」


 ユキがリンに問う。


「テムの居場所か……」


「教えて、もう引けないの」


 リンが片目を閉じ、少し考える。そして両目でミコトを見る。


 リンが口を開こうとした瞬間、何者かが凄いスピードでリンに近づく。

 十歳くらいの男の子だった。ユキとコヨミが動かなかったことから、敵ではないことはわかった。


「おい、ブイヨン。ワシのピンチをわかっててワザと放っておいたな」


「なんのことだか」


 ブイヨンと呼ばれた男の子が短く答える。彼はその小さな背丈にしっかりとサイズを合わせた白い騎士服に身を包んでいた。

 どう見ても子供だが、強者であることはミコトにもわかる。


 そしてブイヨンがリンの耳元で何かを囁く。こういう場合は大体悪い知らせなのだろうと思う。

 そしてリンが口を開く。


「今テムとその手下が、カンナ達の宿を攻めているそうだ」

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