プロローグ
山野圭一は、いつも朝の七時に起きる。
今日も普段通り七時に起きた。
目覚まし時計を使わずとも、正確に七時に起きる事ができる。
彼の数少ない特技の一つである。
そしていつも通りに、高校の制服に着替えて一階に降りた。
母も父も先に出勤しているので、リビングには誰もいない。
部屋の電気を点けて、トースターに食パンを突っ込んで、顔を洗って。
まるでマニュアルでもあるかのように、流れるように作業を済ました。
テーブルに着くとトースターからパンを取り出し、バターを塗った。
次に、テーブルの上に無造作に転がっているテレビのリモコンを手に取り、テレビを点けた。
朝に見るのは8チャンネルの目ざましテレビと決まっているので、8のボタンを押した。
いつもと同じ顔触れがスタジオに並んでいた。
パンを食べ終わると、歯を磨いてトイレを済ます。
手を洗ってリビングに戻ると、テレビの画面右上に表示されている時刻は丁度7:20を示していた。
ここまで、時刻すら昨日と何も変わっていない。
昨日に限らず、一昨日も、一週間前も同じである。
圭一は今日もいつも通りに準備ができたことを誇りに思うと、いつも通りにソファに座りテレビをしばし眺める事にした。
まだまだ登校時間には余裕があるので、それまでテレビを見ることは彼にとっての日常である。
_・・・速報です。東京、新宿上空に謎の巨大な飛行物体が・・・。
え?なんだろう
突然、アナウンサーがスタッフに渡された用紙を早口で読み始めた。
その顔は驚きを隠せない、といった具合である。
しばらくすると、テレビの画面は、スタジオから現場のカメラへと移った。
_はい、こちら現場付近にいるレポーターの三島です。こちらが・・・
レポーターが空に向けて手をやると、カメラはそれを追うように空を映す。
空は曇っていて、太陽は確認できない。
灰色をバックに報道陣のヘリコプターが多数、飛んでいる。
なんだ、あれ。
圭一はテレビを覗き込むかのように凝視した。
そこには、全長5kmはあろう巨大な円盤が浮かんでいるのである。
その円盤はボールを潰したような形をしていて、色は光沢を持った青。
船体(?)にはシャッターのようなものや、砲台らしきものがうっすらと見える。
映画の撮影か。それとも番組の企画だろうか。
圭一は隣のチャンネルへ変えてみる。
確か、ニュース番組のはずだ。
若干の間をおいて、画面にはデカデカと「宇宙人襲来か!?東京上空に大型飛行物体!」なんて見出しが出ていた。
民間放送では信用できないと1チャンネルに変えてみると、やはり他のチャンネルと同じく円盤の話題を扱っていた。
なんなんだ、これ。
疑問で頭がいっぱいになるが、画面右上の時刻が7:30になったためテレビを消して、家を出た。
自転車を漕いでいる間も円盤の事で頭がいっぱいで、途中車に跳ねられそうになった。




