騎士 ミハエル・フォン・ヴァレンロード (終章)
5/13 誤字やら訂正。
「………大儀であった」
アルクスネ砦。
執務室。
交易船によって一週間もかからずにアルクスネにたどり着いたディルツ騎士団総長レオポルト・フォン・シュターディオン。他にも十数名の上級騎士がレオポルトとともに到着していた。彼らがディルツ首脳だ。
いま、ミハエルやノルベルト・グリモワールと対面したのであった。
「はっ!」
自身の胸の前で右腕を曲げて掲げるディルツ騎士団の敬礼をとるミハエルとノルベルト。
そのミハエルの表情をまじまじと眺め、内心感歎で言葉もないレオポルト。
まるで別人じゃねぇか………。
二年前に管区長に抜擢し、ほとんど捨て置いた同様のあの頃には、まだまだ青二才といわざるを得ない若造だった。
理想を追求すること、それ自体を否定するつもりはない。しかし、理想を見るがあまりに、現実に足がついていないような、そういった印象を持つのが当然の夢想家の小僧だった。それでも、剣の腕や身体能力は人一倍、ミハエルの思想に賛同する部下たちや、海千山千のノルベルトをそばにおいて、やってもやらなくても可、とばかりに大して期待もせずに放っておいた。
だが、今目の前にいる騎士は誰だ………?
目に、たった二年で成し遂げられるとは到底思えないような力強さ、輝きを感じる。
老練、とまではいえなくとも、ここに居並ぶディルツ首脳を形成する上級騎士に押しも押されもされないほどの風格を醸し出していた。
ディルツ本国とて決して平静にあったわけではなかったが、ここ、アルクスネはそれ以上の過酷な日々を生きていたのだろう。騎士になったばかりの若者も、二年の歳月を管区長として生き様々な経験を積み重ね、人物として成長を遂げたのだ。
そして、プロンゾバーサーカーとの死闘、そして、その後に続く魔界の亡者との激闘、さらに、神の降臨というありえないほどの事態の報告をたったいま受けたばかりだ。
並みの人間だったら、一生かかってもお目にかかることもなく過ぎてゆくような出来事を、こうも立て続けに体験してきたのだ。アルクスネの全兵士、指揮官たるミハエルらは。
それが、如実に瞳の説得力という形で昇華していた。
二年前、レオポルト指揮する四万という途方もない大軍が壊滅の憂き目にあったというのに、ミハエルらはたった100人とはいえ、アルクスネの兵力だけでプロンゾバーサーカーの猛攻を退けたのだ。
横にいる、リリクル・プロンゾ、ミミクル、ケット・シーのニーモという助力があったとはいえ。
約150名という犠牲も、多くはプロンゾバーサーカーとの犠牲よりも後の魔界の亡者によるものだという。そんな超常の経験を積んでいまこうして胸を張っているミハエルだ、越えた死線は、並みの戦場のはるかに倍するのであろう。
しかし、神じきじきの降臨とは、これまた桁違いだ。
これを正直に世間に公表していいのか、すら判断に窮した。
クルダス教の信仰の根幹、神が出現したということは、神が、ミハエルに助力したということだ。神が、じきじきにミハエルを祝福したということだ。ミハエルが神に愛された存在だというのは一部には知られたことではあるが、今回のことはそれをはるかに凌駕する異常事態だ。
下手をすれば、クルダス教の信仰が根幹から変革を起こしかねない。
もっと下手をすれば、ミハエルを旗印に宗教改革が起こりかねない。
最悪の中の最悪の場合、クルダス教分裂の危機もありうる。
ディルツ騎士団は、その設立から様々な苦難苦闘を経て、聖地守護という本来の任務から変遷して北方十字軍、異端討伐という大義名分をたてに様々な土地で勢力を振るい、その結果として後ろ盾をクルダス教教皇に求め、それが足りないとみるや神聖ガロマン帝国皇帝にも求めた。その故もあって急速に世俗化するという事態を招いた。
