時空を超えた出会いー3
長い間泣いていた。
その間この一年のことが頭を駆け巡っていた。
友達と違う学校になるのは辛いけど、新しく友達を沢山作るんだと張り切っていた入学式の日。
部活にも入り、精一杯学校での生活に慣れようとして、結局出来なくて、居心地が悪くなって部活を辞めた。
誰にも相談出来ずに悩んでいたこと。
学校にはもう行かないと言った時のお母さんの反応。
いろんなことが頭の中でグルグルして、なんだか気持ち悪くなってきた。
それから暫くして泣き止んだ後、不思議と頭の中はスッキリしていた。
ずっと胸の中にあったモヤモヤが無くなっていたのだ。体がダルくて、少し前までは歩くことすらも面倒だと感じていたのに、今はそれが全く無く、むしろ動きたくて堪らないとすら思えてくる。
またいつかここに来よう。そう思って空を見上げてみると、何か奇妙な物体があった。最初は流れ星かなと思ったが、それはなぜか赤く、しかも明らかに星とは思えないような変な動きでふらふらと夜空を彷徨った後、急に軌道を変えて俺がいる方へ落ちて来た。
それから何があったかよく覚えていない。
咄嗟に目をつぶり、しゃがんだ後に横からドゴォッッという音と共に衝撃波に襲われて何メートルか吹き飛ばされた。
どうやら背中を打ちつけたようだ。おまけに地面に擦り付けられた衝撃で、肘の部分がビリビリに破れ血が出ている。
起き上がろうとした際に、舞い散った砂煙を吸い込んでむせていると、向こうから声が聞こえてきた。砂煙が邪魔でよく見えないけれど、ついさっきまで誰もいなかったのに人影がある。
(何が起こったんだ…。)
暫く俺は呆然としながら、その場に座りこんでいた。
「イテテ…、やっぱり時空の壁を無理やり突破するなんて無茶なことはやめておくべきだったわ。咄嗟に重力を減らして水の魔法でクッションを作ったからよかったものの、一歩間違えれば大怪我ね。」
言いながら、少女はおもむろに立ち上がり指をパチンと鳴らすと、強風が吹いて一瞬で砂煙が無くなった。
そこで、少女と目が合う。
その女の子は黒くて大きな本を持っていて、身長は多分俺より少し大きい。
深緑色のローブを身に纏い、髪は真っ黒できれいに切り揃えられていて、黒縁の眼鏡をかけている。
俺は何が起こっているのかわからず、呆然とその女の子を見ていると、その女の子もまた不思議そうに俺を見ていた。
やがてその女の子は小さな声で「あっ!」と呟き、おれの側に駆け寄ってくると、心配そうに俺の顔を見て言った。
「巻き込んじゃってごめんね。直ぐに治すわ。」
そう言って、俺の擦りむいた部分に手をかざすと、何も無い空中から水が出てきて患部を包むと、傷口がみるみる塞がってケガは跡形もなく消え去った。
「これでよしっと。ほかにケガは無い?」
俺はは首を縦に振った。頭の中は混乱して大パニックだった。
その女の子は立ち上がり、今だに尻餅をついている俺に手を貨して立ち上がらせてくれた。
「では改めて…コホン。私はハナネ、ここじゃない世界から来た旅人よ。」
その日の俺の混乱は最高潮に達した。