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序章~Introductory chapter~出会ったことのない再開

 階段を登り切ると、目の前にはCクラスがあった。

 まだ奥か。と面倒に思いながら右に曲がりつきあたりを目指す。

 Fクラスは一番奥に存在する。トイレは近くて便利だが毎朝遠い教室まで移動するのは面倒だ。

 ようやく自分のクラスまで辿りつくと、教室の前の「2―F」のプレートを確認する。そして扉にはこのクラスのみのクラス表が貼ってあった。

 間違えたら恥ずかしいのでもう一度確認し、大丈夫なことを確かめてから教室に入る。

佐々神(ささがみ)、お前もここか!」

「またお前か。飽きたな」

「ひでぇだろぉ!」

 などと冗談を言いながら会話の輪に入っていく。

 クラス表では自分以外はほとんど見ていないが、意外と知り合いは多いみたいだ。今話しかけてきた学ランも去年一緒だったやつだ。

 基本的にこの学校は服装が自由だ。

 と、言っても私服がありではなく、「制服なら何でもいい」という方針らしい。メイドとかナースとか婦警さんでもいいのか。と聞いたどっかの学ランもいたがそれらの服を着てくる女子、ましては男子など居るはずもなく、その問いの答えは不明だ。

 佐々神は標準服で、ほとんどの生徒もそれを着用している。特に着たい制服がある訳でもなく、中学のを着るのは小さすぎて着れない、などの理由で標準服が一番多くの割合を占めている。

 と言う訳で学ランはこいつくらいだ。

 以前佐々神が学ランに、なぜ学ランを着ているのかと聞いたら「ハーレムを作るために必要なのさ!」と親指を立てながら(冗談であると信じたいが……)本気で言っていた。

 男どもの会話は朝っぱらから下ネタに走っていた。少々聞く堪えないと感じた佐々神は、とりあえず自分の席に荷物を置きに行くことにした。

 出席番号は二二番だから……右から三列目の前から四番目か。自分の席を確認して席に着く。

「リョーヘー、アタシは無視ぃ?」

 後ろから声をかけてきた少女は倉敷(くらしき)舞華(まいか)だ。なぜか中学一年のころからすべて同じクラスである。

 身長は一六〇センチ強と女子にしては少し大きく、瞳も胸も大きい。髪の毛はセミロングで左右に一本ずつ三つ編みを入れている。髪の色は暗い赤。

 標準服のブレザーと水色、青、紺のチェックのスカートを穿いている。襟元には男子と同じ柄のリボンが付いている。

「いや自分の名前しか探してなかったら気付かなかった」

 佐々神は正直に答えた。が、

「毎年同じなんだから気づけよ」と、舞華は少しふてくされる。

「てか、これは誰の陰謀? 毎年毎年リョーヘーと同じクラスって。クラス替えした感じがしないんですけどぉ」

「知らねぇよ。まぁ、知らない人よりかマシだろ」

 なぜか舞華は顔を赤らめながら「よ、よくないもん」と言って自分の席に戻っていってしまった。

(なんか怒らせたかなぁ?)

 佐々神が気にしているとチャイムが鳴った。


 少し経つとクラスメイト達は個々に自分の席に着いた。

 ガラガラッ! と教室の扉が開く音がするとそれに視線が集まった。

 入ってきたのは、身長は一五〇センチ強。すらっとした体でいつもブラウスの上に緑のセーターを着て、下には白(時々変わるが)のひざ下までのスカート。そして、スカートの下にはストッキングを穿いている女の先生だった。まぁ、俗に言う「美山先生」だ。

 予想通りの結果にまたか! と思う反面少し嬉しかった。馴染みのある先生だと少し安心する。

「そ、それじゃあ席に着いてください」

「みーちゃんセンセー、もう席についてまぁす」

 学ランがツッコミを入れた。そこでクラスに笑いが起きる。

「そ、その呼び方はやめてください」

 美山先生は焦っていた。

 佐々神はいつも通りだなぁなどと思いながら、ふと、廊下に目をやる。そこには見慣れない黒髪の少女がいた。見慣れないはずの少女だったが、なぜか見たことがあるような不思議な感覚だ。

「それでは転校生を紹介します」

 落ち着きを取り戻した先生は廊下に手招きをし、黒髪の少女を呼んだ。

 黒髪の少女が入ってきた途端、おおおぉーと言う男子(主に学ラン)の声が上がった。それもそのはず黒髪の少女はまさに美少女だった。

 身長は一五〇センチ程度で美山先生より少し小さい。黒い髪は頭の上のほうでツインテールにしてあり、余った髪は背中まで伸びている。制服は前の学校のものなのか白のワイシャツ、紺のブレザーに見慣れない金の刺繍、赤に緑のラインの入ったチェックのスカートを穿いていた。こちらはリボンではなく紺の地にワインレッドとダークグリーンの刺繍がしてあるネクタイを締めていた。

「み、みんな静かにしてください。自己紹介ができないじゃないですかぁ」

 すると何かに気づいた学ランが、

「おぉーい、みんな。美少女が困っているじゃないか。静かにしろぉ!」と怒鳴ると教室が静かになった。

 よく見ると、黒髪の少女(ちなみに美少女とはこの少女のこと)は顔を赤らめて困っていた。

(というか、ホント美山先生役に立たないなぁ)

 などと考えていると、黒髪の少女が自己紹介を始めた。

「え、えっと。(かんなぎ)(あずさ)って言います。よろしくお願いします」

 そう言って顔を赤らめたまま頭を下げた。

「それでは、質問とかありますか?」

「はい、はーい」

 学ランが元気よく手を挙げる。

「え、えーと……巫さんを泣かせてしまいそうなので、別の人いませんか?」

 さすが去年一緒だっただけあって、学ランを指してはいけないことを理解していた。

 他の人が誕生日や血液型などベタなことを聞いてる中、佐々神は手を挙げた。

「お、佐々神期待してるぞ」と学ランが言っていたが無視した。

「……(かんなぎ)(しょう)って知ってるか?」

 教室は静かになった。

 佐々神は『巫』という苗字に聞き覚えがあった。

「え?…… なんで?……」

 ビックリしたように梓が尋ねてきた。

「おい、実は昔近所で仲良しでした、でラブコメか?」

「いや、昔助けてもらって今でも忘れません、でラブコメだろ」などと無駄な憶測をする男子(主に学ラン)がいたが無視した。

「いや、ここじゃ話さないほうがいいだろ?」

「あ……うん。じゃあ、始業式終わったら話せる?」

 梓がそう言うと痛い視線と共にまた教室が静かになった。

(いや、今のは全く悪くないだろ)と心の中で弁解するが誤解は解けなさそうだ。

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