残念な子犬(15分)
残念だが、残念ないきものとか残念なひととかいう言い方は好きでない。
残念というのは主観的な感想に過ぎないし、そうである以上、この犬が残念かどうかは犬自身で決めることだし、残念だって生きてるのだし、こういう風潮は『残念の概念』さんだって残念に思ってると思いますよ。主観的な感想ですけど。
と、このややこしい性格の犬は思った。というか私のことだが。
だいたいどうして私が残念だとかいう枕詞をつけられなきゃいけないか理解できない。
子犬ちゃんって呼んでくれたじゃない。私そうしたわ。靴底の裏だってそうしろって言われたからなめてきれいにしたわ。
犬だけど、犬にだってプライドはあるけど、あなたが好きだからそうしたわ。
でも違うんだって。
そういうなめる系のことはただのお遊びで、違くて、ほんとにしてほしかったのは繁忙期でも残業しないで家に帰って家事をするとか、あなたのお母さんと仲良くやるとか、私が全然悪くないって二人ともわかってるときでも癇癪を起こしたあなたに膝をついて謝るとかそういうことだったんだって。
でも、私は犬だけど、犬だって、犬にだってプライドはあるから、そういうことはできなかった。
子犬は残念に思ってわんわん泣いた。