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第二章~Chapter 2~魔術の原理-前編

 部屋に入ると外とは大違いだった。見た目は最先端の大手企業だが、中は古めかしい洋館をイメージさせた。赤い絨毯、高そうな机やソファ、壁にかかった絵画、どれもテレビの中でしか見ないようなものばかりだ。

「どうぞ、座って」

 そう言ってソファを指した。

 佐々神(ささがみ)達は言われた通りソファに腰掛ける。すると、タイミングを見計らったように執事が紅茶やコーヒーを運んできた。好きなものを選ぶように言われたので紅茶をいただくことにした。

「それで話ってなんだ?」

 一拍置いて、佐々神が話を切り出した。

「じゃあ、アタシたちの組織から話そうかな」

 紅茶をすすりながら笑みを浮かべた。カトレアはどうやら話を切り出す時に笑みを浮かべる癖があるらしい。

 そんな無駄な分析をしているとカトレアが話を始めた。

「まず、アタシたち会社を含めlast(ラスト)って言う教団に属してるの」

「え? 会社もなんですか?」

 (あずさ)が驚いて尋ねる。

「ええ、そうよ。で、アタシはそこのzero(ゼロ)の中のzero(ゼロ)/first(ファースト)ってとこに所属してるの。zeroは魔術の部署でさらにエリートだけ集めたのがzero/firstってわけ」

「ちょ、ちょっと待ってください。魔術ってなんですか? あの、マンガとかアニメとかに出てくる…」

 梓は戸惑った。さっきすごい体験をしたが魔術が出てくるとは思っていなかった。

「ああそっか。アイツは妹には魔術教えてないんだぁ」

 梓は「アイツ」に引っかかった。

「アイツってお兄ちゃんのことですか?」

 カトレアは少し笑って、

「ああゴメンね。アイツなんて言って。そう、(しょう)君のこと」

 カトレアは、翔君と訂正した。

「翔君はすごい魔術師だよ。それも世界で一、二を争うくらいで」

 複雑そうな顔をした梓はカトレアに尋ねる。

「で、そもそも魔術ってなんですか?」

 本題に戻した。カトレアはまた笑みを浮かべ、

「魔術ねぇ……。佐々神君は知ってるわよね? 魔術」

「まあ、一応な。使えないけど……」

「はあ? 使えない? そんなわけないでしょ。使えない人間なんているわけないんだから」

「いや、それ翔も言ってたけど、ホントに使えないんだ」

 カトレアは少し悩んだような顔をしたがすぐ笑顔に切り替えた。

「まぁいいわ。後でじっくり聞くから」

 じっくりかよ! と心の中でツッコむ。

「んー、梓ちゃんは音の正体って知ってる?」

 突然質問された梓は戸惑った。

「え……振動、ですか?」

 どうやらカトレアは満足いったらしく、嬉しそうに笑みを浮かべる。

「せーかい! じゃあ、光ってなんだか知ってる?」カトレアはまた質問を投げかける。

「光……。光って光じゃないんですか?」

 今度は、正解不正解どちらともとれる笑みを浮かべる。

「ブッブー、残念不正解」

 これまた楽しそうに言う。

「正解は波動です」

「波動って波のことですか?」

「まぁ大体正解。これは一八〇五年ごろヤングの実験って言う、スリットを使った実験で分かったの」

 そこで梓に疑問が浮かぶ。

「それって何の関係があるんですか?」

 佐々神も思っていたことを問いかける。

「じゃ聞くけど、音は振動とか光は波動とかって聞いたり見たりしただけで分かる?」

「いえ……分からないです」

 佐々神もそれに肯定する。

「まあ、殆どの人がそう答えるわね。魔術もそれと同じ。ただ、誰も分からなくて実験で証明できていないだけ」

 佐々神と梓は黙って話を聞く。

「魔術っていうのは魔力、場所によっては、『マナ』、『チャクラ』、『霊力』なんて様々な呼び方があるけど、これらは全部同じなの……まあ、とりあえず、魔力を使うのよ」

「魔力……」

 梓は理解しようと必死についていく。

「で、魔力っていうのはまだ発見されていない、未知のエネルギーってこと」

「未知のエネルギー?」

「そう、さっき言ったように、まだ音や光の正体が分からなかった時代と同じ。科学が追い付いていないだけ」

 カトレアは話を一区切りさせた。紅茶を一口すすり、話を再開する。

「で、未知のエネルギー。つまり、魔力は世界で最も変換率の高いエネルギーとされてるの」

「変換率って、電気を熱に変えたりする割合みたいなことか?」

 佐々神が尋ねると、

「そうそう。エネルギー保存の法則ってあるでしょ? 例えば、電気を蛍光灯の光に変えるとしましょう。一〇〇の電気があったとして、全部が全部光に変わるってわけじゃないの。実際光になるのは二、三〇で、残りは熱や音、あとは人間に見えない光になっちゃったりするの」

 佐々神はエネルギー保存の法則とかよくわからなかったが何となく理解する。一方梓は、すんなり理解したような顔をしている。

「それで、魔力っていうのは光に変えるとしたら変換率が八五%から九五%って言われてるの。どんなにいい蛍光灯を使ったって五〇%も行かないわよ」

 佐々神には凄さがいまいち理解できなかった。

 が、梓は何かに気づいた。

「ってことは、魔力で出した光なら触っても熱くないし、音も全くしないってことですよね?」

 そこで佐々神は理解する。音はまだしも触っても熱くないということに驚いた。蛍光灯はまだ触れるレベルだが、ちょっと前の電球なんて火傷するくらい熱くなるのだってある。それが全くなくなるということが凄いということを、物理学を知らない佐々神でも十分理解できた。

「梓ちゃんは賢いわね」

 カトレアは満足そうに笑う。

「そこで本題にもどるわ。魔術というのは魔力を使って別のエネルギーに変換する行為を言うの」

 梓はそこで大まかなことを理解した。つまり、変換率の高いエネルギー=魔力をマンガやアニメのように炎に変えたり雷に変えたりするということだ。

 そこで疑問が浮かんだ。

「魔力で魔術が使えるのは分かりました。でも、魔力ってどこにあるんですか?」

「ああ、それねぇ……。説明が面倒だし、実際見たほうがいいから場所を移しましょう」

 そう言ってカトレアは席を立った。

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