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少女は微笑む


***


 さらに二ヶ月が過ぎた。


 卒業式も、合否発表も、単調に終わった。

 卒業式では、咽び泣く子も何人か居た。きっと充実した学校生活を送れたのだろう。その中にはかつて、「あの子がカンニングしている所を見た」と愛海を指差した子も居た。純粋に卒業式に泣けるのが羨ましいと思った。


 合格は郵便で届いた。両親に見つかる前にひとりで確認し、安堵の息を吐いた。もし不合格だったら……なんて想像はしたくない。


 長い春休みの間、趣味を持ち合わせていない愛海はよく図書館へ行った。

 本を借りる事は無かったが、図書館の空気感を好んだ。静かな空間に佇む本は、どんなに新しい本でも貫禄があるように思えた。何も言わず寄り添ってくれている気がしたのだ。

 口を開くのはたまに顔を合わせる両親だけだった。


 言うまでもないが、入学式の今朝も両親は仕事らしい。

 新しい制服に身を包み、髪を整える。

 普段は降りない駅で改札を通るのが、いつか慣れるのだろうか。なんて、ちょっぴり感傷的になってしまう。

 真冬に通った道も、桜の絨毯が敷かれていた。

 これから通う高校は、中学よりも少し広く感じられる。門から生徒玄関までの距離がそう思わせるのだろうか。

 生徒玄関にはクラス分けの用紙が貼られており、酷く混みあっている。数人の職員が「クラスを確認したら上履きに履き替えて体育館へ」としきりに叫んでいる。

 しかし、人集りは解消されない。愛海は人集りの後方で行き詰まってしまった。平均よりも少しばかり高い身長であっても、この距離では読めない。入学式に遅れが出そうだ。と考えていると、ふいに声をかけられた。


「おはよう!」


 見覚えのある少女だ。試験の時に駅で助けてくれたあの少女だった。


「おはよう」


「これじゃ見えないね」


「少し待てば見えると思う」


「同じクラスだといいね!」


 少女は微笑む。つられて愛海も微笑んだ。こんな子と友達になれたら、楽しいのかもしれない。

 笑うと垂れ目が強調される可愛い子だ。見ず知らずの愛海に話しかけるくらいのコミュニケーション能力に驚かされたが、嫌悪感が無かったのはこの子の雰囲気のおかげだろう。

 少女と談笑をしているうちに、人集りは徐々に解消されていったものの、時間が無く流し見ただけになってしまった。

 小走りで体育館へ向かい、入学式を済ませる。硬苦しく意味が分からない退屈な時間はゆっくりと進んだ。

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