第1章3 『始まりは神の裏切り』
──冷たい視線を感じる。
──冷たい……冷たい……。
──冷たい……冷たい……。
「いつから俺は大スターになったんだよーーーーーー‼︎」
ここは、キベリア王国王都大広場。中世風の建物のが立ち並び、沢山の人が行き渡っている。中央には、豪勢な雰囲気を漂わせている噴水が設備されている。
コウタは、デナサマールの馬車から『さよなら』をしてキベリア王国王城に行き騎士登録をするため、大きな白い門をくぐり抜けて、ポーションや果物、衣類などを販売してる様々なの売店が並ぶメインストリートを駆使して、ここに降り立ったわけなのだが……。疑問を抱き、頭を抱えていた。
──それは、キベリア王国の国民からの視線だ。
やたらと国民達と目が合うコウタ。目が合うと国民達は一旦、目を下にやりコウタの服装を3秒ほど見る。目を大きく見開く人もいれば、細める人もいる。だが……次から皆が一緒の言動を取る。コウタの肩に手を遣やり、「よく分かりませんが、人間色々いますよね」こう言い残す。
その言葉の意味が分からず、今に至る訳だ。
「まあまあ、アレだな。俺の生まれてから備わってる大スターの星が、皆んなを引き寄せてしまうと……はい!解決‼︎」
勝手に結論を出し、満足げなコウタ。風に揺れるマントがより雰囲気を出している。
「ねぇ。お兄ちゃん。その格好……。ぷぷぷぷ………ぷはハハハハハ‼︎!」
髪をかきあげ、風を感じていたコウタに、2歳くらいだろう。コウタの身長(165センチ)の約半分の身長の男の子がお腹を抱えて爆笑していた。
「何かなぁ?クソガキーー?用事無いなら僕ちゃんの視界から消え失せてくれないかなぁ?」
調子に乗っていたコウタは、話しかけてきた男の子と同じ目線の高さになるようにしゃがみ、顔をにこやかに声のトーンを一定にしつつ冷たい言葉を放った。
「もう一回言うけどさ〜ぷぷぷぷ。お兄ちゃん、変な格好ぷぷぷぷ」
コウタの言葉の意味が分からないのか、男の子は凹む事なく笑い+話しを繰り出した。
「ねぇねぇ。僕ちゃんのお話聞こえましたか〜〜用事無いなら〜〜消え失せちゃってくださーーーい‼︎」 コウタの態度も変わらない。声のトーンを一定にしつつ、死んだ言葉を吐き捨てているだけだ。理由は簡単だ。コウタは『子供(男)』が大嫌いなのだ。
「服ダサいって言ってるじゃーーーん。ぷぷぷぷぷぷぷぷハハハハハハハハハハ!」
「はぁ!?今なんて言った?」
「だ・か・ら・ぁ‼︎服ダサいただの女好きってんだよーーぷぷぷぷハハハハハ‼︎‼︎」
「何だと、てめぇーーーーーー‼︎!」
───ゴツン……ッ!!
遂に暴力に走ってしまったコウタ。男の子の頭に拳骨をしてしまった。かなり強めにだ。自分の過ちに気付いた時には、もう遅かった。周りがざわつき始め、視線がコウタに集中する。さっきよりも視線が倍に増えた気がした。
「ウワァァァァァァーーー‼︎‼︎‼︎」
誰もが予想していた展開へと落ちていった。拳骨を浴びさせられた男の子は、泣き喚いた。
「お父さあーーーーーーーん‼︎‼︎」
汗の量が増したコウタ。男の子の秘伝の技『親、呼び出し』が発動された。
──大丈夫、大丈夫だ。話せば分かる……大丈夫、大丈夫。
コウタは汗は止まらないが、心は冷静だった。例え、親が来ても話し合えば理解して貰える。結果、無実‼︎という考えが働いていたからだ。
「あっ!お父さん‼︎」
泣き喚いた男の子は枯れた声で、お父さんと思われる人物に走り去って行った。
ジャリ。ジャリ。ジャリ。ジャリ。
コウタの元へ近づく影。
コウタも覚悟は決まっている。流れる汗にも構わず立ち上がった。
ジャリ。ジャリ。ジャリ……。
足音が聞こえなくなった。
コウタの目の前に立っているのだろう。逆光で顔が見えない。
太陽が厚い雲に隠れ始め、お父さんと思われる人物像が見えてくる。
「─────ッ!!」
言葉よりも身体が感じてしまった。
コウタの目の前に立っていたのは、リーゼントと呼ばれるヘアスタイルに、非常に似合わないサングラス。くわえタバコ。全身紫色の作業着に身を包めた如何にも、絡まれたら『生きては返さん。』の展開になるのがお約束のオーラを纏った男が立っていた。いつの間にか周りには、沢山の人集りが出来ていた。野次馬というものだ。
「おい、こいつだな?」
低く、相手を恐怖へと突き落とす声のトーンで男の子に問いかけたリーゼント。
コクリとまだ半泣きの男の子がリーゼントにYESの合図をする。
「おいアンタ。分かってんだろうなぁ。」
急な質問に怯えるコウタ。体の震えが止まらない。体がギブアップ反応を出している。
「あ、あはははは。ち、違うんです……よ。あ……の、ぼ、僕は、その子に…@&#/〒^+¥%☆→.」
──言葉が……出ない……
「何言ってんだ、てめぇわぁぁぁぁ!‼︎」
「ひ……ひぃ……」
頭に血管が浮き出るリーゼント。
思わず言葉に出てしまう程怯えるコウタ。
「あのですね……その子に、僕は怖い話をしてですね……泣かすつもりは無かったんですけどね………」
今のコウタは最低だ。自分の罪から逃れるため嘘をついている。そんな彼に、味方をする神は居なく、
「本当か………?」
コウタを睨む男の子は、リーゼントの問いかけに首を振り、NOの合図。やはり、子供は素直なのだ。
「やっぱりなぁ!!ミンチにしてやるぞぉーー‼︎‼︎」
「ごめんなさーーーい!!」
この後の話は、厚い雲から顔を出した太陽は知らないのだった。