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女神に一度願った願いは例え噛んだとしても変えられない!!  作者: 細川波人
四章 エルフ王国・セザレイン
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6 変態と冒険者の境界線


 窓枠から覗く晴れ渡る青空。それを鉢の中から眺めるようにユグドラシルの苗木の葉が微かに揺れた。


「ご飯ができたよー!」


 快活なアリシアの声と共に、料理が運ばれてきた。


 あー。なんて平和な朝なんだろう。


 穏やかな日差し。適度な気温。開いた窓から吹き込む柔らかな風。


 ――そして笑顔で料理を持ってくるアリシア……と。


 俺はアリシアの笑顔に応えるようににっこりと笑う。そして、同時に思うのだ。


 あー。入ってますねー。毒。


 俺は取り敢えずフォークを持って考える。


 さて。どうするか。最近の経験でわかってきたんだが、アリシアの笑みには意味がある。つまり、毒が入っているのだ。まあ、一応毒自体は俺の『剛健』の成長に必要な披ダメージを与えてくれるありがたい存在ではある。でもだ。でもなんだ! 


「美味しい食事が食べたい……」


 そして、安心してご飯を食べたい!! 


 はぁ。と俺はため息をついた。すると、俺の心情を読んだかのように、アリシアは席に着いている俺の目の前に顔を出す。


「ほーら。お待たせだよ」


「おう。……おう」


 料理を見て俺のテンションはさらに下がる。赤いのだ。いや、赤い食材は色々あるのだから、それだけで食欲が失せるわけではない。むしろ別で、朝食としてはやけに刺激的だったからだ。


 真っ赤に染められた肉。それはまるで他の「何か」の味を隠そうとしているように見える。


「どうしたんだい?」


「他の料理ある?」


「人が作ってくれたものに対して失礼だね。これだけに決まってるじゃないか」


「いや、だってさ、これ……ね?」


 すると、奥の部屋から猫耳の少女が現れた。普段の私服の上に着ているのは、使い込まれたような、見慣れない赤いエプロンだった。


「あれ? レフィ? エプロン?」


「はい。今日は私が作ってみました。でも、私が一人で料理するのは、ちょっと怖いというか、危ないというかで、付き添いをアリシアさんにお願いしていたんです」


「えっ! レフィが作ったの?」


「はい。一から十まで作りました」


 レフィは自分の席とアリシアの席に同じ料理を置いた。


 ん? ちょっと待てよ。レフィが作った? となるとアリシアが毒を盛ったとは考えにくい。レフィが作ったことで割れた食器の破片等が混ざる可能性は出てきたけれど、毒はない。これは見かけ以上に安全で美味しい食事なのかもしれない。


「勝った」


 俺はニヤリと笑う。すると、アリシアとレフィもにっこりと笑う。あー。なんと気持ちの良い朝なんだろう。


「さーて、じゃあ。いただきます!」


 そして、俺はフォークを肉に突き立てようと……。と……。


 ――待てよ。


 何でアリシアがこんなに御機嫌なんだ? いや、まあ、アリシアの機嫌が良いことなんていつもだけど、じゃあ何でこっちを観察するように目を輝かせているんだ? まさか、いや、よく考えろ。この料理はアリシアが持ってきた。そして、残り二つはレフィが持ってきている。つまり、これは製作過程で毒を盛ったのではなく、後から盛っている可能性がある。つまり、ここで油断して、この皿の料理を口にしてはいけない。


