女帝
私は下女を部屋に呼んだ。靴下を履くためだけに。ひんやりと涼しい石造りの王室で1人ベッドに寝転び彼女が来るのを待つ。レースのカーテンの向こうは外と呼ばれる世界だ。私には全く関係が無い。
靴下を履かせて下女の額にキスをしてやると私はゲームの準備に取り掛かる。今日は隣の国を撃ち落として領土を広げてみたい。
私は女帝としてこの国を守り作る。毎日毎日戦争ゲームを取り仕切った。まあ涼しい部屋でパソコンを叩くだけだ。ゲームオーバーしても何も感じない。上手く行くと花火を上げて一仕事終える。達成感はまあまあある。
外に出る用の無い私に靴はいらなかったが単なる美術のコレクションに靴屋を呼ぶときもある。彼は丁寧に私の歩かない柔な足を両手でくるんだ。
その日はゲームに負けた。
この国は元々の領地が広く人口も多く自然と気候に恵まれた豊かな国だ。近隣の諸外国もこの国のようになりたければ戦争など起こさずに我が領土に身を売ればいいだけだ。頭の硬い年寄り軍人たちは女帝になんぞ心を売れずいつもいつも失ってばかりいる。強い私に国民は大いにひれ伏す。勿論無謀な賭けもしているので暗殺を狙う者もおり全てはヒロインの宿命だろう。
一滴の返り血も浴びずに私は何人殺してきただろう。ゲームという快楽の中で私以外は私のゲームのコマの価値しかない。
しかし、あの靴屋‥忘れ難い感触が全身に走っていく。たかが足を包まれただけなのに。
明日は新しい国へ着手する。‥兵は足りているだろうか。老師からあの街の若者全てあの靴屋も配備しなくてはならないと助言された。
悪寒が背中を震わせた。こんな感じは初めてだ。
初めて女帝として遣わされた身を恨んだ。
靴屋を呼ぶと丁寧に彼は首を垂れて従順だった。
私は彼と私の銃弾も通らないような頑丈なブーツを2つ作るように命じた。このゲームは捨てることにした。
私たちはブーツを履き変装して亡命する。私の命令一つで彼はうなづいてくれた。この先この心を手に入れるまでは死ねない。不感症の指に色が灯り私のゲーム脳もリセットされ
明日は人間として初めて歩く日だ。
読んで頂きありがとうございます。作風を広げてみれるか試しました。




