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思ってたのと違う2

「貴方様のように禍々しく恐ろしいオーラを漂わせるお方に出会うのは、私の生涯の内で二人目になりますな。いやはや、それにリリー様は別な意味で恐ろしいですね」


新しいスキルを手に入れ、浮かれ顔のリリーを尻目に魔王がそう呟く。


「ん? それってどういう……」


俺のその言葉を遮るようにリリーが「早速手に入れたスキルを使ってみるとしましょう」と興奮気味に言う。


「それじゃそこの魔王、アタシと≪服従≫スキルで契約しなさい」


「そ、そんな、リリー様それはさすがにあんまりです……」


怯えるようにそう言う魔王。


「良いからさっさとしなさい。それとも何? このアタシに逆らうって言うの? それならそれでアタシにも考えがあるわよ……」


「も、申し訳ございませんでしたー。リリー様の言う通りにいたします」


ここまできたら、もはや魔王の威厳なんてないようなものである。


「その≪服従≫スキルってどんなのなんだ?」


「服従に同意した相手を下僕にすることが出来るスキルよ」


マジかよ。

結構極悪なスキルだな……。


「それ一生下僕のままなのか?」


「ええ、そうよ。アタシが解放するまではね」


「リリー……お前、魔王より”魔王”してるな」


「あら、お褒めに預かり光栄ですわヒビト様」


「別に褒めてないしヒビト様はやめろ」


「あはっ、そうねヒビト」


リリーは悪戯っぽく微笑むのであった。


「んじゃ、≪服従≫スキルを使うから、必ずそれに同意するのよ。おしっこチビリ大魔王さん」


「もうその話はやめてえー!」猛烈に恥ずかしそうにしている魔王であった。


同情するぜ、チビり魔王さんよ……。



リリーはステータス画面を開き、なにやら操作してから「あとはアンタの同意だけよ」と言った。


それに続いて魔王が自身のステータス画面を開き、一瞬操作してから「これでもう私はリリー様の下僕となりました」と言った。


「そんなあっさり下僕になりましたって……。良いのか魔王さんはそれで?」


「他にどんな選択肢があるのですか?」


半泣き顔で魔王がそう言う……。


「あ、うん。ごめん。そうだな、長い物に巻かれろ精神だもんな……」


正直可哀想である。

というかヘタレすぎないか、この魔王。


「じゃあ、そこのハゲ。変顔しなさい」


唐突にリリーが、邪悪に満ちた顔でそう言う。

ていうかハゲって……。


「へ? 変顔にございますか……」


困惑気味に魔王が言う。


「そうよ、何か文句あるかしら? アンタはアタシの下僕よね?」


ニタァと、笑うリリーのその顔は、歪んだ悪戯心をはらんでいるようであった。


「……では僭越ながら私、人生で初めての変顔をいたします」


と言うと魔王は、くしゃっと笑い、まるでひょっとこのような顔になった。


「だはっははっあははははっ! 本当にやった本当にやった! ぶあっはははは!」


甲高く笑うリリーの笑い声に、誘われるように俺も「ぎゃはははあはあはあはっ!」と笑ってしまった。


当の魔王はワナワナと身体を震わせており、自分は怒って良いのか、それとも一緒に笑えば良いのか分からないといったふうな、ひょっとこ顔越しにも分かるほど複雑な表情をしていた。


「じゃあ次は、その顔のまま踊ってみせてよ」


リリーは更なる無茶ブリを要求する。


魔王はひょっとこ顔のまま、キレのある華麗なダンシングをみせた。


俺からしたら、もはやひょっとこ踊りにしかみえない。


「あはーはあはあはあはー! ちょ、シュールめちゃくちゃシュールなんですどー! あーはあはあはははー! ぶっぇへえゲホゲホゲホッ!」


笑い過ぎてむせてしまっている。


「魔王である私の人生至上、初ですよ。こんな恥ずかしめを受けるのは! お願いです、もうこれ以上私を弄ぶのはおやめください!」


大爆笑をかっさらっていった即席のピン芸人、もとい魔王が、そう懇願する。


「まだまだ、こんなもんじゃないわよ。次は犬のポーズになって、三回回ってワンと吠えなさい」と、いまだ魔王いびりを楽しもうとするリリー。


「おい、そろそろその辺にしておけ――」


――それは、リリーの暴走を止めに入ったその時である。


「――これは何事ですか魔王様!」


と、慌てたような女性の荒い声が突如響き渡った。


声のしたほうをみれば、妖艶な女性の姿が、そこにはあった。

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