「えい」


「ん? どうしたんだい?」


 俺はアリシアの目の前に置かれた皿と自分の皿とを交換した。


「いやー。レフィが作ってくれた料理だから、折角だし、レフィが持ってきた料理の方が美味しく感じるかなって」


「あっ、アイトさん。そんな……、ちょっと恥ずかしいです」


「いやいや、やっぱり料理は美味しくいただきたいからな。なっ、アリシア」


 俺は屈託ない笑みをアリシアに向けた。すると、何かが不満だったのか、アリシアは頬をピクリと動かした。


 ――勝った。


 確信だ。今日の対決は俺の勝ちだ。さぁ、思う存分味わわせてもらうぞ。策士アリシア。


 俺は今度こそ肉を口に運び入れる。


「おー。うん。辛いけど、美味しいな。いやー、安心できる美味しさだ」


「そうですか! 良かったです! 初めての成功した料理です」


 レフィが嬉しそうに耳をユラユラと揺らす。何だかんだで、『破壊者』によってまともに料理ができなかったレフィの大事な一歩なのだ。俺としても、素直に嬉しい。


「あー。でも、ちょっと辛いな」


「はい。お水」


「おー。気が利くなアリシア。……っ!」


 アリシアから差し出されたコップを前に手が止まる。


 あっぶな! この水は駄目だ。間違いなくメインルートが失敗して、別のルートから毒を入れにきている。普通の流れで、普通の人間であれば毒をもろに食らっているだろう。でも、俺は違う。もう何度も毒を盛られたのだ。学習しないほど俺も馬鹿じゃない。


 よし。今日は何でかわからないけど、絶好調だ。頭の回りも朝から最高だ。


「いや、自分でついでこひょう……こひょう?」


 あれ? 口が……。舌が回らない。


 あるはずがないと思っていたそれが頭に浮かび、焦燥で冷や汗が浮かぶ。


「ましゃか!?」


 すると、アリシアの口が不気味に開かれる。


「フッフッ。アッハッハッ! 中々面白い反応が見れてよかったよ。アイト君!」


 勝ち誇ったように高らかに笑うアリシア。それに、何が起きているか理解できずにきょとんと目を丸くするレフィと、確信して悔しがる俺。


「料理は警戒をそちらに向けさせるための布石。私が料理や水を差し出したのも布石なのさ。油断したねアイト。勝負はその席について、無警戒にフォークを持った所でついていたのさ」


「しょんにゃ! ふぉーきゅに!」


「そう! フォークさ!」


 やられた! 最初からだったんだ。フォークに毒を塗られていたのだ。しかも経口摂取の毒ではない。手に持った瞬間に皮膚から染み込む毒だったのだ。そして、この毒は俺にいつも以上の思考力を持たせ、安全だと判断したぐらいに、本当の効果が発動すると言う遅効性の毒。


「どうだい? 普段よりも頭が回った気分は? 思考と体の動きに差を生む毒。頭が良くなったと錯覚させ、相手を術中にはめるから、サッカ君と名付けよう!」


「ひひゃみぁ――!!」


「ハッハッハッ!!」


 まともに動かない体で抵抗する俺と、馬鹿みたいに朝から騒ぐアリシア。そして、一人困ったように耳を折り畳みながらご飯を食べるレフィ。


 くそっ! 次こそは回避して見せるからなぁぁ!! 


 そんな強い覚悟と共に、俺は忙しい朝を向かえるのだった。



 ブラウンの落ち着いた街並みを歩く。少し前までは何ともない事だったのだが、最近はその程度の動きでさえも気を遣わなくてはならなくなっていた。何故なら……


「おっ! アイトだ!」

「英雄だー!」

「今度は何しに行くんだろう?」

「意外とアイトさんって、地味に見えてそこはかとなく美形に見えなくもないような顔立ちをしているかもしれないわ」


 ……最後の奴は許さない。


 ともあれ、これが今の俺たちだ。一つの街を魔人から守り抜いた英雄。特に俺に関しては話に尾ひれがつきまくって、ロゼとミリアの魔人二人を一人で倒したなどと言われ始めている。


「それだけだと良いんだけど、動きにくいんだよ。居心地が悪い」


「だねぇ。どうする? 弱小ステータスプレート見せつけて絶句させる?」


「……あり……か?」


 流石になしだ。普段なら見せることに抵抗はないけれど、今は『ユグドラシルの加護(子)』がある。特級冒険者のハルに『ユグドラシルの加護(子)』を見せる危険性について、忠告されているのに、態々スキルを晒すような真似はしない。


