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僕はビンボー道を極めて幸せになりました

 飲食店でうどんやそばを食べるのではなく、家で安くておいしいカップ麺やインスタントラーメンを食べた方がよいのでは、という方もいるだろう。私も若かりし頃、カップ麺やインスタントラーメンにはずいぶんとお世話になった。またネパールに一年間、国際NGOのプロジェクトで駐在していた時は、首都カトマンズの滞在先の近くにあるスーパーマーケットに行き、ネパールのインスタントラーメンを買い、家で新鮮なトマトなどの野菜と卵、香辛料をインスタントラーメンに絶妙な具合で配合し、インド風のスパイスの利いたおいしいラーメンを堪能したことは今となっては良い思い出だ。スパイスとトマトの組み合わせが、ラーメンのうま味を最高レベルに引き出してくれるのを、ネパールで体得した。

 しかし、そんな麺好きの私も、うどんやそばは専ら外食に頼っている。というか、家でうどんやそばを食べることはない。私は一杯四百円のかけうどんやかけそばを、心行くまで時間をかけて味わいたいのである。私の場合、「安くて早くておいしい」がモットーのカップ麺やインスタントラーメン一杯を完食するのに四十分もかかるので、完食するまでに麺が伸び切ってしまい、味が台無しになってしまう。

 うどんやそばも色々あるが、本当に安くてうまいうどんやそばは、麺にコシがあり、ずっと出汁に浸かっていても、そう簡単には麺が伸びたりしないので、心行くまで麺をゆっくりゆっくりと一本ズルズルズルと味わって食べることができる。

 飲食店にとって、うどん一杯が安くて薄利であっても、「自家製麺」にこだわりをもってメニューを提供しているうどん職人やそば職人には、すこぶる感謝しかない。自然と頭が垂れる。確かに、私の舌を唸らせるだけの本当に安くてうまいうどん屋やそば屋は激減してしまったが、まだまだ健闘しているお店もある。

 私がうどん屋やそば屋にさらに期待していること…。それは生産者の顔が「見える化」されることだ。うどんを一本ずつ丁寧にすすり味わっている時に、うどんの原材料となる小麦粉やネギの生産者の顔写真などが店内に張り付けてあれば、まさに生産から加工、販売(消費)に至るまで全プロセスを視覚的にも楽しむことができ、かけうどん一杯四百円にさらなる魅力が添えられる。

 たかだかうどんやそば一杯に、どこまで想像力を働かし、食事を楽しめるか。毎日の忙しい仕事に追われるサラリーマンには、こういった些細な楽しみはないだろう。時間の神様は、時間と気持ちにゆとりがあるビンボーに微笑んでくれるのだ。

 神様、仏様、〇〇様。〇〇には、ビンボーゆえにいくらでもワードを挿入することができる。一方、仕事のストレスで禿げ散らかした大方のサラリーマンは、頑張って「神様、仏様、お金様」が精一杯だろう。よもや、神様、仏様、うどん様はないのである。

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