しかし、ディルツ騎士団をここまで拡大させた立役者でもあるレオポルトにとってあくまで目的、目標はその世俗における権力の拡大、勢力の進展にこそ眼目がある。それが、ミハエルを担いだ宗教改革や分裂闘争でもおころうものなら、事態がどのように波及するか、世に大変化をもたらすか知れたものではない。
舵取りを誤れば、自身の地盤の転覆を恐れた神聖ガロマン帝国皇帝フリーデルン二世やクルダス教教皇グレゴッグス九世から破門、追放の令が出てもおかしくはない。もっと恐れるとすれば、異端の指定を受け、全クルダス教を敵に回しかねない。そうなったらディルツ騎士団に与えられた領土、資金、人材、すべてが侵食、蚕食され潰されるのは疑いようがない。ここで判断を誤れば、自身が築いてきたすべてを、ミハエルによって潰されるという恐るべき事態なのだ。
普通に考えるのなら、この、神の出現、という事態だけは完全に抹殺したいレオポルトであった。宗主クルダスの再臨、といわれても決しておかしくはない状況に、最悪の想定を始めて際限なく最悪の想像が拡大して、頭痛を感じていた。
もっと別の手立てを考えるのなら、ミハエルをかついで神聖ガロマン帝国の内部か、クルダス教の内部に入って自らが正統にとって替わる、という方法もないではないだろうが、その望みは限りなく薄い。現在ある権力基盤や経済基盤に住み着いた連中を蹴落とし、もしくは懐柔し、自分がそこに割って入るなど、王族にだってやすやすと行えることではない。しかも、すでにこの時代の老境にとっくに入っているレオポルトにそこまでの野心も時間ももはやない。
一言いえるとすれば、ミハエルやノルベルトがどんな野心や情熱に突き動かされるかは勝手にすればいいが、俺の足を引っ張るんじゃねぇ。というのが大本音だ。
「………まあ、まずは生還を祝そう」
なんてことをしてくれやがった! と怒鳴りつけたくなる衝動を抑え痛む頭をおさえつつ、決死を覚悟して挑んだ死線を乗り越え、いまここに無事に立っている両名を祝った。
決して、彼らに非があるわけではない。彼らには悪気があるわけでも、狙ってこのような事態を引き起こしたわけでもない。最良の選択をしようとして、最悪の事態が出来してしまっただけだ。どこの誰が、よもや神がじきじきに裁定に降臨するなどと予想できよう。わかってはいる。わかってはいるが、自分の地位を足元から崩される心地がして、レオポルトは苛立ちやら恐怖やらでわけがわからなくなりそうになっていることも、また事実だった。
プロンゾバーサーカーをほとんど無傷で退ける、という脅威の戦果すら、いまのレオポルトには言いようのない苛立ちの燃料となってもいた。これで死んでいてくれたら………、と不謹慎にもちらっと脳裏をよぎったレオポルトである。
「これにて、ディルツ騎士団と古プロンゾ族の和はなった。まさしく歴史に燦然と輝く慶事である。ディルツの長年の悲願を達成してくれたことに、全、ディルツ騎士団団員に成り代わって礼を言う。ありがとう。ご苦労であった」
不謹慎な内心をおくびにも出さずにねぎらう。
「はっ!」
レオポルトの内心など知る由もない両名は素直にその言葉を受け入れていた。
「そして、新族長リリクル・プロンゾ、次代の巫女ミミクル・プロンゾと言われたか、これまでのぬぐい去りがたいわだかまりを超えて決断されたこと、まことに感謝の念に絶えない。礼をいう。本当に、ありがとう」
レオポルトは卓越した政治家でもある。
自身の内心の腹の中はどうであれ、冷静に総長としての責務を果たすことを心得ている。
優れた指揮官として見事な成長を遂げたミハエルを前に、私心をさらけ出すような無様なまねは決してしない。死闘を潜り抜けた彼らに対する礼にもとるというものだ。
「いえ、我々も最良の結果を求めてあがいただけのこと。我々プロンゾとて、ただ滅亡を待つだけの狭隘な野蛮民族などではないということです。とはいえそれも、ミハエルあってのこと。和平成立も、そして、これからのプロンゾの復興にも、ミハエルの陣頭指揮なくしてはプロンゾの民の賛同を得られないということもご理解たまわりたい」
