第一章~Chapter 1~試験(テスト)と言う名の死闘
佐々神は今日はコンビニに寄らずに学校へ来ていた。玄関で上履きに履き替え、階段を上る。まだ二日目だが、慣れたように自分の教室へ向かう。と言うのも階が違うだけで去年も同じ場所だったので慣れていた。
(まだ、誰もいないだろうなぁ)
教室の扉を開けると、先に一人の少女が教科書とノートを広げていた。
時刻は、七時四七分。ちなみに学校は八時三〇分までに来ればセーフである。一番乗りで学校に来たと思っていた佐々神は少々驚いた。
「あ!」
先にいた少女も驚いたようで声をもらした。と言うか少女とは梓だった。
「なんだ梓か。ずいぶん早いな。お前もテストが危うくて早く学校に来たのか?」
と尋ねると少し戸惑った。
「え、えーと。そんなところかなぁ」
実は、佐々神のことが少し気になって(これは好きという意味ではなく、ただ単に気になっていただけである)早めに行けばいるような気がして来た。なんて言えなかった。
「え? 梓頭悪いの?」
そんなことを知らない佐々神は不躾な質問をしていた。
「え? いや、頭いいとは言わないけど……一緒に勉強する?」
「え? いいのか? 助かる!」
都会の灼熱地獄の中、コンビニを見つけたかのように喜んだ。
「じゃあ何やる?」
「何でもいいんで教えてください」
意地もプライドもなく頭を下げた。
「んーと、今数学やってるから数学でいい?」
「是非」
佐々神も鞄から教科書とノートを取り出して、問題を解くことにした。
「すみません。大変申し訳ないのですが範囲を教えて下さい」
佐々神は問題はおろか、範囲すら知らなかった。
「えっと、一年の時のほとんど全部出ると思うよ」
その返答に佐々神は愕然とした。
「イチネンノトキゼンブデスカ?」
「うん……。多分実力テストなんだからほとんど出るよ……」
それから、梓は全く分からない佐々神に勉強を教えることにした。
途中、「じゅけーず? おいしいの?」と佐々神が言っていたが、笑って誤魔化すことしかできなかった。
そうこう(主にアホな佐々神の相手を)してるうちに、みんなが登校してくる時間になっていた。
学ランはテストのことはすっかり諦めて、また下ネタをぶっ放していた。
一方、佐々神はと言うと……いつの間にか舞華に捕まっていた。
「朝からデートってなに? そんなにあたしに奢りたいの?」と訳の分からない説教を受けていた。
「昨日だけじゃ満足出来なかったっていうの?」
「そうではなくて……たまたま早く行ったら梓が居ただけであって……」
そこまで言うと舞華のこめかみがピクリ! と動いた。
「あずさ? いつそこまで仲良しになったの?」とニコニコしながら言っているが、実際かなりキレてる。なぜ、そこまで怒られるのかよくわからなかったが、とりあえず謝った。
「すみません、悪気はないんです。ただ、勉強を教えてもらっていただけなんです」
佐々神の言い訳を聞くと舞華はハッとなった。
「あ……バカ亮平のせいで、テストのこと忘れてたじゃないの!」
なぜか逆ギレされた。
時は流れて一限目国語。あの後すぐチャイムが鳴り、ほとんど勉強ができなかった。
問三.1「何にもとらわれず、自分の思うがままに振る舞うことを四字熟語で何と言う?」
解答「自分勝手」
佐々神はとてつもない解答を繰り返していた。