第二章~Chapter 2~良識派
佐々神達はカトレアに連れられて車に乗った。その車は真っ黒でとても高そうだ。
カトレアが助手席、佐々神と梓は後部座席に乗っている。運転席にはドライバーの男性が乗っていた。
しばらく車内には沈黙が続いた。梓は気まずくなったのか、カトレアに質問した。
「あの……なんで亮平君のこと知ってるんですか?」
ちょうど佐々神も聞こうとしていた。
「さっきも言ったと思うけどアタシは情報屋のシャチョーなの。だから、有名な佐々神君程度なら知ってるってわけ」
「え? 亮平君有名なの?」
「まぁ、昔いろいろあってね。有名と言っても裏の話。これ以上は本人が言いたくなさそうだから言わないけど……」
佐々神はこれには思い当たる節があった。だから、これ以上梓に知ってほしくなかった。
「……」
梓は黙り込む。
三〇分ほど車で走ると大きなビルの地下駐車場に車が入って行った。どうやら、ここが目的地らしい。
「あ、ここアタシの会社ね」
そうカトレアが説明をする。
情報屋というのはこんなデカいのか? と思ったが、そもそも佐々神の過去も力も知っている時点で普通の会社ではないことに気が付く。
「はい、着いたから降りるわよぉ」
そう言ってカトレアは車から降りる。佐々神達もそれに続いて降りていく。
「こっちが裏口だからこっから入ってね。VIPでご招待♪」
楽しそうに言うと指紋認証で扉のロックを解除する。
ベタな機械音と共に扉が開く。カトレアが入ってくのでそれに付いていく。エレベーターホールに着くとカトレアは、
「あ、アンタ戻ってていいわよ」
運転手はそれに従い、来た道を戻っていく。
それとは対称にカトレアたちはそのままエレベーターに乗る。
「なんか冷たいな」
「あら、アタシは運転手さんの為を思って言ってるの。関係のない人間をこちらの世界に巻き込んだら可哀想でしょ?」
「……梓はどうなんだ?」
佐々神は感情を抑えながら言う。
「だって、アイツの妹でしょ? 関係ないとは言わせないわよ」
顔は笑っているがとてつもない威圧感を感じる。だが、それ以上に佐々神は腹が立っていた。
「妹だからってかんけぇねーだろーが! ふざけんじゃねぇ。これ以上わけわかんない世界に巻き込むな!」
気が付くと怒鳴っていた。だがカトレアは、それを気にもせずに笑っていた。
「ふふ。梓ちゃんに優しいのね」
馬鹿にしたように言う。
「でも、勘違いしてもらっては困るわ。アタシ達がしてることは保護なの」
「保……護だと?」
「ええ。あの教団に対抗する教団がアタシ達みたいに良識派だとは思わないでね。中には梓ちゃんを人質に取ろうって連中もいるのよ?」
それを聞いた佐々神は何も言い返せなくなった。
目的の階に着いたエレベーターを降り、通路を左に進む。
「続きは部屋に入ってからね♪」
そう言って一層豪華な部屋の扉を開けた。