ついにやってきたディルツ首脳部に対する掣肘を早速、始めるリリクル。
ディルツ首脳部がミハエルを今後どう扱うかが最重要問題なのだ。それは、リリクルの個人的要望でもあるが、プロンゾの命運を決するという点では同じことだ。
そのリリクルの発言にしばし沈黙するレオポルト。
「………」
まさか、この期に及んで旧態依然たる支配体制を考えているのか、とリリクルの胸中に不安が刺した、次の瞬間。
「………そのことも含めて、今後の融和推進のためにもひとつ、許していただきたいことがある」
「なんでしょう………?」
急に神妙な表情で言い出すレオポルトに、リリクルの不安はますます拡大する。
「秘中の秘、といわれる巫女ディレル、という方にお目通りを願ってもよいだろうか。あと、グナクト前族長ともお会いしたい」
「ど、どういうことですか?」
「いやなに、別に他意はない。我々が長年戦ってきた、プロンゾの精髄、その本質がどのようなものであるのか、単純に知りたいだけだ」
レオポルトの関心はまさしくそこにあった。
魔法を使う能力を一切もたない、戦闘民族プロンゾ。
ディルツ騎士団からすれば野蛮で低俗で劣った民族、のはずだった。
それが、巫女、という存在。しかもミハエル、ノルベルトの送ってきた上申書に報告された内容は、全ディルツが総力をもってしても決して倒せないような強力な魔力をもつという。
つまり、ディルツ騎士団はプロンゾ征伐開始当初から敵を見誤っていた、見くびりすぎていた、ということになるのだ。
もし、単純な異端征伐ではなく、同等の実力を有した民族との戦争という理解のもとで適当なところで和平の道を模索していたのならレオポルトこそがプロンゾ融和を成し遂げていたのかもしれないのだ。
いや、すでにある程度の答えは得てはいる。目の前におっかなびっくり立っているミミクルに、妖精ケット・シーの神格を得たるというニーモの存在をもって、魔法に長じた上級騎士の中には驚愕の視線を送っているものもいるのだ。ここに集ったレオポルト達が全力をあげても、妖精ケット・シーの足元にも及ばないことが予想できていた。
すでにある程度の答えはでているとはいえ、ディレルに直接見えてその実力のほどを確かめたいという衝動がどうしても消しがたくあるのだ。
しかも、あの鬼神グナクトまでもまだ生存しているという。
毒による殺傷を逃れ、それ以降姿を見せなかったグナクト。ディルツ騎士団ではすでに死んだものとして了解していたあのグナクトと、一言でも言葉を交わしてみたい、という気持ちがあったのだ。
「わかりました、………取り計らいましょう」
レオポルトの内心の意味を読み取れず、わずかに戸惑いながらリリクルは応じた。
※
「よう参られた。わたしがプロンゾ族の巫女、ディレル・ピロンゾだ」
「お初にお目にかかります。ディルツ騎士団総長レオポルト・フォン・シュターディオンであります」
数日後、レオポルトはミハエルとノルベルトを伴って『アトゥーレトゥーロ』にやってきていた。
族長として場を取り仕切るリリクルとミミクルにニーモ、ビーククト・ブロンゾがおり、ふて腐れたグナクト、イーナム・ディーム、ディディクトの妻だったシシスナ・プリムゾが控えディレルが玉座のような椅子に座っている。
『アトゥーレトゥーロ』の威容にも度肝を抜かれたが、眼前に悠然と座ってレオポルトをしげしげと眺めるディレルを、レオポルトも同様にみてついにプロンゾの真実を知った。
………本物だ………。
「………これまでのご無礼の段、深くお詫びいたします」
レオポルトは座り込むや否や、土下座をして、額を地にこすりつけんばかりに謝罪をしたのだった。
ぎょっとする一同。
「はは、一を見て十を知るか。想像以上に聡い子だ。ぼんくら息子にも見習わせたいものだ」
