僕はビンボー道を極めて幸せになりました
六
一般的に飲食店では値段の高い料理は美味しい(ことが多い)。値段の高い料理は、よい食材を使っているし、料理人の腕もピカイチだ。店内でのスタッフの接客態度もよい。
では、値段の安い料理はどうか。ここにビンボー道の王道が隠されている。一般的には安い料理は安い食材でサクッと作られるものが多く、必ずしも太鼓判が押せるほどの美味しさとは言えない。
安くて美味しい飲食店を探す…。これがなかなか難しいのだ。反対に高くて美味しい飲食店を探す。これは簡単である。以前、私は大阪の天王寺にある激安ラーメン店(ラーメン一杯二百円未満で販売)で激安ラーメンを食べたことがあるが、予想通り「安かろう、まずかろう」であった。外食するときに安くてうまい店を探すには、やはり安価で大量に食材が供給され、かつ美味しいという旬の食材に注目する必要があるし、その旬の食材そのままの味を十二分に引き立てて料理できる、つまり食材の味を十分に発揮させる「薄味」の極意を知り尽くしたプロフェッショナルな料理人を見つける必要も出てくる。
ビンボー道とは、家で安いカップラーメンを食べ続けたり、飲食店でコーヒー一杯だけで席を朝から晩まで牛耳ったりするという、貧乏人ならではのせこいことをする邪道とは一線を画すのである。ビンボー道は、食の正道と心得たい。
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日本にはフードファイターというプロフェッショナルな仕事がある。彼らは限られた時間で可能な限り食べ続けて、その食べた量を競うという世界で戦っている。
かけうどん一杯を、ゆっくりと四十分近くかけて食べるスローフードファイターの代表みたいなビンボー道の人たちにとって、食をエンターテイメント化するのはいかがわしいものだ。世界には途上国を中心に飢えている人たちが何億人もいる。いわゆるグルメや美食家なる人たち。そして食のエンターテイメント化…。私はあなたに「ビンボー道に改心せよ」とは言わないが、地球人として日本人の食事のエチケットには反省点が多い。
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ビンボー道における食の美学についてまとめておこう。
①かけうどんやかけそば一杯の価値を再確認しよう。
②日本の百円玉一枚には、とてつもない価値がある。
③家での食事や外食にも、ビンボーならではの食の美学がある。
④世間一般のグルメや美食の王道なる戯言に騙されるな。
⑤野良犬や昆虫を腹いっぱいに食べたら、食のビンボー道に目覚める可能性がある。