第13話
黒の要塞最深部、玉座の間。
崩れ落ちた壁と天井の瓦礫の中で、アリスは大剣を杖代わりにして立っていた。全身から汗が滴り落ち、息は荒い。
目の前に立つ漆黒の魔王——ヴェルグ・ナハトは、まるで何事もなかったかのように静かに佇んでいた。
ヴェルグ:「……よくここまで来た。8大精霊の完全契約者よ」
ディネがアリスの肩の上で警戒を露わにした。
ディネ:「ヴェルグ……ついに直接対決ね」
サラ:「でかい口叩いてんじゃねえ! 今ここでぶっ飛ばしてやる!」
シルフ:「みんな、気をつけて! この人の闇、すごく濃いよ……」
セレネ:「……あなたが世界の澱みを吸い続けた存在……ヴェルグ・ナハト」
魔王は低く、静かに笑った。
ヴェルグ:「気づいていたか。ならば話は早い。
私は世界が生み出した『影の意志』だ。1200年前、8大精霊がお前たち人間を『強制的に安定』させた結果、生まれた存在だ」
アリスは剣を構え直しながら、息を整えた。
アリス:「……世界を混沌に還すのがあんたの目的だってことはわかってる。でも、それが本当に正しいとは思えない!」
ヴェルグ:「正しい、か。
秩序という名の檻に閉じ込められ、成長を止められた世界に『正しさ』などあるまい。
私はただ、世界を一度壊し、再び混沌から新しい可能性を産み出そうとしているだけだ」
セレネが冷たい声で切り返した。
セレネ:「……破壊を美化しないで。あなたはただ、世界を自分の理想に塗り替えたがっているだけよ」
ヴェルグ:「理想、ね。面白いことを言うな、月の精霊。
お前たち8大精霊こそ、世界を自分の都合の良い形に固定しようとしているのではないか?」
ディネ:「はあ? 私たちが世界を守ってきたというのに、随分と上から目線ね」
サラ:「うるせえ! とにかく殴り合おうぜ!」
アリスは8大精霊の声を聞きながら、ゆっくりと前へ踏み出した。
アリス:「私は……この世界を、みんなが笑って生きられる場所にしたい。
あんたの混沌じゃ、誰も救われないよ!」
ヴェルグ:「ならば、力で証明してみせろ」
**最終決戦、本格始動。**
魔王が右手を軽く振っただけで、玉座の間全体が黒い影の海と化した。
無数の影の刃が全方位から襲いかかる。
アリス:「みんな、力を合わせて!」
8大精霊が一斉に反応した。
ディネ:「アイスカノン・フルバースト!」
サラ:「インフェルノ・ブレイク!」
シルフ:「ハリケーン・テンペスト!」
ウィプス:「セイント・エクスプロージョン!」
セレネ:「ルナ・エクリプス・インパクト!」
ノーム:「グランド・クラッシュ!」
ジェイド:「シャドウ・エターナル・バインド!」
エント:「ライフ・フォレスト・ウォール!」
8色の光が融合し、アリスの大剣を極彩色の極光へと変えた。
アリスは全力で剣を振り下ろした。
「8大精霊の力……全部受け止めて!」
光と闇が正面から激突し、要塞全体が激しく震動した。
ヴェルグは一歩も引かず、影の奔流で光を押し返していく。
ヴェルグ:「……素晴らしい。だが、まだだ」
魔王の体から黒い霧が爆発的に膨れ上がり、8大精霊の力を徐々に飲み込み始めた。
ディネ:「くっ……! この力、予想以上よ!」
アリス:「まだ……負けない!」
ミクリが横から突っ込み、魔剣で援護する。
激闘はさらに激しさを増した。
アリスは何度も膝をつきながらも、精霊たちの声に支えられて立ち上がった。
ディネ:「アリス、立て! あなたはもう一人じゃない!」
サラ:「俺たちを信じろ!」
ウィプス:「一緒に戦おう!」
セレネ:「……あなたの道を、信じなさい」
アリスは最後の力を振り絞り、8大精霊の力を完全に一つに束ねた。
大剣が眩い光を放ち、魔王に向かって一直線に突き進む。
アリス:「これが……私たちの答えだぁぁっ!」
極光の一撃がヴェルグの胸を直撃した。
ヴェルグ:「……ぐっ……!」
魔王は初めて大きく後退し、玉座に背中をぶつけた。
しかし、彼はゆっくりと立ち上がり、影に覆われた顔の奥で笑った。
ヴェルグ:「……よくやった。アリス。
お前は我の予想を遥かに超えた。
だが……これはまだ始まりに過ぎん」
黒い霧が爆発的に広がり、ヴェルグの姿がその場から完全に消えた。
アリスは力尽きてその場に膝をついた。
アリス:「はあ……はあ……逃げられた……」
ディネ:「でも、確実に傷を与えたわ。次は……倒せるはずよ」
サラ:「チッ、惜しかった!」
セレネ:「……油断しないで。あの者はまだ本気の半分も出していない」
アリスは荒い息を整えながら、ゆっくりと立ち上がった。
アリス:「みんな……本当にありがとう。
8大精霊と一緒に戦えて……私は幸せだよ」
8大精霊が一斉に優しい声で応えた。
ディネ:「当然でしょ。これからもずっと一緒にいるわ」
ウィプス:「これからも冒険しようね!」
セレネ:「……ふふっ。面白い契約者だわ」
アリスは笑った。
しかし、彼女はわかっていた。
魔王ヴェルグとの真の決戦は、まだ終わっていないということを。
黒の要塞の奥深くから、新たな闇の波動が静かに、しかし確実に広がり始めていた。
元王女アリスと8大精霊の、笑いと毒舌と熱い絆に満ちた戦いは——
これからも続いていく。