愉快そうに笑うディレルである。
「………恐縮であります」
「そ、総長、あの………」
レオポルトの突然の土下座に、ミハエルも言葉が出ない。
「………ミハエル。よく融和に努めた。でかした」
後ろを振り返り、神妙な面持ちでミハエルを褒め称えるレオポルトに、ますますミハエルは面食らう。
「今後の融和の件、決して粗略にはいたしませぬ故、お心安んじてお待ちください」
ディレルにまたもや額ずいて、融和に関して確約をするのであった。
またもやぎょっとする一同。
レオポルトが重大事をあっさり決するのにも驚かされたが、この神妙な顔つきは、神を目前にしたミハエルのような敬虔な様子だった。
「うむ。………やはり、そうであるの。婆が日陰者に甘んじたおかげで、両者に要らぬ苦労をかけたようだ。許せよ。レオポルト殿」
「滅相もなきこと。天下もと無事にて、これを乱すは小人の仕業。すべては、我らが未熟の不始末。ディレル様がお出ましになるような事態になれば、それこそこの世はおしまいでございます。………いまさらではございますが、ディルツ騎士団とプロンゾ族との友好を深めることができて、これに勝る慶事はございません」
「………うむ。………我らは、何をためらったのであろうな。こうして、面を付き合わせれば、分かり合えるのにのう。………いや、何も手遅れなことがあろうか。我らはこうして分かり合えた。我らの子も、齟齬なく分かり合えるであろう………。これ、聞いておるか、馬鹿息子めが」
「………は」
ぶすっとした表情のグナクトが応じる。
一応は蟄居処分は解かれた。
しかし、前族長であり、最強のプロンゾ戦士であるグナクトの今後の取り扱いに関してはディレルとて処置に窮していた。今後の融和にグナクトが役に立つとも思われない。戦士としては超がつくほど有能ではあるが、行政や政治に関しては超がつくほど無能。これまでどおり予備戦力としてとどめ置く以外に使いようがない、というのがディレルの現在の判断である。
「………覚えておいでであろうか。わたしは、グナクト殿とかつて剣を交えたことがあるのだが」
レオポルトがグナクトに視線を転じていう。
そのレオポルトの言葉に、初めてグナクトの目に感情の光が灯った。まるでヒグマの置物と成り果てていた男が初めて来訪者を前に自身の意思で反応する。さすがにいまは竜革甲冑などはまとっていない。
じろり、とレオポルトをねめつける。
「………お前ごときに覚えなどない」
「そうか………」
「これ、馬鹿息子が。言葉に気をつけんかっ」
「………事実だ。あの時、わしを付けねらうディルツ戦士など掃いて捨てるほどいた。………お前ほどの戦士なら何人もいた。いちいち個人を特定などできん」
いまいましい、とばかりに顔を横に背けるグナクト。
「そうか………。しかし、我らが戦を始めて30年。ディルツにも鬼神と恐れられたグナクト殿と剣を交えたものも少なくなった。こうして戦を始めた因縁の者と、戦を終わらせた未来ある者がこうして場を共にしている。………感慨深いな」
「………ふんッ! わしらは過去の遺物というわけか」
すでに終わったもの扱いされたグナクトが自嘲を含めて鼻で笑う。
「グナクト」
ディレルが一瞥する。
「………そうだな。………30年か。こうして、すでに若者たちが未来を築くべく日々戦っておるというに、わしは戦場で朽ちることもなく、いまだ生き恥をさらしておる………。いたたまれんわ」
「グナクト………」
レオポルトと同じくこの時代なら鬼籍に入ってもおかしくはないほどの老境に差し掛かっているグナクトが嘆きのため息をつく。ディルツとプロンゾとの間に始まった戦争が30年という長い歳月の果てに終わりを告げた。
30年もたてば当然、若者たちが次代を担ってくれる。
次代に席を譲った、いや、奪われたものからすると寂寞に耐え切れぬものがある。三人もの跡取り息子に先立たれ、若い娘が族長として責務をはたそうと尽力している。
