お願い、ちゃんと考えてね
すごいやつが、すごくないやつに説明する。
とても普通のこと。
どこにでもあること。
『わからん!』
俺が叫ぶ。
『まず公式覚えるんだよぉ!』
『嫌だ!』
『うるせぇ!やれ!』
机の上にノートがバサッと置かれる。
『だって意味わかんないもん!』
『問題解けりゃなんでもいいんだよ!』
『それになんの意味があるってんだ!』
『知らん!黙ってやれ!お前に文句言う権利はねぇ!』
『うぅ~』
『…はぁ』
次赤点取ったら留年ということで、友達が強制勉強会を開いた。
ありがとう。そしてカス!
『なんでこんな勉強できねんだ?お前』
『やる気がないからやろなぁ』
『分かってんじゃねぇか』
そういいながら、頭をわしづかみにしてくる。
『痛い!痛い!』
『やるから!離して!』
解放される。シャバに出たぜ。
気持ちぃ~。
『お前、別に頭悪いわけじゃねぇだろ』
『いーーや。俺はなにも出来ないおバカさんです』
『バカを馬鹿にすんな。やってないやつとやっても出来ないやつは違う』
『正論言わないで。泣くよ?』
『再試験で80点以上取ったら何でも一つ言うこと聞いてやるから』
『むさい男に言われても嬉しくない…』
『…じゃあ、女の子だったら?』
『は?』
どういう意図の質問?
『だから、女だったら頑張るのかって』
『いや…頑張るけど…』
『よし。私女だから、頑張れるな』
『………?』
うん?は?どゆこと?
『ほら、早く問題解け』
『いや、説明求む』
『私は女だから、頑張れるな?』
『いや、男じゃん』
どっからどう見ても男ですけど。
『はい、これ』
どっかから写真を出してきて、俺に見せた。
『だれ?これ』
そこには、かわいらしい女の子が写っていた。
小学生ぐらい?
『昔の私』
『んぇ?』
『これで頑張れるな』
あー……。証拠ってことですね?
『いや、違いすぎる!面影が皆無!』
『それはほら、男装してるから、私』
『…なんで?』
『趣味』
『学校でもずっとそれじゃん』
『多様性って言ったら通った』
『社会よ!これでいいのか?!』
頭おかしなるでほんま。
『はーい。分かったら勉強しようね~』
『ムリムリムリ。今衝撃的なこと起きちゃってるから』
『ダイジョブダイジョブ。ちょっと性別が違っただけ』
『ちょっ…と?』
性別ってそういうもんだっけ?
普段からまったく女子っぽくないのに?まじ?
…メイク?いや、え?
体育どうしてたっけ…普通に男子のとこいなかったか?
高一だよ?無理ないか?
俺の脳内で、高速スライドショーが始まる。
体育祭。
更衣室。
水泳の授業。
『……あれ?』
『なんだ』
『体育の着替えどうしてた?』
『保健室』
『うぇ!?』
『これが多様性』
『わぁ……』
『水泳はずっと見学だった』
『おぉ…』
頭を抱える。
『なんか、なんも考えられねぇ…』
『高二からは普通に戻るけどね』
『えぇ…?』
『成長してるからね、いろいろ』
『あぁ…』
触れられん。どう反応すりゃいいんだ…。
てか、転校生だと間違われるんじゃないか?
『で』
『で?』
『女だったら頑張るんでしょ?』
『…かわいくない』
『わがままなやつだな』
『だって!』
『はいはい。ちょっと待ってろ』
『…え?』
部屋から出ていった。なんで?
…冷静に考えたら、俺は今、女子の部屋に入ってるのか?
…全然うれしくない。女子っぽくもない…。
『俺の数少ない友達が…』
ガチャ
扉が開いた。そこそこ待っていた。
『お待たせ』
『何しにいっ…』
振り向き、固まる。
『………誰ですか?』
『君の友達さ』
『俺にこんなかわいい友達はいない!』
メイクを落として、服装が変わった。
それだけ…なはずなんだけど。
『ちょっとは説得力がでたかね』
『…ねぇ、もしかしてさ。気付いてなかったの俺だけか?』
『たぶんね』
『…なんてこった』
『ほれ、勉強しろ』
『は?あ、はい』
勉強しない理由をすべて突破された。
もうやるしかない…。
『…いやでも、お前にお願いしたいことなんてないぞ』
冷静に考えて、お願いすることが思い付かん。
『え?』
『いやだって、お前が女子って分かったところで、俺とお前は友達だろ?遊びに行くのだって、別にしてるし』
『はぁ……』
『なんだよ。ため息吐いて』
『そーゆーとこだよ?』
『え?何が?』
『……はぁ』
机に突っ伏す友達。
『どうした。体調でも悪くなったか?』
『…鈍感っていうのは、罪だね』
『なんか気に障ること言ったか?!ごめん!』
『………』
黙っちゃった。
『俺友達少ないんだよ。頼むよ』
『…わかった。勉強するなら許そう』
『…うっ』
問題集を睨む。
『分からん』
『さっき教えただろーがよ!』
『分からんもんは分からん!』
『分からんときは、何が分からないのか考える!』
『全部!』
『それは思考停止してるやつの台詞だ!』
バシンと頭を叩かれる。
『いっった!暴力反対!』
『知性への冒涜の罰だ』
『ひどい!』
『これはこのパターンだから、この公式使うの』
『初めて見る公式だなぁ』
『…20分前に教えたよね?』
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『終わった~!』
『うん。出るとこ決まってるし、これぐらいできれば大丈夫でしょ』
『うし、帰る!』
『試験明日なんだから、早く寝なさいよ?』
『………おう』
『おい。早く寝ろよ?』
めちゃくちゃ怖い笑顔で言った。
『はい!』
『よろしい』
部屋を出て、玄関まで二階から降りる。
『んじゃ、またな』
『うん。また』
そういって、帰ろうとしたとき。
『あっそうだ』
『ん?どした?』
『お願い、ちゃんと考えといてね!』
扉が閉まる。
『…あれっ』
多分、顔が赤くなっていた。
初めてちゃんとしたラブコメ書いたかもしれん。
楽しい!
気が向いたら続き書きます。




