表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

其の19



 ついに懐かしの我が家に帰ってきました。

 山奥の我が家に帰った桃太郎は、久しぶりに会う両親が元気そうにしているのを見ると、ようやく安心できました。

 

 お爺さんとお婆さんと共に、桃太郎が無事帰って再会できた喜びを分かち合いました。加えて桃太郎にとって、大切な友人が出来た事に二人は大喜びです。

 さっそくお婆さんが猪を山で狩ってきて、お爺さんが得意の猪鍋を振る舞ってくれました。


 桃太郎はお爺さんとお婆さんに、今までの旅の経過を話して聞かせました。

 その内容に、お爺さんもお婆さんも身じろぎせずに話を聞いています。問題解決したと語った時には、ようやく一安心したようでした。

 

 それにしても、鬼ヶ島の鬼達が人柄良く、役人達や家老が悪だくみをしている等と、どうして想像できたでしょうか。

 噂や先入観に惑わされず、真実は自分の眼で確かめてみないと分からない。

 お爺さんはそう、感想を漏らしました。それは、その場に居た皆が同じ感想です。つくづく、そう感じた一同でした。






 その夜はお爺さんの心尽くしの料理が振る舞われ、宴会になりました。

 宴もたけなわになった頃、夜風に当たって涼みたくなった桃太郎は、そっと家の外へと抜け出しました。

 頬に当たる風が心地良いです。

 宝石を散りばめたかの様な夜空を眺め、そっと息を吐き出します。明日になれば、鬼王とも戌成ともお別れでしょう。じわじわと心を埋めようとする寂しさを、堪えるように息をひそめました。

 その時、桃太郎の後ろで物音がしました。振り返れば、鬼王が立っています。

「桃どの。どうしたんだ、一人で休憩か?」

「鬼王さま」

 桃太郎は俯くと、自分の気持ちを漏らしてしまいました。

「いえ、明日になれば、鬼王さまとも、戌成さんともお別れです。そう思うと寂しくて……」

 すると、少しの間を置いて鬼王が言いました。

「なあ、桃どの。私と共に鬼ヶ島に来ないか? 住み慣れたこの場所も良いだろうが、鬼ヶ島も良い所だぞ。共に、暮らさないか?」 

 突然、鬼王が言いました。

「えっ?」

 それってどういう意味でしょう?

「この旅が終わった後も、桃どのと共に過ごしたいのだ。どうだろう? 嫌か?」

「い、嫌だなんて、そんな事ないっ。でも、お爺さんとお婆さんの事が心配だし」

「ならば、ご両親も一緒に鬼ヶ島に来られると良いだろう」

 桃太郎は、眼を白黒させてしまいました。突然の誘いに戸惑ってしまいます。


 そんな様子を見ていた鬼王は桃太郎の手を取ると、桃太郎をじっと見つめて言いました。紅い瞳が桃太郎を捉えて離しません。

「桃どの、好きだ。傍にいてくれ」

 桃太郎は、息が止まりました。ついでに思考も止まっています。

 次に呼吸をした時には、考えるより先に口が勝手に答えていました。

「はい」






 それから桃太郎は、鬼ヶ島に移り住みました。もちろん、お爺さんとお婆さんも一緒です。

 戌成と紗瑠々はどうなったかというと……。

 戌成といえば、巨乳童顔の鬼女が忘れられないと言って、共に鬼ヶ島に移り住みました。今日も、彼女に付き纏っている事でしょう。

 紗瑠々の方はというと、お爺さんに弟子入りしました。日々きび団子作りに精を出し、鬼ヶ島で過ごしています。

 

 桃太郎は、いつも自分の右隣にいる頼もしい男性に微笑みかけました。

 その表情をみた男性は、紅い眼に慈しみを滲ませて、弓のように細めました。

 その顔は優しさに溢れていて、桃太郎はとても幸せでした。






ここまで読んで下さいまして、ありがとうございました。

この話で完結です。

無事完結する事が出来たのは、この話を読んで下さいました、皆さまのおかげです。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