「少しの我慢ですよ。前よりは人は減っていますから」


「まあ、そうか。時間が解決してくれるか」


 そんな風に人目に体力を削られながら、狭い路地に入る。たまに、素行の悪そうな連中と目が合うが、信じられないことに逃げていく。ついに俺が恐れられる時代が来たようだ。


 そして、目的地でもあった、知る人ぞ知る年期のある店の前に佇んだ。


「さて。行くか。にしても久々だなぁ」


「元気ですかねぇ」


「私は初めてだからよろしく頼むんだよ。アイト」


 俺たち三人は「スミス・レミス・ラミス」と書かれた看板を通りすぎて扉を開いた。


「お邪魔します」


「ん? おお!! アイトかっ!」


「そう。久し振り。レミス」


 壁に陳列された武具を整えていたのは、ドワーフであり、この店の店主でもあるレミスだ。初めての剣を作ってくれた、言わば俺の活躍の影の立役者。もし、俺がこのショートソードではなく、他の剣を使っていたらここまでの活躍はなかった。


 それを本人も理解しているのか、レミスは普段よりも一段とふんぞり返って椅子に座った。


「話は聞いたぞ。だが、俺の剣はそこまで有名にはなってはいねぇようだな」

 

「それはこの剣が使い手を選ぶからだろうな。まっ、名を広めるつもりならもっと目立つ所に店を構えるところからだ」


 まあでも、この場所の方が俺的には好きだけど。


 落ち着く広さと変に飾りっ気のない店内。野暮ったいドワーフの店主。だから、俺みたいなのが心置きなく店に入れる。


「おまえさんに言われたくはない! でっ! 何の用だ? そっちのは初めてだろ。レフィもおるし」


「久し振りです。レミスさん。今日もメンテナンスお願いします」


「はいはい。わかった。わかった」


 早速、愛用の薄い金色のハンマーをレミスに渡すレフィ。それを重そうに運ぶレミスに、俺は自分の本題を話す。


「装備作ってほしいんだけど」


「ん? 装備? おまえさん体は硬いんじゃなかったか?」


「まあな。でも、今回学んだんだけど、体は守れても服は守れない。体力じゃなくて、俺は人間性を守りたい」


「なるほどな。女所帯もたいへんじゃな」 

  

 そう。大変なのだ。女所帯だからではない。自身の印象を守るのに大変なのだ。


 これまで、服に関してはさほど気にしてこなかった。けれど、貴族街での戦いでは何度も服が破られ、何度も着替えが必要となった。今回は着替えるだけの時間が取れたからよかったものの、もし火の魔法などで一瞬で焼かれれば、傷一つない全裸を見せつけることとなる。それは流石に困る。折角英雄だのなんだのと言われているのに、次は変態と叫ばれるはめになってしまう。


「うーん。となるとじゃな。頑丈な服。いや、装備が欲しいということじゃな」


「まあ、そんなとこ。でも、俺自体の筋力とか敏捷は低いから……」


「なるべく戦闘に差し支えない軽度な装備じゃな」


「そういうこと」


 ガチガチの鎧などを作られれば、貞操どうこうの前に自分を守れなくなってしまう。動きにくいし、防御力の足しにもならない重装備は、俺には扱えない。


「できそう?」


「難しい話じゃな。強度を求めれば、もちろん金属を使わなければいかん。そうなれば自然と重さは増える。だからと言って、他の今ある素材で、そのレベルは難しい」


「なるほどな。ちなみに素材ってどんなのがいるの?」


「そうじゃな。切れない繊維類。巨大蜘蛛の糸や、ウールインコの羽等が最適じゃ」


「……流石に難しそうだな」


 素材の希少性もなのだが、手に入れるのが難しい。値段は高価で、今は買えない。だからといって冒険者の力を駆使して手に入れようとしても、糸のせいで俺の防御力があまり機能しない巨大蜘蛛と、防御力と敏捷に長けたウールインコの討伐は、俺たちには難しすぎる。


