表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/71

第二章~Chapter 2~EARTH-前編

 扉を開けると、中にはよくわからない機械がたくさん置いてあった。大きさは学校の教室四つほどつなげたくらいで、かなり広いと言っていいくらいのスペースがある。だが、たくさんの机や椅子、おそらく実験に使う機材やらで埋め尽くされていて、実際に人が入れるのは一〇〇人が限界だろう。

「これって何の部屋なんですか?」

 (あずさ)が尋ねると機嫌よさそうに答えた。

「ここはさっきの部屋の管理室よ。ここで操作すると遮蔽物(しゃへいぶつ)や的なんかが出てくるの」

 カトレアはニコニコ答える。

「へぇ」

 梓は興味ありげに辺りを見渡す。だが見えるのは素人にはよく分からないものばかり。

「ゴメンネ。お茶はないけど座って」

 カトレアは、キャスター付きの椅子を持ってきて佐々神(ささがみ)と梓に勧めた。

「じゃあ、まずEARTH(アース)について少し話そうかな」

 そう言って話を切り出した。

「知っていると思うけど、EARTHは『地球返還計画』を核に動いているわ。だけど、この計画の詳細は誰も分かっていない。ただ一つ分かることは、各地でテロ活動を行っていること」

 梓は神妙な顔つきで尋ねる。

「テロって具体的に何してるんですか? 計画の内容も分からないのに対立するなんておかしいんじゃないですか?」

 梓の言ってることはもっともだ。確かに、何するか分からない計画を潰そうなんておかしい。万が一にもその計画が善意である可能性も捨てきれない。

「んー、例えばね……最近、中東アジアとかでチラホラとテロ活動が起きてるでしょ? 政府に手榴弾投げ込んだり、アメリカに喧嘩売ったり。あれってたかが一組織に出来ると思う?」

 言われてみればそうだ。いくら国が気に食わないからと言ってテロを起こす。ましては、世界でダントツの軍事力を誇るアメリカに戦争を仕掛けるなんて、「気に食わない」や「自尊心」程度で出来ることじゃない。

「どう考えても無理。そしたらなぜテロが起きるか? バックに大きな何かがついている。そう考えるのが普通よね? そのバックについているのがEARTHって言われてるの。しかもただのテロじゃない。完全な宗教テロばかり。死ぬのが当たり前。死んだら天国に行ける。そんな危ない思想をもった奴らばっかり。どう考えてもこの思想改革を短時間で行えるのは魔術しかあり得ない。目的は知らないけど、危ない思想を持った奴らを集めて何か起こそうとしてる。それは間違いないの。だから、最悪『地球返還計画』は別としても、EARTHの行ってる魔術を用いたテロ行為は止めなくてはならない。そもそも神級魔術師(the fool)の翔君がテロ組織に属してる時点で相当危ないの」

 最近ニュースでやっているテロは、魔術に関係している? 佐々神には実感がわかなかった。

「それに……」

 カトレアはそれまで立っていたが、ようやく椅子に腰かけた。

「最近テロ活動が世界規模で起こるようになっているの。アメリカやロシア、中国、日本なんかも対象になってる」

「あれ? そんなニュースやってましたっけ?」

 梓が尋ねる。佐々神もそれには心当たりがなかった。

「やってるわよ。ていうか、アナタたちさっきテロに巻き込まれてたじゃない」

 カトレアがそこまで言っているがまだ理解できていない。梓は首を傾げる。

「魔獣。さっき佐々神君が倒してたでしょ? と言っても、普通は中級魔術師(judgement)にも簡単に倒せないんだけどねぇ」

 カトレアはため息をつく。

「ん? あれってテロなんですか?」

 梓は驚く。

「そうよ。あれは召喚魔術で呼び出された魔獣。しかも、あれは小さな地獄の番犬(リトルケルベロス)と言って、地獄の番犬(ケルベロス)の簡易版の術式だけど、地獄の番犬(ケルベロス)自体高度な魔術だから、いくら簡易版と言っても世界でも両手で数えられる程度しかあの術式を扱える魔術師はいない。しかも、それを世界中にばら撒くなて言ったら、魔術界でも使える人間は存在しないわ」

「? 待て、翔にも扱えないのか? 存在しないのになぜあんな大量にいるんだ?」

「あれは、E.W.B.Cを元に小さな地獄の番犬(リトルケルベロス)用に変換した術式だからよ」

 佐々神は聞いたことのない言葉に戸惑った。E.W.B.C? 全く聞いたことがない。

「E.W.B.Cとは、アース・ホワイト・ブラッド・セルの略なの。日本語に訳すと地球の白血球」

「地球の白血球ってなんだ?」

「そのままよ。白血球ってなんだか知ってる?」

 佐々神は脳味噌を振り絞る。

「確か、体内に入った雑菌なんかを殺すんだよな?」

 カトレアは微笑む。彼女はよく笑うが、意図がつかめるのはほとんどない。

「それも正解。でも、白血球にはもっと仕事があるの。それは、腫瘍細胞やいらなくなった細胞を排除すること。つまり、裏切り者や使えないものを排除する役目があるの。これを地球に当てはめたのがE.W.B.C」

 佐々神はようやく理解した。

 E.W.B.Cとは、地球に必要のないものや裏切り者を排除する。つまり、「人間」を排除すること。

 「人間」はもはや地球にとって害であると判断された。それもそうだ。「人間」がこの地球の食物連鎖の頂点となってから、地球は散々いじくり回された。現在に至っては、地球は地球温暖化(カゼ)という病気に侵されている。そのウィルスを排除しようと地球が白血球を出したのである。

 そこで佐々神にある疑問が浮かんだ。地球は生きている? そう、この現象がすべて本当なら地球は生物であることになる。それ以外では説明がつかない。

 佐々神は尋ねた。

「地球は生き物なのか?」

 カトレアはまた、何を考えているか分からない顔で笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