第15話:皆の力
「終わったぁ〜〜!!」
全校作成物に取りかかって…はや1ヶ月半。
やっと出来上がった大作に、俺は両手を高く上げ、伸びをしながら、“終わった”という達成感と、開放感に満ちあふれた歓喜の声をあげた。
すると、隣で自分の仕上げた大作を、満足そうに眺めながら、まいちゃんが口を開いた。
「お疲れ様♪お陰で超良い作品が出来たよvv」
有り難いっすよ麻衣子さんιこの夏休み、ろくに遊びもせずに、毎日毎日学校へ来ては、この暑い体育館に籠もってた甲斐がありましたよι
季節は9月。と言っても入ったばかりで、まだ暑い日が続いている。
新学期も始まり、今月末に開かれる文化祭に向けて、全校生徒のテンションは、徐々に盛り上がりを見せている。
学校が終わった後に、居残りをしながら準備を進めるクラスが多い中、俺はクラスの準備をしながらも、やっとの事で、この大作を終わらせた。
…えぇιそうですよ…ιどっかの誰かさんの言い出した、健康ランドとやらの準備をしながらね!!
そんなこんなで、俺たちが仕上げた大作を、達成感に浸って眺めていると…何やらそこに黒い陰が落ちた。
「凄〜〜い!!終わったん?!むっちゃええよ!!」
えぇ?!
俺はいきなり声がしたことに驚きながらも、恐る恐る、陰と声の主に視線を向けた。
「…麗奈?!」
「よ!若僧♪」
あぁ、よ!
じゃなくて!!何で居るんですか?!ちょうど出来上がった所に!
俺が小パニックを起こしていると、少々高いテンションでまいちゃんが声を上げた。
「麗奈〜〜vv凄いでしょvv頑張ったでしょvv」
「凄いなぁvv感動したわ!」
「ありがと♪」
「ホントの事やし♪」
そんな会話が繰り広げられる中、俺はボーっと二人のやりとりを眺めていた。
すると、まいちゃんが
「画材片づけてくる〜。」と言って出ていった。
必然的に麗奈と俺の二人になった広い体育館で、俺が何か話題を探そうと必死になるなか、静けさを破るかのように、麗奈がそっと口を開いた。
「悠斗…ありがとう。」
「へぇ?」
あぁ〜!ヤバい!いきなり心当たりの無い事お礼されたから…超情けない声でたし!!
「…(笑)本間にいつでも面白いなぁ。」
俺の出した声を聞いて、麗奈は笑いを堪えながらそう言った。
いや?!ウケ狙いじゃないですからι
俺が心の中でそう否定する中、麗奈は何も無かったかのようにまた話し出した。
「ありがとう…麻衣子のこと…。」
「え?…いや、俺は何にもしてないよ?まいちゃんが…頑張っただけだよ!」
俺はそぅ答えた。
本当に…俺は何もしてない。ただ、ご飯の時間と水分補給を促しただけ。
「でも、ちゃんとあの子が無理せんように、みといてくれたんやろ?」
「ぁ…まぁ…ι」
俺は少し戸惑いながら、そぅ答えた。
すると麗奈は、花が咲き誇っているような…そんな優しい笑顔を浮かべて言った。
「それだけで良いんよ…。そのお陰で麻衣子、倒れることもなく、思いっきり納得のいく作品が出来たんだから…。」
そぅ…なのか?
俺は何も…本当にしてない。
まいちゃんがやり遂げられたのは…。
「ねぇ、麗奈?」
俺がいきなり改まって話し出した事で、麗奈は少し目を丸くしながらこちらを向いた。
「多分…まいちゃんがやり遂げられたのは…麗奈?麗奈のお陰だと思うよ?」
「…え?」
俺の言葉に、麗奈がまた、目を丸くした。
「俺のお陰なんかじゃないよ…。だって、3日に一回は応援メール送ってたんでしょ?」
「へ?!知ってたん?!」
俺は初めて見る麗奈の慌てた表情に、頬が緩むのを懸命に抑えながら、
「うん」と一度だけ頷いた。
知ってるも何も…ι
その日、何時もと変わらず作業する中。まいちゃんがやけに機嫌が良いことに気がついた。
それが気になって本人に聞いてみると、嬉しそうに笑いながら…。
「あのね?昨日麗奈からメールがあって、私の作品楽しみにしてるから、頑張って!!って♪ちょっとスランプにはまりそうだったけど、そんなの振っとんじゃった♪」
その一件以来、まいちゃんの機嫌が良さそうな日は、大体メールがあったっていう予想がついた。
俺はまた麗奈に向き直り、微笑みながら口を開いた。
「本当に…すごいよ。まいちゃんがどんなに落ち込んだ様子で帰っていっても…麗奈からメールのあった次の日、また目をキラキラさせながら、絵に向かってるもんι」
すると、麗奈が少し照れくさそうに下を向きながら、口を開いた。
「うちは何もしてへんよ//」
俺は少し悪戯っぽく笑いながら言った。
「その言葉、そっくりそのままお返しします!!」
「ぅわ!やられたわι」
そうして二人、顔を見合わせながら、笑いを堪えきれずに吹き出した。
今回のことで、本当に彼女達の友情は深いんだなぁって思った。
お互いが、お互いを支え合っている。本当に…女の子の友情ってすごいんだなぁって思った。
そして、やっぱり人一倍友達を心配する麗奈を…やっぱり…そばで支えていたいと思った…。
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「ちょっと〜〜!!人が居ない間に、何二人で笑ってんのよぉ〜!!」
「え?フフフッ、いや、麻衣子の十円ハゲについてね(笑」
「フフッ、そぅそぅ(笑」
「………え?!マジ?!やだぁ!!本当に十円?!五十円とかじゃない?!」
いやι慌てすぎだからι
てかなんて言う質問してんだよ?!
「大丈夫!!真ん中だけとか残ってないから!!」
「本当に?!良かったぁvv」
いやι冷静に解説しないで下さいよι
てか先ず、十円はげってウソですから!!気付いて?!
やっぱりこの方々…ユーモラスに溢れているようですι