ミハエルが会見に現れたとき族長として威厳を示そうとしたが、それも年寄りの冷や水といわれても仕方のない勇み足であった。そのあせりや責任感が消えてなくなったいま、明らかに取り残された、という寂寞がグナクトの心を蝕んでいた。あとどれほど生きても、なんらの意味もない日々を送るだけであろうか。
ディディクトですら、プロンゾの未来を思い描いて、壮絶な死闘の末『ヴォールホン』に召された。
もっとも頑張らねばならない自分が、無意味な存在として退けられた事実は、屈強な戦士であるグナクトをして腹を切って死にたくなるほどの羞恥だった。
「………貴殿ほどの戦士が、平安に日々を没するのは耐え難いことでありましょうな。………どうでありましょうか。貴殿さえよければわたしと一緒にディルツ騎士団でその豪剣を振るう、というのは」
「はッ!? このわしに、いまさらディルツの走狗となれというのかッ!?」
レオポルトの意外な提案に、グナクトがはじかれたように叫ぶ。
グナクトの久しぶりの大声にぎょっとしなれた一同も改めてぎょっとなった。
「………いや、実に面白い提案ではないか」
ディレルがにんまりと笑ってグナクトをみる。
「プロンゾに必要なのはこれからは戦士ではなく、復興のための労働力だ。隻腕のお主に、できることなどあるまい。しかし、ディルツ騎士団の戦力であれば、隻腕とて十分であろう」
「負傷者は、予備役、それがプロンゾの掟でありましょうが………」
「プロンゾならば、な」
「………ッ!」
かっ、とグナクトの目が大きく見開かれる。
「そう。ディルツならば掟も何も気になされる必要はないでしょう。そして、プロンゾにしばらくは戦は起こらんでしょう。しかし、ディルツは常に何らかの戦場がある。そして、貴殿ほどの戦士ならばどこに行っても大活躍間違いなし。………どうでしょうか。平安に没する日を選びますか。それとも、血沸き肉踊る戦闘の高揚を、いまも欲されますかな」
「………巫女様」
じろり、とグナクトがディレルを見る。
「うむ。行ってこい。グナクト。ここで心が死んでゆくのを座して耐えることもあるまい。………まあ、お主の眼前に立ったものの運命を、いまから哀れに思うがな」
ほくそ笑むディレル。
グナクトの前にたつ戦士は、もしかするとプロンゾのような少数民族かもしれない。
そう思うと笑ってはいけないのだが、グナクトが心を蝕まれる日々を見ていたディレルからすると、息子が活躍できるほうが、嬉しいと思えるのだ。
「応!!!」
歓喜の呼号。
久しぶりに人々は耳がつんざかれるほどのグナクトの大声を味わう。
しかし、今はそれも悪くはなかった。
「………まあ、人を相手にはさせません。南方では恒常的に亜人と戦っております。それに、十字軍召集が発布されれば我々も出陣いたします。グナクト殿の活躍がいまから目に浮かぶようですな」
にっ、とレオポルトが笑う。
若者の活躍に、おいていかれるような気分を味わうのは、何もグナクトのみではない。
年を食ったものは、すべて味わう。
しかし、と思う。
わたしはまだ戦える。わたしはまだ、やれる。
それを証明するのは、戦場以外にはない。
日々膨張してくる亜人の伸張を食い止めるのが十字軍の任務。
人間の生活圏を守るべく、完全無欠の大義名分でもって剣を振るえるのだ。これほど血が滾ることがあろうか。
まるで、旧知の親友のように、レオポルトとグナクトはこれからを想像して目をらんらんと輝かせるのであった。
「よかったですね」
ミハエルがリリクルに言う。
「………ああ!」
本当ににっこりと、リリクルは笑うのであった。
いかがでしたでしょうか。
老荘思想家のおっさんならではのラノベになったのではないでしょうか。
これからも楽しんで妄想したいと思いますので、皆様も楽しんでいただければ幸いでございます。




