第1話 プロローグ
俺は黒川詠斗。
何処にでもいる普通の高校2年生だ。
どのくらい普通かというと、顔は中の上で帰宅部。面倒くさい事が嫌いで、テスト前であろうと一切勉強しない。まぁ、面倒くさい事でも自分の利益になるような事だったり、楽しい事ならやる。せいぜい俺が普通と違うとしたら、髪色は一般的な黒だが長さがセミロングぐらいある。別に伸ばしていると言うわけでもなくただ切りに行くのが面倒というだけだが。
そんな俺だが、今日は早く帰れる為に小走りで家まで帰っていた。しかし、俺はその途中で自分のスマートフォンを机の中に入れっぱなしにしていたのを思い出した。いつもの俺なら戻るなんて面倒くさい事はしないが、生憎と今日は金曜日。今日を逃すと月曜日まで使う事が出来なくなってしまう。それだけは避けなくてはならない。そこで俺は来た道を戻る事にした。この“戻る”という行動が自分の人生を大きく変えるとは知らずに・・・・・・・・・。
俺はあれから少しして学校へと戻ってきた。俺が帰り始めたのが早かったからだろうか、まだ学校から出てくる人達が何人かいる。だが、今はそんなこと関係ない。さっさと忘れ物を回収して帰る。それだけなんだから。
急いで教室へと戻ってみるとまだ5人残っていた。しかも全員小学校からの知り合い、つまりは腐れ縁とも言える奴等だ。
「あれ?詠斗?帰ったんじゃなかったの?」
と話しかけてきたのは、このクラスのアイドル的存在、南原奈々である。茶髪でショートヘア。小柄で可愛らしいが運動神経はそこそこでバレー部に入っている。元気娘で感情がコロコロ変わるが一緒にいて飽きないやつだ。
「ああ、ちょっと忘れ物してな。」
俺は適当に返事をして自分の机へと向かった。
「詠斗が忘れ物するなんて珍しいな。」
今話しかけてきたのは、次期生徒会長と噂されている光条天馬だ。黒髪でショートヘア。こいつは容姿端麗、成績優秀、文武両道で人当たりもいいと、絵に描いたような完璧超人だ。とは言っても、こいつは鈍感だから完璧なのかどうなのか微妙だが。
「俺だって人間だ。失敗する事はある。」
俺はそう言って机の中から目当ての物を取り出す。
「そうだわ。ねぇ、詠斗君は明日は時間空いてる?」
今のは青山遥。皆の姉的存在で常識人だ。綺麗な黒髪を腰まで伸ばしている。運動神経は悪くなく弓道部だ。才色兼備で男からも女からもモテている。だが、こいつは怒る事があまりないが、一度怒ると死を覚悟させられる。俺も体験したことがあるから分かる。あいつを怒らせては絶対にダメだと。
「うーん。まぁ、空いてはいるな。何かすんのか?」
俺が思案顔で答えると今度は
「……テスト勉強。……皆でする。」
と無表情で言ってきたのは、緑川凪だ。黒髪でミディアムくらいの長さがあるこの子は一見すると、何故ここにいるの?と疑問に思ってしまうくらい小柄だ。確か身長は140cmだったはず。顔も童顔で本当に17歳なのか時々疑問に思う。基本無口で表情も乏しいが流石に小学校からの付き合いなのでそこそこ感情が分かる。今は少し嬉しそうだ。皆といるのが楽しいのだろう。
「お前ら俺がいつもテスト勉強してないのは知ってんだろう。そんな面倒な事で面白くない事するつもりはないよ。」
こんな感じに俺が少し気怠い感じで返事をしたら
「はっはっは!まぁ、お前は授業だけでそこそこいい点数取るもんな。俺もそうなりたいぜ。」
笑いながら話しているのは、佐山剛毅。髪色は茶髪でベリーショート。大柄でラグビー部に入っている。脳筋ではっきりいって成績は悪い。多分今回テスト勉強するのはこいつと奈々の為だろう。他の3人は自分で勉強出来るし、元々頭もいいからな。
「ね!お願い!ここは可愛い親友を助けると思ってさ!勉強教えてよ!」
「うるさい。自分で可愛いとか言うな。そしてお前は親友じゃない、ただの腐れ縁だ。」
「ひどーい!そんなこと言わなくてもいいじゃん!」
俺が面倒くさいと感じながら適当に返していると奈々が勝手に怒りだした。全くうるさいやつだ。俺がそう感じながら相手をしていると、てくてくとことこと歩いて来る者がいた。凪だ、一体どうしたんだ?
「……ねぇ。……お願い。……勉強、教えて?」
「うぐっ!?」
凪が若干潤んだ目+上目遣いでお願いしてきた。誰だこの合法ロリにこんな必殺技を教えたのは!危うく堕ちそうになったじゃねぇか!
「うん!やっぱり凪ちゃん可愛い!いっぱい練習した甲斐があったね!」
「本当ね。凄く可愛いわ、凪ちゃん。私の妹になってくれないかしら。」
いたよ犯人、しかも身近に。まぁ、こんなこと教えられるのは、こいつらぐらいだろうけどな。凪は親と俺達ぐらいにしか心開いてないし。
「いやいや、俺と凪だったら凪の方が頭いいだろ。それで何を教えろと言うんだよ。それに、さっきも言ったが面倒だから嫌だよ。」
「っ!?……そう、だよね。……いや、だよね。…………ごめんね。……ぐすっ。」
「おいこらどっちだぁ!!凪に泣き落としまで教えたのは!!」
俺はほぼぶちギレながら凪に泣き落としを教えたクズはどちらかと問い詰める。
「へっ?!いやいや、知らないよ!」
「私でもありませんわ。」
何だと?となるとまさかあいつらか?!
「じゃあてめぇらかゴラァ!!」
「いや、僕は知らないな。」
「俺も知らんぞ。」
なん……だと……?!となるとまさかまさか?!
「……凪?……お前、まさか、本当に?」
「……………(こくっ)」
やっちまったーーーーー!!いたいけな少女を泣かせてしまったーーーーー!!こ、これはまずい!面倒とか言ってる場合じゃない!すぐに勉強を教える事を伝えなくては!
「あ、あの、凪?」
「………ぐすっ……何……?」
「い、いや、あの、その、もし俺でよろしければ勉強を教えようかな~と。」
「……………」
沈黙が辛い!何とか言ってください!お願いします!
「………そく。」
「えっ?」
「……約束……してくれる?」
「あ、ああ、もちろん!」
「……本当に?」
「ああ!絶対守るよ!」
「……ふふっ。……ありがと。」
「ああ、別に構わないよ。」
ふう。これで何とか問題はかいけt「……言質は取ったよ。」……えっ?
「えっ?あの、凪?どういうこと?」
「……演技。」
「……………えっ?!」
「あはははっ!流石凪ちゃん!凄い演技力だね!」
「本当ね。びっくりしちゃったわ。」
「ああ、あれは僕も驚いたよ。」
「はっはっは!詠斗が手玉だったな!」
こ、こいつらは………!!
「おい、てめえら、覚悟はでき(ピカッ!)……えっ?」
突然だった。俺達の足元に突然それは現れた。
「は?ま、魔方陣?!な、何が起こってっ?!」
そして、俺達6人は教室から姿を消した………。
俺達6人が行方不明になった事件は実行犯も俺達の生死も分からず、迷宮入りの大事件となった………。