「ちなみにこれで代用できたりはしない?」


 俺はダメ元で、空間ポーチの中から布と瓶を取り出した。


 これはシャフレイから出る際に、ウェードから貰ったものだ。片方はセシアの倒したS級魔物の纏っていた布で、もう片方はS級魔物となったスライムの粘液だ。


「あー。あとこれもある」


 そして、追加でS級魔物の骨をテーブルに置いた。すると、レミスは、物珍しそうに目を細め、ポケットからレンズを取り出して、確認し始めた。


「これをどこで手に入れた?」


「どこって侵略戦で。布と骨の方はセシアさんから」


「うーむ」


 レミスはレンズをテーブルに置いた。


「まずこの布の方じゃ。これはS級魔獣の陽光獅子の鬣で編みこまれたものじゃ。鋼のような強度。そして、暑い場所では繊維が細くなり、寒い場所では繊維が太くなると言う、寒暖どちらにも対応ができる素材だ」


「うん? 聞いてる感じ良さげだな」


「これ以上ない素材とでも言えばわかりやすいか? 要望の装備を作るのに、これ一つで事足りるくらいじゃ」


 そして、次はスライムの入った瓶へと指が向いた。


「そして、これは」


「これは?」


「スライムじゃな。純度百のスライム」


 がっくり。


 俺たち三人は肩を落とした。


 おかしいな。あのスームってスライムには結構苦戦したのに、結局ただのスライムだったのか? どういうことなんだ。


「ただ……」 


 と、こちらの落胆した様子を見てから、勿体ぶるようにレミスが言った。落胆した俺たちが再び目を輝かせたのを、レミスは悪戯な目で見つめながら指を立てる。


「含有しているマナの濃度が異常じゃな。あり得ないと言ってもいい」


「ん? どういうこと?」


「普通はここまでのマナをスライムの粘液に含むことはできない。スライムは食べた物によって成長が大きく変化するのは知っておるな?」


「あー」


 思い出されるのはトラウマだ。普通のスライムの核を貫けなくて、飲み込まれそうになった所に、アリシアが特性の毒パンチを繰り出した。けれど、スライムに毒耐性があって、結局二人とも溺れかけたと言うやつだ。


