第一章~Chapter 1~世界で起きてた怪事件
ようやく試験が終わり、晴れて自由(本当に自由かは結果次第だが……)の身となった佐々神は放課後を満喫していた。
「佐々神ぃ、テストどーだった?」
学ランが海に沈めたいほどムカつく顔で尋ねてきた。上から目線っぽいがこいつもかなりのバカである。佐々神は思い出す。確か去年もクラスで二人だけ課題を大量に出された記憶がある。
「完璧だ」
「そうか俺もだ……」
しばらく沈黙が続き、
「今年も一緒に頑張ろうな」
学ランが声をかけてきた。この時だけは共感できた。
その後しばらく男共のみで会話を続けていると、突然背後から、
「おい。メシおごれや!」と絡まれた。
「学園ドラマですか? しかも、関西圏の」
佐々神のツッコミが気に食わなかったのか、
「寒い」と一言だけ言われた。佐々神は正直かなりのショックを受けた。
「亮平君可哀想だよ」
と慈悲をかけてくれたのが梓。ちなみに、絡んできたのは舞華である。いつの間に仲が良くなったのかは疑問だが、とりあえず、自分の知り合い同士が仲良くなるのは嬉しいことだ。
「いーからとりあえずファミレス行くよ」
と舞華に強引に腕を引っ張られる。
一連を見ていた学ランが一緒に連れて行ってほしいオーラ全開で視線を送ってきている。それに気付いた佐々神は可哀想になり、
「おい。お前も「お前は来んな!」」途中まで言いかけたところで舞華がそれを封じた。
学ランは泣きそうになっていたが舞華が怖いので、見捨てることにした。
学校を出て、自宅近くのファミリーレストランではなく梓に合わせて、学校近くの駅前のファミリーレストランに来ていた。
佐々神はここに来るまで梓と舞華が仲が良すぎて話の輪に入れてもらえず、道のりがとても長く感じた。
ファミレスに入ると、ウェイトレスが窓際の席に案内してくれた。佐々神達はとりあえずドリンクバーを頼むことにした。時刻は午後三時四八分という中途半端な時間なので食べ物を頼む気にはなれなかった。
「そう言えば朝やってたニュース知ってる?」
「ああ、フランスで化け物みたいのに襲われたってやつか?」
舞華は今朝の事件を知らないようで黙って話を聞いていた。
「うん。さっき携帯のニュースで見たけど世界に拡大してるらしいよ」
「え? 世界?」
「アメリカとロシアと中国。イタリア、ドイツにえーと……イギリスだ」
ようやく思い出せてスッキリしたのか満足げな顔をしていた。
「そもそも化け物って何?」
舞華が口を挟んできた。
「確か、なんかのニュースで魔物って言ってたよ。目撃情報もあるらしくて黒いライオンみたくて、鬣の色は紫色だって」
「はぁ? そんなのいるわけないでしょ?」
「でも……実際に人が世界で三七人も死んでて手足が食いちぎられてるんだよ」
「……ッぐ」
舞華はグロテスクなことが苦手だ。おそらく食いちぎられてる様子を想像してしまったんだろう。
「道路も滅茶苦茶になってたし」
「なぁ、『魔物』はどこで目撃されたんだ?」
「んー、確かアメリカだったと思う」
佐々神は黙り込んだ。それを舞華は不審に思い、
「りょーへーどうしたの?」と尋ねたが、
「なんでもない」としか答えなかった。
梓は亮平が何か知っている気がしたが、質問することは佐々神の雰囲気が許さなかった。