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第三章~Chapter 3~ただいま

「アイツ、親父にでも相談すればよかったのになぁ……」

 佐々神(ささがみ)はそう言葉を漏らす。

 実際佐々神の意見は正しい。(しょう)の父親に相談すれば他に解決策があったかもしれない。それをしなかったのはなぜだろう。

 だが、そんな考えはすぐにどこへ飛んでいった。とりあえず、目の前で泣いてる少女をどうにかしないと大変なことになるかもしれない。さっきあれ程大騒ぎをした上、片や人が倒れ、片や女の子が泣いている状況を見れば誰もが一瞬で悪人を断定するだろう。

(あずさ)。とりあえず移動するぞ」

 そう言って立ち上がり、梓の手を引っ張って行く。

 梓は泣きながら驚いたような声を上げる。

 佐々神はそれを無視してズルズルと人気のないところへ連れて行く。傍から見ればこの行為の方がずっと危ないく見えていることを佐々神は気がつかない。

「ね、ねぇ。亮平(りょうへい)君動けるの?」

 梓にそう聞かれるとハッとなった。

「あれ? 動ける……なんでだ?」

 よくわからないが動けるようになっていた。

 そんなことを気にせず梓を落ち着かせようと必死になる。

「ま、さっきまた怒鳴っちまったけど……えーと、結局悪いのは翔なんだから、その……気にすんな」

 結局何が言いたいか佐々神自身分かっていない。謝りたかったのだろうか。

 その様子を見た梓は幼児のようにくすくすと笑った。その微笑む様子は天使と比喩するのが相応しいかもしれない。それほど美しく、癒される笑顔だった。



 佐々神達は現在カトレアのところにいる。

「ったく、アンタたちはぁ! なんで勝手に行動するのよ! 佐々神ぃ! アンタには動くなって言ったわよね? ねぇ馬鹿にしてるの? ねぇ聞いてるの? だ・か・らぁ………………」

 カトレアはまだまだお説教モードだ。佐々神と呼び捨てにしてしまう程怒っている。二人とも勝手に飛び出していった上に二人だけで事件を解決してしまったのが気に食わないらしい。というか、ただ単に活躍出来なかったのが悔しいだけだろう。「アタシも相当探したのよ!」とキレていた。

 地下世界(アンダーグラウンド)から出て、カトレアに傷を見てもらったところ、佐々神自身以外に二種類の魔力の残骸が見つかったらしい。魔力の残骸は、人に魔力を直接込めるか回復魔術をかける以外では残らないらしい。つまり、攻撃魔術では残らないということだ。ということは、佐々神に回復魔術をかけた人間が二人いるということだ。一人は梓。もう一人あの状況で回復魔術をかけられたのは……そこら辺は心意気に免じて気にしないことにしておく。

「佐々神ぃぃぃぃ! アンタまっっったく聞いてないでしょ? 今あたしがなんて言ったか聞いた? 言ってみなさいよ!」

 佐々神は軽くため息をつき、

「アンタたち次からは勝手に行動しない! そん時はアタシに言うのよ? でもまぁ……おかえり。だろ?」

 カトレアの顔はどんどん赤くなっていく。

「ちっっっっがぁぁぁぁぁぁぁう! アタシそんなこと言ってないでしょ。てか、アタシよりいいこと言うなぁぁ! チクショウ、アタシの言葉なんだと思ってんのよ」

 カトレアは口を尖らせ下を向いていじけてる。佐々神は不覚にも『カワイイ』と思ってしまった。

(早く終わらないかなぁ……)

 と、佐々神は怒られそうなことを考えている。

 佐々神がぼーっとしているところに大声が聞こえた。思わず飛び上がってしまった。何かと思い意識を戻すと、声の正体は梓だった。

「お願いです。魔術を教えてください」

 そう言って梓が頭を下げている。どうやら、カトレアに教えを()っているらしい。

「だからぁ、これ以上上級な魔術をアナタに教えると大変なことになるの。下級程度であれだけの威力を出しちゃうんだから、これ以上は無理。魔力の制御は簡単に出来ることじゃないの。少なくても三、四年はかかるわ」

 梓はそれでも引き下がらない。

「どんなことでもします。だから、教えてください。今回の件はあたし全く役に立たなかった。それどころか、一人で勝手に突っ走って迷惑をかけました。ですから、こんなことないように……」

 カトレアはそれを遮るように、

「アナタ本当に役に立たなかったと思ってるの?」

 梓は思わず声が漏れる。そんなこと言われるとは思っていなかった。

cross(クロス)の一人を倒した。それだけですごいことじゃない」

 梓はそれに反対する。

「だってそれは、亮平くんが倒しただけです。あたしはなにもしてません!」

 カトレアはニヤッと笑う。そして、佐々神に目をやる。

「本当にそうかしら? ねぇ、佐々神君♪」

 佐々神は苦笑いをする。

「梓がいなかったら……死んでたな」

 そう言って微笑む。

 梓は(ほほ)を赤らめる。

「で、でも」

 カトレアはまた梓の言葉を遮るように両手をパンパンと叩き、

「はいはい。今回は二人が仲良く協力しました。めでたしめでたし」

 カトレアは微笑み、言葉を続ける。

「梓ちゃんは十分に役に立った。それに女の子は男の子に守られていればいーの♪ メチャクチャ強い女の子は可愛くないでしょ?」

 そう言っているカトレアは自爆していると、佐々神は思う。

 梓はもう一層顔を赤らめる。

「……」

 カトレアはまた微笑む。やっぱりこれは癖なんだろうか。

「でも、それでも梓ちゃんが本気で魔術を習いたいって言うなら、教えてあげてもいいわ」

 梓は子供がおもちゃを買ってもらった時のように喜んだ笑顔を見せる。

「はい! 是非!」

 カトレアはもう一度佐々神に視線を向ける。

「佐々神君もいいわよね?」

 佐々神は少し息を吸って、

「ああ、頼む。こっから先は俺一人じゃ無理だ。お前の力を貸してくれ」

 梓はもう一度はい! と元気よく答えた。

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