 俺とアリシアは共に苦い顔を浮かべた。


「まぁいいや。えーと? てことは、その素材の元となったスームが、マナを多く含む食べ物を食べたって事だよな。高純度の魔石とか」


「うーん。そうとも言えんのだ。アイト。お前は肉を食べれば、その分体に同じ量の肉が付くか?」


「いや、付いてたら俺は人生ここまで苦労してない」


「あっ。悪かった」


 ついつい棘が出てしまった。けれど、まあ、見ればわかるだろと皮肉のように言いたかった。


 レミスはふんだんに蓄えた黒いアゴヒゲを撫で付けると、気を取り直したように話を戻す。


「つまり、言いたいのはだな、このスライムは特殊ということだ。親和性の高い食べ物を食べ続けてもそうそう可能ではない」


「ごめん。あんまり理解できなかった」


「つまり、体に馴染みやすい食べ物を食べても、こんな体にはならないから珍しいって事だよね?」


「そっちの女性はアイトよりは話はわかるな。見習えよー。アイト」


「……ここだけは見習えるけどな。ここだけは」


 朝のやり取りが残っているので、どうにも前向きに検討する気にはなれなかった。


「まあ、そこは置いといて」


 本題はスライムの話だ。珍しいってことは良いものなんだろう。


「結構特殊なスライムだったからあり得る話なんだろうな。本人はスライムって呼ばれるのを嫌ってる風だったし。進化した奴だったのかもな」


「まあ、あり得る。その進化の過程が不快じゃがな」


「ん? 不快って……なんか含みがあるな」


「こういった形になる方法は一つ。さっきから言っておるように、親和性が高い食べ物を食べ続けることじゃ。この場合、最も親和性が高いのは、同族であるスライムじゃな」


「はっ? てことは、スームはスライムを食べて成長したのか?」


 信じられない話だった。スームは同種とも呼べるスライムへの侮辱で怒りを露にしていた。それなのに、同種、言わば仲間を食らうだろうか。


「……なんか違う気がする」


 あのスームが同族を食らうとは思えない。スライムを侮辱されて怒っていたあのスームだから。


 そこで、思い出したのは反魔王派の動きだった。スミュレバレーで出会ったチャックは、確か魔獣や魔物の成長についての研究もしていた。その時は、サラマンダーに冒険者を食べさせるという方法で、魔獣を成長させていた。そう考えると、スームの共食いは自分の意思じゃない可能性も考えられる。


「――反魔王派が戦力を得るためにスライムを共食いさせたんだろうな」


 スームがスライムと呼ばれたくなかった理由。それが、共食いの意識を感じたくなかったからだったとしたら? 自分は別の種だと自分に言い聞かせて理性を保つためだったとしたら? 旺盛な食欲も、そのスライムを食べたことを紛らわすためだったとしたら? 


「やっぱり、アイツとはもっと話しとけばよかったな」


 犠牲の上に立っていたスーム。その考えは今となってはわからないが、反魔王派が魔物や魔獣の進化の研究をしていたところから、その犠牲が故意ではなかったような気がしてきたのだ。


 装備を注文しにきただけなのに、気持ちは徐々に重くなっていった。けれど、そこで肩を叩いてくれたのは、背後の二人だった。


「そうだね。だったら次はちゃんと話せるように頑張ろう。同じ場面でね」

「私もアリシアさんと同じ気持ちです。今度は私たちも一緒にいますから、その時は仲良くできるようにしてみましょう!」


 俺の後悔をアリシアとレフィが慰めてくれる。ホントにこの二人が後ろにいてくれると、気持ちが前向きになれる。


 はー。やっぱり、俺はまだ後ろ向きな性格は治ってないんだな。まだ、いっときは二人から離れられないな。


「よし! ありがと。二人とも。で、結局話の筋がずれまくったな。レミス。なんとなく凄さはわかったんだけど、使い道は?」


「ふん。良い仲間に出会ったもんじゃな。……さっきのスライムの粘液の話だな。これだけの代物であれば、装備の加工に用いれる。さっきの魔物の骨とこのスライムの粘液で加工すれば、物理攻撃だけでなく、魔法に対しても高い耐久性が生まれる。……硬いおまえには実感しづらいだろうがなっ」


「宝の持ち腐れってこと?」


「そこまでは言わんが、全裸にならないために着るにしては勿体ないだけだ。いまいちこの店の名が広まらんしなぁ」


「おい! 大事だろ! あんたの武器を使ってる奴が、魔人を倒した冒険者か変態かの分け目なんだぞ! いいのか? 全裸冒険者の行きつけ武器職人って呼ばれても!」


「なっ!? 死活問題じゃー!」


 そう。これは俺の、ひいてはこの街の未来に関わる重大な案件なのだ。目立たないだろうが、大事なのだ。


「わかった。わかった。それなりに高くつくが任されよう。上と下。それぞれ一着ずつじゃな」


「ああ。頼んだ」


 俺はレミスの手をがっちり掴む。


「悪いが一週間以上はかかるぞ」


「うーん。まあ、仕方ないか。計画には間に合うからな」


 一週間となれば、特級会議には間に合わない。けれど、そこは特段問題はない。服装が少し地味になるだけだ。その後の計画に間に合いさえすればいい。


 そんな風に、なんだかんだ思うところはあったが、今日の目標の装備作りは一段落付いた。


 着実に準備が整っていく。特級会議まで残りの期限は一週間。いや、移動も考えれば五日程度だろうか。


 共に戦った背中と赤い髪が頭に浮かぶ。


「必ず助け出してみせるぞ。ロゼ」 


 そう俺は自分の覚悟を声に出して、一週間後の特級会議に向けて、備えるのだった。


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