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魔術の原理―原書  作者: 岸田四季
聖初書~三章~
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第三章~Chapter 3~二人組

 カトレアは毎日佐々神(ささがみ)の様子を見に来ていた。

 あの日から三日が経つが、いまだ目を覚ます様子はない。last(ラスト)の系列の病院だから信頼は出来るはずだ。

 そしてカトレアはいつものように、あの日のことを思い出していた。

 あの日、あの時。佐々神は死んでいるはずだった。

 風雅(ふうが)聖樹(まさき)のあの馬鹿げた技――千風万化(せんぷうばんか)。千の風を万通りに変化させる、地形どころか下手をすれば天候すら変えてしまうほどの術だ。

 普通に考えてカトレアですら生きているのが不思議なくらいだ。なんとか防護結界を張り、ギリギリ生き残れたのだ。真正面から受けた佐々神の生存は絶望的と言っていいはずだった。

 なのに意識がないとは言え、現に呼吸をしている。

 しかし、カトレアは朧気に覚えていた。佐々神が大鎌(サイズ)を振りかざしているところを。

 そしていつもこの結論に思い至る。

 もしかしたら、佐々神があの攻撃(かぜ)を断絶したのではないか? もしかしたら、あの瞬間佐々神の急成長し、聖樹と実力が並んだ、いやそれすらも超えたのではないか? そう思うしかなかった。

 カトレアが思いに耽っていると、病室の扉が開いた。足音を響かせながら入ってきたのは、黒髪の少女(あずさ)だった。


 カトレアは話があったので梓を近くの繁華街の喫茶店に連れ出していた。

「ねぇ、佐々神君って強いと思う?」

「それは……もちろん強いと思いますけど?」

 梓は少し不審に思いながら質問に答えた。

「じゃあ、あたしより強いと思う?」

「いや、それはさすがに……」

 確かに、カトレアはそう言って話を続けた。

「あたしの方が強いかもしれない。でもそれは、通常時においての話なの。もし例えば、あたしが殺人狂とかで佐々神君や周りの人に危害を加える奴だとしたら……間違いなく、佐々神君はあたしの前に立ちはだかってくるでしょう。そして……」

 少し言いづらそうにして、

「負ける。今どんなに実力の差があろうと、本気で敵として戦えば間違いなく彼はあたしを超える」

 梓は固唾をのんだ。

 なぜか?

 それは梓にも思い当たる節があったからだ。

 フロントと戦ったときも、あんなにボロボロになりながら追いかけてきて、いつの間にか敵を地面に伏せさせていた。今回のこともそうだ。ようやく魔術になれた梓が見ても敵との差は火を見るより明らかだ。

 どれだけ偶然を積み重ね、どれだけ頭をフル回転させれば埋まる差なのか。梓には想像すら出来なかった。

「少し分かった? あたしは彼の強さの正体が“異常な成長力”だと思ってるの」

「“異常な成長力”……」

「それだけじゃない。彼にはもう一つ普通の人とは違う強さがあると思うの」

「それって……?」

 梓が尋ねると、

「待って。お客さんが来たみたい」

 そう言ってガラス越しに七、八歳の茶色い短髪の少年と二十代の黒のショートの女の二人組を見た。

「どういう関係かしら。親子にしては近すぎるし、兄弟にしては離れすぎているわね。どっちにしろ」

 カトレアはよく分からない笑みを浮かべ、

「とんでもない敵意を感じるわ」

 席を立ち、会計を済ませるとすぐに外に出て行った。

 梓も慌てて後を追うとすでに険しい雰囲気が出ていた。

「カトレア=フォーチュンね? ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 カトレアがショートカットの女を睨み付けると、

「佐々神亮平(りょうへい)の居場所、教えてくんない?」

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