まるで、刑務所のように感じた
受験会場であり、受かれば通う事になる校舎に着く。校門をくぐり玄関先で彼女と別れた。受験番号毎に割り振られた用紙が玄関先に、ホワイトボードで張り出されていたからだ。
自らの受験番号を確認する際、カバンを開くと受験会場までの道のりが載っている用紙を見つけた。
ホワイトボードに記された簡易地図を記憶し、校舎を進む。足は震えなかった。各教室の扉には受験番号が記されており、該当する番号の生徒が受験を行う。
該当する教室を見つけ入室すると、今度は黒板に席順が記されていた。
先に到着した生徒はみな単語帳やらノートを凝視し、ブツブツと何かを繰り返している。
愛海の目には非日常な光景が、薄気味悪く映った。電車に乗る前は晴れていたのに、今では重厚な曇天が拍車をかける。
チャイムが鳴った。待ってましたと言わんばかりに教員が入室し、受験番号での出席をとり解答用紙を配る。
まるで、刑務所のように感じた。個人に名前は無く、あるのは受験番号だけ。成人後はそれが受刑番号にならないように生きる為に学業に勤しむのだ。
偉人の誰かは、勉学に励めば職につけるが怠れば路頭に迷う事になる、と言った。
だが、立派な職に就いた両親を見ていると、そんな有難いお言葉も霞んでしまう。立派で無くても、食いっぱぐれないような職であれば何でもいい。
冬の嫌な空気が篭った教室に本鈴がなる二分前に問題用紙が配られ、本鈴と同時に問題用紙を裏返す音が校舎に響いた。
五教科すべてのテストが終わると、生徒達は一斉に外へ流れでる。開放感に包まれているのは愛海も例外ではなかった。
すでに夜の気配を感じる夕方。人が少なくなる頃を見計らって校舎をあとにした愛海は、ホームで快速を一本見送り乗車する。
テストの手応えは十分あった事もあり、ご機嫌な愛海は最後尾まで移動し、線路を眺める。今までの受験勉強の日々が線路と共に過ぎていく。
最寄り駅を出た頃、夜の気配が近づいてきたが門限まで時間があった。朝は緊張で震えた足が、今は興奮で震えている。
このまま今日という日が終わってしまうのはもったいない。何かいつもはしない事をしたい。
しかし、コンビニはかおるの事もあり気まずい。駅前の駄菓子屋はすでに閉店の時間だ。かといってスーパーへ行くと両親の知り合いに出くわすかもしれない。
悩んだ末に愛海は、結局あの公園へと向かった。何かを期待しながら。




