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僕はビンボー道を極めて幸せになりました

 食事と仕事の関係について、私的体験を交えて話そう。

 フィリピンで海外ボランティアをやってきた時、私はルソン島北部の山岳地帯の州政府に派遣されていた。フィリピンの行政単位に州があり、州政府は日本で言えば、東京都庁や大阪府庁といったところのお役所である。

 そんなフィリピンの州政府の職場には、昼休みになると子供たちがやってくる。小学校の午前中の授業が終わり、役所に勤める職員たち(子供たちのお母さん)のところにきて、一緒に昼ご飯を食べるのである。フィリピンは男女共同参画が進んでいる国の一つであり、役所のトップや職員の多くは女性である。いや、誤解を恐れずに言えば、フィリピ人の男性は余り働かない。フィリピンに長期滞在して現場を直視してきた私の偽らざる印象である。市街地にある州政府の近くに学校や病院、裁判所などが集積しており、小学校から州政府の庁舎まで徒歩五分と近く、子供たちはお母さんに気軽に会えるのだ。

 また、州政府の就業時間が終わる午後五時前になると、小学校の子供たちが州庁舎のオフィスまでやってきて、州政府の職員たち(子供たちのお母さん)が退勤するのを待っている。これは日常茶飯事の光景である。少なくとも、私が派遣された州政府の取決めでは、就業時間内に職員の子供たちがオフィスに入ることは禁止となっていたが、職員間の暗黙の了解ということもあり、子供がオフィスで待機していた。

 東京都庁や大阪府庁の就業時間中に、職員の子供たちがやってきて、オフィスに備え付けてあるテレビで漫画を見たり、学校の宿題をやったりすることは日本ではあり得ない光景だろう。

 ここにビンボー道を極めるヒントがある。仕事と衣食住を近接させてしまうのだ。州政府のオフィスは仕事場であると同時に、子供の放課後児童クラブみたいな役割も担っている。日本では仕事は仕事、教育は教育、家事は家事といった感じで、仕事や役割をきめ細かく分けて、自分の手に負えない部分はお金を払ってアウトソーシングすることが多い。途上国のフィリピンのように、お金がなく資源の乏しい国では、とにかくみんなで創意工夫して、身近な課題や問題を解決しようとする姿勢が前面に出る。

 さらに故障した自動車やバイクを直すのも自分。ニワトリを絞めるのも自分。その辺を徘徊している野原犬を捕まえて爆殺し、竹串を頭から肛門まで貫通させて丸焼きにするのも自分…。日本の子供たちの憧れの仕事であるユーチューバーにも相通じるが、結局のところ、自らが「生産者」に回ることで様々なスキルや能力、知己を獲得していくプロセスこそがビンボー道でもある。

 よそ様に頼ることが減れば減るほど、人生のコストは下がっていく。ビンボー道のマスターは、しばしば何でも屋である。

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