プロローグ
森に横たわる少年がいる。彼女はまだ起きない。まるでまだ生まれていないように。
少年を見つめる黒猫がいる。その目は捕食者のように鋭い。ずっと探していた極上の獲物を発見したように。
「やっと見つけた」
その呟きは誰に聞かれることもなく、森に消えていく。
ここから二人の物語が始まる。
人は死んだらどうなるのか。
誰もわからない答えを考えると怖くなる。
ミコトも同じだった。
神宮寺ミコト、都内に住む女子高校生であった。
ミコトには病気の妹がいて、何よりも妹のことを大事に思っていた。自分の命よりも。
いつからかはわからない。敢えて言うなら姉になったときからであった。
妹は病気ながらも今すぐに命に別状がある訳ではなく、日々を問題なく過ごしていた。
「いつかお姉ちゃんが治してあげるからね」
これがミコトの口癖であり、目標だった。
ミコトは勉強もスポーツも人間関係も、全てを完璧にこなしていた。
特別優れていた訳ではなく、努力の賜物であった。
妹から尊敬される姉でありたいという想いが原動力になっていた。
日々を妹の為、自分の為と全力で生きていた少女の人生は突然終わりを迎えた。
事故だった。
ミコトの命は一瞬の間に奪われた。
ミコトの人生という物語は終わった。
はずだった。
人は死んだらどうなるのか。
誰もわからない答えを考えると怖くなる。
私が死んだら妹はどうなるのか。
私は死ぬのが怖かった。




