第三章~Chapter 3~一筋の光
フロントは剣を握りしめた右手を振り上げる。そして、そのまま振り下ろす。ビュン! という空を斬る音がすると、剣先から蒼い炎が放たれた。その形は剣のような形をしており、まさに炎の刃と呼ぶのに相応しかった。
「、ックソ!」
佐々神はギリギリでそれを横に飛んでかわす。が、
「……ぐ、あぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁあ」
肺はヒリヒリと痛み、喉は焼けるように熱い。佐々神は苦痛の声を上げる。佐々神自身なにが起きたかさっぱり理解できていない。
フロントは高らかに笑い声を上げる。そして答えるように、
「お前頭悪りぃな。炎っつぅのは、見えないところが一番熱ぃンだよ。ンでよ、蒼ければ蒼いほど見えない部分が多くなンのよ」
フロントは口角を少し上げ、
「テメェはその見えない炎の刃に斬られたってワケだ」
フロントはまた笑いだす。勝利を確信したように、見下したように。
佐々神はほとんど動けない状態で、
「hi……alga……」弱々しく唱えると、弱々しい光の魔法陣が出現する。
幸い魔力は残っていた。傷が火傷ということもあり、傷口を塞ぐ程度の魔術『hialga』でも回復することは可能だ。が、見えない炎は火傷だけでなく内部まで食い込んでいて、臓器の方もかなりダメージを受けている。
佐々神は立ち上がり、
「hialga!」ともう一度唱えると、さっきよりも光が強い魔法陣が出現し魔力を込め回復する。
佐々神の体の火傷の痕はすっかり消えている。だが、ダメージが消えた訳ではない。佐々神は今にも倒れそうだが、気力と信念だけで意識を保っている。佐々神になぜここまでさせるかは不明だが、普段の佐々神だったら確実に倒れていただろう。
フロントはそれを見て馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「しつけェな、さっさと死ねよ」
フロントはもう一度佐々神に向かって蒼い炎の刃を放つ。
だが、佐々神は瞬時に幻器を握りしめ散弾銃に変形させる。そして、それを真下に向け引き金を引く。
腹に響くような銃声がすると、佐々神の体が中に浮かんだ。佐々神の真下を炎の刃が通り抜ける。そしてもう一度引き金を引いて、さらに空中へ飛ぶ。
フロントはこめかみに青筋を作り、
「一回避けた程度でチョーシに乗ンじゃネェ!!!!!!!」
フロントは膨大な魔力を込め酸素を集める。そして、それを炎と結合させる。佐々神の飛ぶ先を予想し、そこ目がけて蒼い炎の刃を放つ。
地響きがする程の炎の刃が空中で身動きの取れない佐々神を襲う。もう一度撃って、距離を稼ごうにも時間がない。おそらく、最高速度が出る直前で炎の刃に捕まってしまうだろう。
だが、佐々神は迫りくる炎に向かって散弾銃の引き金を引く。眩い細い光の線が蒼い炎に向かって放たれる。
直後、蒼い炎は細い光の線によって打ち消された。それだけではとどまらず、一筋の光は炎の刃を放った下へ一直線に進む。
そして、黒いマントを着た男の周囲は爆音と神々しい光で包まれた。