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異世界トラック転生便~オレたちがやりました~ 第3夜

異世界トラック転生便~オレたちがやりました~ 第3夜です

「結局やっぱり転生してチート能力もらってあまい夢を見ようなんてムリな話なんですかね……」

 大きなため息をつきながらササキは行った。明らかに先ほどよりもテンションが落ちている。


 俺たちは異世界転生者をはねることで、異世界に送りだす業者「異世界トラック転生便」のドライバーだ。異世界転生したヤツはみんなハーレムでウハウハな生活を送っているように見える。そんななか、次の転生対象者の条件が「トラックドライバー」なんて案件がきたら、自ら名乗り出ないほうがおかしいというものだろう。しかし実際にはかなりのブラック案件ということで、危うく早まってハネてしまわなくてよかったと言うほかない。


「まあそんなに落ちこむなよ。仮に転生できるってなったとしても、お前だって異世界に行ってもまたドライバーなんてやりたくないだろ?」

「……それは、そうすね」

「まあ今回は運がなかったんだよ。そもそも、ほら、最近はいろんなタイプの転生者がいるよな?どうなんだ?お前、例えばこんな能力で、こんなことしたいみたいなイメージとかないのか?」

 ササキはくるりとこちらを振りむく。その目は「よくぞ聞いてくれました」と言わんばかりに光っている。ああ、これはかなり具体的なイメージを持ってるな。夜な夜な妄想をつみかさねてきたんだろう。オタク特有のかゆいところを刺激してしまったようだ。

「よくぞ聞いてくれました。まず能力ですけど、やっぱり男として生まれた以上は無双したいんすよねー」

「となるとバトル系か。意外とオーソドックスだな」

「こればっかりはやっぱ捨てられないなってなったんですよ。最近はへんなスキルで成りあがるやつばっかりですけど、正直ここはど本命の攻撃スキルとかでお願いしたいっすね。先輩だってあるでしょ?鈴蘭高校はいって頂点目指したかったなとか。――思ったことないすか?」

「その高校のことは良く知らないけれど、まあわかるよ。紙きれのようにモンスターをばったばったと倒せるのはきっと爽快だろうな。敵を簡単に無双できればたぶん金に困ることもないだろうし……」

「そうなんですよ!強さは何事も解決してくれるんですよ。王道には王道なりの理由があるってことですよ」

 食い気味にササキは返してきた。しかしそんな体育会系な感じとは正直思っていなかった。

「それで……あっちのほうは?」

「あっちっていうと……やっぱり女の話ですよね?そりゃあまあね、それも異世界の醍醐味っていうか、むしろ本道っていうか……。ま、ハーレムはしょーじき欲しいですよね。男の夢ですから。お姉さんから妹系から異種族までも各種取りそろえて、みんなまとめてかかってこいってもんですよ」

 ササキはだらしない顔をしながら答えた。ササキが俺のもとでこの仕事をはじめてから数年がたつが、その間、特定の相手がいたことはないはずだ。それなりに欲求もたまっているのだろう。異世界に転生すればそんな生活を送ることは夢物語ではないのだから、そのくらい願っても無理はないだろう。


「いろいろ想像力豊かなところ悪いんだけど……」


 見つめるモニターから目をはずすこともなく口をはさんできたのはワタリさんだ。


「ここ最近は、実際の人間を異世界に飛ばして、それをモニターしてコンテンツにするリアル系の異世界ものが流行ってるでしょ?」

「ええ、そうですね。だからこうして俺たちの仕事があるわけですし」

「やっぱり想像だけだと限界があるからね。まったく見たことも聞いたこともない世界に、作られたキャラクターじゃない、実際に生きた人格をもった人間が直面するからこそ面白さがでる。言ってみれば実際に命をかけたリアリティショーなんだから、ウケるのもわかるわよね。でもね……」


 ワタリさんはそこで、ふとモニターから目をはずしてこちらを見た。


「たぶんね――、2000人くらいはいるのよ」

「なにがですか?」

「1年間で、異世界に転生させられる人って」

「……え?2000人?それはちょっとその、多くないすか?うちでやってるのって、多くてもひと月で数人とかっすよね?それに、異世界の作品ってそもそもそんなに出てないっすよね?」


 ササキは不安な気持ちを押し殺すように質問を並べていた。


「うちは大きな業者じゃないし、もっと大きいとことか零細も合わせると結構同業他社っているのよ。その辺をあわせるとなんだかんだ年に2000人くらいは異世界に送ってる計算になるの。――で、流動的ではあるけど、創作系を除いたリアル系の作品は多くても年間50作品くらいじゃないかしら」


 首のうしろにヒヤッとした風がながれた気がした。ワタリさんは続ける。


「もうひとつ情報あげる。異世界転生された人で、こっちに返される人もいるの。召喚主がそのまま同じ術式を使って戻してくれるケースもあるし、神様だのみにすることもある。あとは何度も使われる人気の異世界であれば向こうにエージェント契約してる人がいる場合もあるわね」

「こっちでいう僕らみたいな感じですね」

「そうね。手間をかけて異世界に行ってもらったけれど、そこでダメになっちゃったり、まったく思うようには動いてくれなくて、物語にならない場合もあるの。そういうときにトラックではねるわけにはいかないけど、その世界ごとの手段でこっちに戻してもらうってわけ」

「へぇ……まあでもそりゃそうっすよね。全部うまくいって作品になるなんてことないっすもね」

「ただね……」

「ただ……?」


 ワタリさんは再びモニターに顔を戻しながら続けた。


「そうやって戻される人は、だいたい100人くらいなのよね」

「はあ……100人ですか。……ん?ちょっと待ってください。そもそも異世界に送られるのが2000人くらいいて、無事作品になるのが50人くらい。それで……うまくいかなくて、こっちに戻される人が100人くらい。となると、その差の1850人は……?」


 ワタリさんは立てた親指を横にして、自らの首を左から右にかききった。


「詳細は明かされないことも多いですけど、まぁ、ほぼお亡くなりになってるかと。だから仮に選ばれて異世界にいけたとしても、こっちに戻れればまだましで、9割くらいはかなりキツイ命運を迎えてるってことね。データはウソつかないから、人生設計は慎重にしましょうね」


 俺たちは突きつけられた現実を受け入れることができず、なんの反応もすることができなかった。

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